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36話  勲章と報酬

夢を見ていた。いや、過去の記憶と言った方が正しい。六樹にとってはトラウマとも執着とも言える幼少期の痛烈な記憶


「リョウくん!今回は絶対に見つかんないよ!!」


「今日もすぐ見つけてやるよ!なっちゃん!!」


「へへへ!じゃあ絶対見つけてねリョウくん!見つからないと思うけど!!」


「絶対見つけてやるから待ってろよ!!」


「うん!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ハッと六樹が飛び起きた、またこの夢を見た。六樹の心に残り続ける嫌な夢だ。


大きくため息を吐き、そして手で顔を覆い小さく呟いた。


「…………見つかんないよ、なっちゃん……どこ行ったんだよ……」


小さく弱音を吐くと、六樹は気持ちを切り替える。すぐさま辺りを見回した。今は夜なのか辺りは真っ暗で唯一窓から入る月明かりだけが光源として機能していた。



近くにはベッドが沢山並んでいたが誰もいない、六樹には見覚えのあった。ここはギルドの医務室だ。


「そっか……そう言えば俺は戦いのあと気を失ったんだったな、まったく不甲斐ない……」


そう自分を責める。帰還するまでが戦いだ、目的を達成した後に戦闘不能のお荷物になった事に反省する。


今の状況を整理しているとエスタが語りかけて来た。


エスタ(相棒!!やっと起きたか、かなり長い時間寝てたな)


六樹(おはようエスタ、俺はどれくらい寝てたか分かるか?)


エスタ(目をつぶってたから詳しくは分からんが、まぁ大体2日弱って所か?少なくとも丸一日は寝てたな)


「結構長い事気を失ってたわけだ……てかなんか頭痛くてだるいな」


エスタ(そうなのか?俺はなんだか調子がいいぞ!)


「病み上がりだからかなぁ……」


などと呟いていると、近くの扉が開き一筋の暖かい光が部屋に入って来た。


「リョウ!?やっと起きたんですか!!」


部屋に入って来たのはアンリだった、よく見るとお湯と拭き布を手に持っている。どうやら意識を失ってた間、手当をしてくれていたらしい。アンリは六樹に駆け寄ると心配そうな顔をして質問した。


「リョウ!目は見えますか?右目は正常に機能してますか!?」


ハッと六樹は自身の右目に手を当てる。戦闘の最終盤にハルゴスの爪による攻撃を受けて、右目がやられていたからだ、そして、左目を閉じて視界を確認した。


「は、大丈夫だ、問題なく見えてる……はぁぁ」


安心すると大きなため息が出た。だが指で右目付近をさすると違和感があった、なんだかでこぼこしているような、するとアンリが申し訳なさそうに話し始めた。


「申し訳ありません。一刻も争う事態だったので、失明しないために眼球の治療を優先したんです。そのため他の治療が遅れて目元に傷跡が残ってしまいました。」


「そんな!謝る事じゃ……目を治してくれてありがとう!アンリ!ちょっと確認してみるか」


そう言うと、六樹はベッドを起き上がり鏡のある洗面所の場所に移動した。アンリは体調を心配しているが、若干フラフラしながらたどり着き、鏡で自分の顔を確認した。そこには六樹の目元に一筋の傷跡がしっかりと残っていた。


「うわぁ〜、ザックリいかれたなぁ、これで失明しなかったのは奇跡だろ!」


「…………」


六樹は明るく振る舞うが、アンリは顔に傷が残った事に責任を感じているのか元気が無い。


「それに男の傷は勲章だ!!ドラゴンにつけられた傷だなんてスゲーかっこいいし、な!?アンリ!!イカすだろ!?」


「……もう!!勲章じゃなんかありません!!どれだけ心配したと思ってるんですか!?」


「ありがとう、アンリ!それはそうと、似合ってる?」


「はいはい!似合ってますよ!……男が上がりましたよ(ボソッ)」


「だろ?」


そう言うと、アンリに笑顔が戻る。


「ふふふっ……一応言っておきますよ、回復魔法をかけたとはいえまだボロボロなのは変わりませんから、しばらくは安静にして下さいね?」


「分かりましたよ先生、アンリもしっかり休むんだぞ」


「分かってますよ、それより、あなたが寝ている間に論考行賞が行われましたよ、知りたいですよね?」


アンリの問いに六樹は大きく頷く。


「聞かせてくれ」


「まず下から……三級戦功ではゲロンさんが撤退指揮を評価されたのと、ルーナが伝来役として活躍したので授与されました。他にも何人かいて、ルーナに連れられて増援に駆け付けた神官の二人も三級でした。」



「報酬として銀貨10枚追加されると聞いてルーナは飛び上がってましたよ!」


アンリは友人の話を嬉しそうに語ると次に進んだ。


「次に二級戦功としては私とダクトさんが選ばれました。この戦いにおいて主力として活躍したのが評価されたようです。」


「そして、一級戦功には、キョウさんとアバルさんが選ばれました。二人は常に前線で戦い続け味方の被害を抑え込みましたからね」


そう言い終えると、アンリの表情がパッと明るくなった。


「そして!リョウ!あなたは特級戦功ですよ!!すごいです!!普通はこんなの出ませんよ!?」


六樹は働きが評価されて嬉しい反面、常に最前線で命を張り続けたキョウやアバルを差し置いて自分だけが抜きん出るのはなんだか申し訳ないようにも感じた。


「特級ってどれくらいすごいの?あの二人を差し置いて俺がもらってもいいのか?」


「あ〜なんと言いいますか、特級戦功って言うのはナンバーワンというよりオンリーワンなんですよ、一級戦功が事前に立てた作戦を遂行する為に活躍した人を評価するとしたら、特級戦功は作戦自体を持ち込んだりイレギュラーな活躍をした人に贈られるんです。」


「はーなるほど、結構しっかりしてる」


「だからリョウ!!あなたは胸を張っていいんですよ!!」


アンリがそう熱く語る。


「そうそう、そしてあなたへの報酬があるそうですよ、まずは元々の約束の倍の報酬が支払われるそうです!!さらに、今回の活躍を踏まえて一気に銀等級まで昇級します!すごいですよ!いよいよ職業(ジョブ)の解禁です!!」


「見習いの鉄から飛び級か、それより職業(ジョブ)解禁ってどういう事?」


「そうですね、これはおいおい説明した方がいいかもです。それと支部長があなたが起きたら話したい事があると言ってましたよ?」


「了解、ちょっと行って来る」


アンリが気になることを言っていたが、六樹はとりあえず軽く身だしなみを整えて支部長の部屋に向かった。ノックをすると、すぐに入室を許可された。


「支部長、お呼びですか?」


「リョウ君、起きましたか…まずこの度の戦いにおいて、君の働きに最大級の感謝を贈ります。」


そう言うと支部長は深々と頭を下げた。


「やめて下さいよ、それより何か話があるんですよね?」


支部長は顔を上げると少し神妙な面持ちで話し始めた。


「はい、結論から言うと、スケルトンドラゴンあなたのアイテムボックスの中に封印していると言うのは公表していません」


支部長の言葉に驚く六樹、そしてすぐに問いただした。


「どういうことですか!?じゃあ一体どう説明したんですか?」


「公にはあなたが再度落とし穴に誘導し、弱体化させた後討伐したとしています。」


「なぜそんな事?」


「リョウ君、アイテムボックスのスキル保有者が死亡した場合、アイテムボックスに収納したものが全て解放されるというのは知っていますか?」


その支部長の問いかけに六樹は眉をひそめた。


「知らなかったです。…………!!ってことは」


「そう、もしあなたがなんらかの要因で亡くなればその場で再び奴が現れるという事になる。それを知られればあなたは人里で暮らし辛くなります。それによからぬ考えであなたの命を狙う輩も現れかねません」


確かに今の六樹はいわば命が尽きた時に周囲を巻き込む歩く爆弾のようなものだ、他の人からすれば近寄ってほしくはないだろう。支部長は純粋に六樹の身を案じて取り計らってくれたらしい。


「お心遣い感謝します。確かにそうですね……」


「あの場にいた者にはすでに話さないよう伝えてあります。今回実行出来た二種の作戦でも仕留めきれなかった事から、おそらくスケルトンドラゴンを討伐するには莫大な準備が必要となります。そして戦時下である現状、それを用意する事が難しくまた特に期限というものもない。」


「そのため、あなたにはしばらくの期間、奴を幽閉しておいて貰うことになります。たった一人に重荷を背負わせてしまい申し訳ありません」


「そんな、俺が選んだ事です」


「代わりと言ってはなんですが、何か私にできる事があれば多少の融通は効かせましょう」


そう提案する支部長、良い機会なので、六樹は一つ質問してみる事にした。ハルゴスの一件により後回しになっていた事、ある意味今六樹が行おうとしている指針を


「ガドル王国の国王陛下と直接お会いしたいのですが、どうすればいいかご存知ですか?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


時を同じくして暗い森の中、一人の少年が歩いていた。年は14〜15歳位の色白の美少年だ、真っ黒のフードを被り夜闇に溶け込んでいる。


「う〜ん…おかしいですね、この辺りにいた形跡があるのに…」


少年は何かを探している。さらに森を進み続ける。そして森を抜けると少し開けた場所があり、そこには未だに抜けきっていない聖水が溜まった大きな落とし穴と魔法による集中攻撃が行われた痕跡があった。


そこはハルゴスと冒険者達の戦場跡だ


「ここで戦ったのは間違いないようですね……となると、本格的に無駄足でしたか……()()に聞ければ良かったんですが…一帯が浄化されて誰もいませんね」


更にそこからまるで獣の足跡を辿るように移動する


「妙ですね……ここは瘴気が残っているのに肝心の本体がどこにも見当たらない……成仏したと言うより…まるでスッパリとこの世界から消え去ったような……まさか、僕と()()()をしたとか?」


少年は怪訝な顔を浮かべた。


「アンデット化したドラゴン、会いたかったんですけど……まぁいないものは仕方ないですね……まったく、白の山脈を越えるのは大変なのに……しかしせっかく敵地にいるんですから…帰る前に細かい仕事はしておきますか…」


そして、不穏なことを口走る少年はこう続けた。


「本当に…幹部の仕事というのは、大変なものですね……」


黒いフードを被った色白の美少年、

もとい魔王軍幹部エルト・ルサウアはそう呟いたのだった。


今回の話でスケルトンドラゴン編は終了です!

当初の予定だとここまでが序章という位置付けですが、どうなることやら…。六樹は幼馴染の軌跡を追って国王の元を目指します。次の章は話のスケールが少し大きくなる予定です。六樹の外見的特徴をまた増やしてしまった

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