32話 カウンター
スキルや魔法ありの戦闘って難しいものですね、誰が何をどこまで出来るのかをしっかりと考えないといけない。
予想外の事態にキョウが方針を羅列する。
「こうなりゃ仕方ねぇ!聖水をかけても治らない奴は一箇所に移動させて安置!」
「動ける前衛は雑魚アンデットに当たれ!後衛は奴への攻撃続行だ!!」
「レカルカの嬢ちゃんは治療を頼む!」
「誰か後方の解呪要員を呼んできてくれ!」
その声にいち早く反応したのはダクトだ
「ルーナ!飛べるか!?」
「はい!お師匠!」
魔女ルーナが近くの茂みからひょっこりと顔を出した。
「第二プランだ!神官達に射程内に移動するよう伝えてくれ!そして解呪が出来る神官冒険者を箒に乗せて連れてきてくるんだ!」
「え〜と、重量オーバーなんですけ…
「出来るはずだぞ?出来るよな?」
「はい!お師匠!!行ってきます!」
ルーナが飛び出して行った。ダクトはキョウに問いかける。
「キョウよ、アイツはどうするんだ?」
「奴は俺とアバルで抑え込む!!」
その場の無事だった冒険者が動き出す。まず呪いを受けた仲間たちに聖水をかけて様子を見る。それで呪いが解けて軽傷なら戦線復帰、戦闘不能なら戦線離脱を促す。呪いが解けなければ戦闘に巻き込まれない場所に寝かせて安置
「私は負傷者の呪いを解いて回ります。」
アンリはこの場における貴重な回復と解呪要員であるため、重症者の手当に向かった。六樹も方針に従い雑魚狩りを始めた。
六樹(行くぞエスタ!アンデット狩りだ!)
エスタ(おうよ!死体蹴りと行こうじゃねーか!)
キョウとアバルがスケルトンドラゴンに飛び掛かる。
「「うおおおおおおお!!!」」
「グオオオオ!!」
アバルは大楯とは別にバックラーを装備した。基本的に守りを崩さないが隙を見てバックラーで打撃を与えるためだ
彼らの基本戦法はキョウが槍でダメージを蓄積させつつ、回避タンクのような役割をこなす。そして、回避が難しくなっだ場合はアバルが守りに入りつつ隙を見て打撃攻撃を行う。
「キョウ、俺の攻撃じゃコイツの鱗を貫けない」
「拗ねるなよ!俺の攻撃もイマイチ効いてるのかよくわかんねーよ!それより奥の手を準備を頼むアバル!お前が鍵だ!」
そう言って二人は戦い続けるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
六樹にとってアンデットというのは本当に馴染みの無い存在だ、他の魔物は珍生物として脳が処理していたが、今戦っているスケルトンやゾンビ、コイツらは一体なんなんだ?魔力で動いているらしいが死んだ後にまだ動き続けている事に違和感しかない。
「って言っても、ゾンビは胴体か頭を切断すれば死ぬな、スケルトンは骨を砕く必要がある訳か」
冷静に討伐条件を確認していく六樹、すると目の前に角猪のスケルトンが姿を現した。
「お前の骨はめちゃくちゃ分かりやすいな」
「グヒーー!!」
すぐさま長い角を向けて突進してくるが、六樹は余裕の表情で緋影を一つ地面に投げた。
「落ちろ、そんでもって潰れろ」
地面に落とし穴をつくり落とした上で落とす。そして土を被せて潰す。シンプルだが効果的な方法だ、この方法であれば大抵のアンデットはどうにかなっている。
そんな時、上空から声が聞こえてきた。
「危な〜い!!どいてどいて!」
「うお!?」
空から箒に乗ったルーナが降りてきた、半分落ちて来たと言った方が正しいかもしれない。箒の後ろには神官と思わしき人物が二人乗っていた。
「いててて……今のは危なかったよ…お師匠の無茶振り突っ返せばよかった!」
「えっと?大丈夫ですか?」
「えへへ、大丈夫大丈夫!」
二人の神官は箒を降り、六樹に質問をする。
「我々は呪いを解いて治療を行います。負傷者はどこにいますか?」
「あの大多数は大樹の下の茂みに隠しています。護衛は必要ですか?」
六樹の申し出に神官達は首を振る。
「いえ、アンデット相手であれば自衛出来ます。それよりもうすぐ他の者達も配置に付きます。貴方の仕事も引き受けますのでアバルさんへ伝言を頼めませんか?我々はあの場では力不足ですので…」
「分かりました、お伺いします。」
六樹は伝言を携えて再びスケルトンドラゴンの元へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「グオオオオ!!」
「オラオラオラ!」「フンッ!!」
「今だ!放て!!」
ドドドドドドン!!
先ほどの落とし穴の近くでは、キョウとアバルが以前スケルトンドラゴンと戦闘し続けていた。二人だけで前衛を引き受け、付近の魔法使い達がヒットアンドアウェイの要領で魔法を放つ。六樹は最前線に加わった。そんな時、六樹がその場にたどり着いた
「リョウか!!どうした!?終わったのか!?」
戻って来た六樹の姿を見てキョウが問いかける。
「増援が来たのでアバルさんへの伝言も兼ねて戻って来ました!!」
「ムツキ、伝言とは?」
「配置につくまであと7…いや、5分、光の柱が見えたら作戦開始の合図であると」
「了解だ!時間稼ぎを行う!助太刀を頼む」
「はい!」
六樹は金等級二人に加わり、スケルトンドラゴンとの戦闘を再開する。開口一番、六樹はスケルトンドラゴンの首に斬りかかる。ガギッという鈍い音がなった
「……くっ!やっぱりダメか!」
前回に引き続き瘴気の鱗に傷をつける事は出来るものの一歩と届かない。すぐにスケルトンドラゴンが反撃のために腕を伸ばして来たが、それはアバルが防いだ
「ムツキ!神官達の魔法の前に、コイツにもう一発ブレスを打たせるぞ!」
「オラッ!その為にコイツにダメージを入れて余裕を奪う!!」
キョウは素早い動きで翻弄しながら槍で的確にダメージを与える。
六樹(エスタ!この鱗どうにかならないか!!)
エスタ(コイツ何層にも張り巡らせてやがる!一振りで切るのは難しいぞ!他の方法も考えろ!)
「他の方法か……」
他の方法、六樹は考える。スケルトンドラゴンは隙間の無いプレートアーマーを着ているようなものだ、それを突破するにはキョウのように力を一点集中させて、突破する方法があるが六樹にはそこまでの決定力が無い、ならば……
「アバルさん!!俺を上に飛ばせますか!?」
「??、盾の上に乗れば上に大きく跳ばせられるぞ!」
「ダクトさん!俺の合図で重力魔法を!!」
「!?承知した!!何をするのか知らんが気をつけろよ少年!!」
「行きます!!」
六樹はそう言って走り出す。アバルが大楯をジャンプ台のように構える。その上に跳び乗るとアバルが大楯を突き上げた。
エスタ(ちと無理するぞ!相棒!!)
六樹は体のリミッターを外すと大楯の勢いと共に10メートル近く跳び上がった。
スケルトンドラゴンが真下に見える。
そして空中でアイテムボックスを使用する。
次の瞬間、大量の土砂が空中に広がった。5メートル四方の土砂が十数個スケルトンドラゴンの頭上に展開される。
「今だ!!魔法を!!」
「「「重力魔法!!」」」
大量の土砂はその重みを増してスケルトンドラゴンの頭上に降り注ぐ、鎧が硬すぎて貫けないなら鎧ごと物理で殴るまで、それが六樹の考えた案だった。
「グアアアアアアアーー!!」
という咆哮を出しながらスケルトンドラゴンが土砂に呑み込まれる。一方の六樹は
「あっ!着地のこと考えて無かった!」
地上10メートルからの自由落下の危機にジタバタしていると、バッと、お姫様抱っこのよう体制で横から跳んで来たキョウに抱き抱えられた。
「よくやった!今のは結構効いたんじゃないか?」
「うわ、惚れそう…」
「ハハッ!野郎に言われても嬉しかねぇな!」
トトッと着地に成功する二人、すると近くの丘から光の柱が見えた。
「来たな!二人とも隠れろ!ダクトさん!魔法を、あと合図は任せます」
アバルはそう言うスケルトンドラゴンの方へ大楯を構える。すると、沢山の人影がアバルの後ろに現れた。ダクトの幻影魔法だ、土砂からスケルトンドラゴンが這い出て来た。そして、すでに紫色の光を浴びている。
「俺たちは一箇所にいるぞ!今なら一網打尽だ!来やがれ!!」
スケルトンドラゴンは構える。そして、
ブォン、ブォン.ブォンブォン………
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
呪いの息吹を放出した。アバルは今度は一人でそれを受け止める。
「ウヲヲヲオオオオオオ!!」
大楯がギチギチと悲鳴をあげる。だがアバルはただ耐えるだけでなく、少しずつスケルトンドラゴンに近づいて行った。
「今だ!!神の柱を放て!!」
ダクトがそう叫び、打ち上げ花火のような魔法を放つ、
すると次の瞬間、朝の日差しと共に白い光の柱がまるでスポットライトのようにスケルトンドラゴンを包み込んだ
「ギィアアアア!!!」
瘴気の鱗が剥がれ落ち骨から煙が立つ、だが、ブレスはまだ止まらない。すると、大楯が限界を迎えて砕け散った。
「グオオオオオオオオオオ!!!」
「まだ!!まだ倒れんぞぉぉ!!」
呪いのブレスを一身に受けながらバックラーを構え
アバルはスケルトンドラゴンの懐に飛び込んだ
「これまでのダメージ、返させてもらう……」
「集積衝撃!!!」
ドオオオオオオオンという衝撃波が周囲を駆け巡る。
そして、スケルトンドラゴンは骨がバラバラになり吹き飛んだ
能力[集積衝撃]前衛職が取得可能なスキルでありその効果は発動者がそれまで受けていた運動エネルギーを蓄積し発散するというものだ、アバルの放った一撃は二発のブレスとそれまで受け止めて来た数々の攻撃を全て集積した一撃だった。
神官達による聖属性の魔法で瘴気の鱗を剥がし、その上でとっておきの一撃を叩き込む。これこそがスケルトンドラゴン戦の第二プランだったのだ
まるでミサイルやダイナマイトが爆発したような衝撃から六樹は周囲を見渡す。そこにはただアバルが横たわっているだけだった。
「アバル!!」「大丈夫ですか!?」
キョウと六樹はすぐに傷だらけのアバルに駆け寄る。
アバルはブレスを受けて、色々な部分が焼け爛れたような傷になっていた。
「アバル!!ありがとな!お前のおかげで勝ったぞ!!」
キョウは友人に労いの言葉をかけている。だが、六樹は気が付いてしまった。
アバルの傷跡、それが呪いによる侵食を受けている事に
「キョウさん!!まだ終わってない!!警戒をっ!!?」
そう言いかけた瞬間、スケルトンドラゴンの爪がどこからともなく現れて六樹は肩を切り裂かれた。
「!?っぐ!!」 「リョウ!!」
六樹の傷口から呪いの侵食が始まり、痛みに襲われ始めた。
「大丈夫か!?」
「痛い!……けど、なんとか大丈夫です!」
だが、六樹は魔法が効き辛い体質が幸いしてか、呪いの効果が他よりも薄かった。これならばまだ戦える。
しかし、更なる絶望が目の前に広がっていた。
カラカラカラカラカラカラ、ガラガラガラガラガラ……ガチガチガチガチガチガチ
と、付近に沢山の骨が集まり始めた。それらはどんどん噛み合わさっていき、スケルトンドラゴンの形を形成し始めた。その光景に六樹は絶望の声を漏らす。
「こいつ、バラバラに吹き飛んだんじゃなくて、自分で分離して衝撃を殺したのか!?」
頭蓋骨が戻ると、スケルトンドラゴンは咆哮を上げた。
「グオオオオオオオオオオーーー!!!」
「ぐっ!ぐう…!!」
スケルトンドラゴンの咆哮により、呪いと共鳴して錯乱効果を底上げする。
だが、これも六樹には効きが悪い。呪いを受けた者は痛みと悪夢にうなされ錯乱するとアンリは言っていた。六樹にもそれが襲いかかるが……
「なんだ?これ?…夢にしては鮮明な……まさかこれはスケルトンドラゴンの記憶か?」
六樹は今見ているものが悪夢だとは思えなかった。
悪夢の正体、スケルトンドラゴンの怨念であり執念の源となる記憶が六樹に流れ込んできたのであった
スケルトンドラゴンは一筋縄ではいきません。気に入って頂けたらブックマークや高評価をお願いします。すごく励みになります。




