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30話  開戦!スケルトンドラゴン戦

今日は討ち入りの日だ、限られた時間の中で可能な限りの準備はした。


「よし、気を引き締めろ、そろそろ現れるはずだ」


そう言ったのはキョウだった。


今現在、六樹達は森の中にいる。既に他の冒険者達は定位置についており、残るは六樹を含めた直接戦闘を行う腕利き冒険者達のみだ


メンバーは16人、キョウ、アバルの金等級冒険者が2人、アンリ含めた戦闘職の銀等級が10人、六樹含めた残りの4人は銅等級以下から選抜された面子だ、今はスケルトンドラゴンがいると斥候の報告があった場所に向かっている。


まだ朝日が見えない明け方、討伐すべき怪物の姿が現れた。


「うっ!?ごほっ!」


突然六樹がえずく、なぜならとてつもない腐敗臭が鼻に流れ込んできたからだ


「静かに…」


隣にいたアバルに諌められる。スケルトンドラゴンの周りには大量の野生動物の死骸が散乱していた。

スケルトンドラゴンはその真ん中でジッとしている。


パッと見た限り寝ているように見えるが、アンデットは睡眠が必要ないらしいので、おそらく死骸からエネルギーを吸収しているのだろう。


「……よし、ここから手筈通りだ、静かに展開しろ」


キョウの指示通り、それぞれが茂みに隠れながらスケルトンドラゴンを半円状に包囲する。六樹は右翼に移動して待機、キョウは左翼に陣取る。アンリは中央の後方で魔法陣を描き始めた。そしてその前をアバルが守っている。静かな緊張が走る。


「そう緊張するな少年、なるようになる」


六樹にそう声をかけたのはスキンヘッドの中年銀級魔術師ダクトだ、彼もまた地面に魔法陣を描いている。


「儂も若い頃、戦いの前は気が気でなかったが、この歳までなんとか生き残ってこれた、大勢が力を合わせれば大抵どうにかなるもんだ」


「頭では分かってるんですけど、悪い想定ばかりしてしまって……」


「ならば考え続ける事だな、悪い想定でもなんとかする方法を、それでもダメなら天命だ……おっと、合図だ…構えろ」


アンリがジェスチャーで準備が整った事を伝える。さすると全員が一斉に武器を構えて待機する。魔法使い達は小声で詠唱を行う。


いよいよ開戦だ


アンリが手を伸ばして指でカウントダウンを始めた。


5…………4…………3…………2…………1…………!!


「紫電一閃!!」


六樹がアングリッチを抜刀し周囲の草木を刈り払う。

六樹だけで無い、同様に剣を持った者は刈り払いを行い一気に視界が晴れた、するとすかさずアンリが魔法を放った。


聖なる光(ホーリーライト)!!」


スケルトンドラゴンに魔法の光が直撃する。光の屈折で瘴気を固めた鱗が可視化される。


ジューーーという音と共に瘴気の鱗が浄化による煙を上げる。そこに魔法による集中砲火が行われた。


「水撃砲!!」「雷撃!!」「火炎弾!!」


ドッゴーン!!という土煙があがる。だが


「グオオオオオオオーーーー!!!」


というけたたましい咆哮と共にスケルトンドラゴンが土煙から出てきた。目視で確認する限りは傷ひとつ着いていない。


スケルトンドラゴンは最も危険と判断したのか、アンリの方向に進みだした。しかし


ガギィィン!!という音と共に、とてつもない速度の何かがスケルトンドラゴンの横っ面に突っ込んだ。


その攻撃を受けて首が大きくブレ、スケルトンドラゴンの側頭部に小さな傷が入った。


「ちっ!!硬すぎるだろ!」


攻撃したのはキョウだ、彼は獲物に大したダメージが入っていない事が分かり、そう吐き捨てた。しかし、すぐに切り替え指示を出し始める。


「モーニングコールは成功だ!!もうちょっと怒らせろ!!」


すると今度は前衛組が飛び出した。


「「「うおおおおおお!!!」」」」


ゲロンが真っ先に飛び出し大剣をスケルトンドラゴンの翼に振り下ろす。だが、鱗を破れない。他の冒険者も同様だ


「紫電一閃!!」


六樹もスキルを使って前足に斬りかかる。


「ぐっ!!これが瘴気の鱗か!?」


六樹の剣は食い込みこそしたもののギリギリ骨までは達しなかった。


「グオオーーーーーー!!」


スケルトンドラゴンの反撃が始まる。右腕の鉤爪で群がった冒険者を一掃しようとした。奴の爪はもはや剣や槍のようなサイズだ、突き刺さったらただではすまない。しかし爪による横薙ぎが六樹達を襲うことはなかった。


ガシンッ と大きな音を立てて腕の一振りはアバルの大楯によって防がれた。


「これはなかなか!!」


口ではそう言うアバルだが、表情からはまだ余裕を感じられた。


「よし!ここからは誘導に入るぞ!!」


キョウが全員に号令を発する。その言葉に従って、その場の全員が一方向に向かって走り始めた。


「おらっ!こっちだ!!」


「グロロロロロロロロ……」


キョウが時折り槍でちょっかいをかけ、スケルトンドラゴンのヘイトを引き受ける。危なくなればアバルが割って入りジリジリと後退を繰り返す。


「打ち水!!」 「聖なる光(ホーリーライト)!!」


時折りアンリやダクトの魔法による攻撃や妨害を入れつつ距離をとる。


この戦いにおいて最も避けたい事はスケルトンドラゴンが空を飛び、制空権を取られた上で呪いのブレスを連打される事だ、現状空の上の敵を叩く手段が乏しいためにこれだけは絶対に避けなければならない。

肉や皮が全く残っていないので本当に飛べるかどうかは分からないものの警戒すべきというのは変わらない、そのため誘導するためのルートは背の高い木々が生い茂る森を選択し翼を広げるスペースを確保させないように務める。


「こっちだ!間抜け!」 「ついて来なさい!!」


冒険者達は各自移動しながら時折りスケルトンドラゴンの注意を引きつける。これはブレスへの対策だ、あまり一人に対してヘイトが集中しすぎると一人ずつ叩き潰しにかかるため、チラチラと現れては挑発、そしてすぐ隠れる事で狙い定める事を妨害している。対策の効果かどうかは分からないが、現状ブレスは放っていない。


「よし!あと少しだ!一斉に走れ!!」


キョウの呼びかけによってその場の全員が森林地帯を抜け、少し開けた場所に出る。近くには大きな池が点在している。この場所こそが落とし穴を仕掛けた場所だ、そして全員がスケルトンドラゴンを誘導する為に一箇所に集合した。


「ここからは俺の仕事だな」


アバルが前に出て大楯を構える。するとスケルトンドラゴンが森から這い出て来た。


「グオオオオオオオオオオオオォォーーー!!!」


とてつもない咆哮と共にスケルトンドラゴンの身体から紫色の光が湧き出る。


ブオン………ブオン……ブオン…ブオン、ブォン.ブォン


呪いのブレスが来る。対してこちらも防御魔法を展開する。だが今回はアンリだけでは無い


「「「!!聖壁!!」」」


ゴオオオオオオオオ!!!


いつもよりも明らかに分厚い光の壁が展開されたと同時にブレスが放たれた。


ギシッ……ギシッ……と分厚い聖壁にゆっくりヒビが入る。


「っ!、そろそろ限界です!」


アンリの言葉にアバルが反応した。


「皆んな!俺の後ろから離れるな!来い!!」


そして、バリーンッというガラスが割れたような音と共にブレスが襲いかかる。しかしそれをアバルが大楯で完璧に防いだ


「ぐ!ぐおおお!!」


更には呪いのブレスを跳ね除けた。アバルは疲弊しつつも完全に耐え切った。そして


「来やがれ骨っこ!!埋葬してやる!!」


スケルトンドラゴンは少し驚いたような様子だったがアバルの挑発に乗って突っ込んで来た。


落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!


その場の全員が心の中で唱える。そしてスケルトンドラゴンが落とし穴の上に来た、だが


「なに!なぜ落ちやがらない!!」


驚愕したゲロンの声が響く、スケルトンドラゴンは落とし穴の上を通ったが落とし穴は作動しなかった。


「うおおああ!!」 「ウラァァァ!!」


咄嗟にアバルとキョウが飛び出してスケルトンドラゴンを落とし穴の上に押し留める。


「これどうなってるんだ!!?」


六樹がそう口に漏らす。誰に対してでもない分かる奴に対してだ


「この罠は大型の魔物を想定して造られたはずだ、まさか!奴が想像以上に()()()()のか!?」


ダクトがそう結論づける。


「想像以上に奴の骨は軽いのか……どうすれば落とせるんだ……」


方針を考える六樹をよそ目にベテラン冒険者であるダクトはすぐに行動を起こした。


「お前たち!!重力魔法(グラビティ)を放て!!」


大声で合図すると、近くに隠れて待機していた魔法使い達が一斉に杖を持って呪文を唱えた。


「「「重力魔法(グラビティ)!!!」」」


ズンッとスケルトンドラゴンが地面に押し付けられる。落とし穴に使った木材がバキバキと折れる音が聞こえる。いける!と六樹もそう思ったが、


「ギィエエエエエエッッ!!」


という声を出しスケルトンドラゴンは腕と翼を伸ばして地面にしがみついた。これでは落とし穴に落とすのが難しい。更にゆっくりと紫色の光が骨の隙間から漏れ始めた、ブレスの準備をしている。


「ヤロウ!勘づきやがった!!全員コイツの足元を攻撃しろ!!」


キョウの指示でその場の全員がスケルトンドラゴンの手足や翼の接地面を攻撃するが、瘴気の鱗に阻まれて攻撃が通らない。


「まずいです。このままだと第二波が来ます!」


「アンリ!!俺がやる!!」


「リョウ!?」


動いたのは六樹だった、六樹はスケルトンドラゴンに近づいていく。


六樹(エスタ!これやれるか!?)

エスタ(もちろんだ!!相棒!!)


緋影(ひかげ)!早速出番だ!!」


六樹が走りながら緋影を取り出した。


「ショット!ショット!」


まず2本、スケルトンドラゴンが踏ん張っている前脚の爪の下にそれぞれ飛ばす。


そしてそのままスケルトンドラゴンの頭の方に向かう。当然ながら巨大な頭蓋骨が牙を向く。


「グオオオ!!」 「あぶねっ!!」


噛みつかれそうになったものの、六樹はすぐさまスケルトンドラゴンの胴体と地面の間に滑り込んだ。


プスッ、プスッ、と投げナイフの要領で4本程地面に突き刺した。そして、そのままスケルトンドラゴンの股の下を通って外に出た。


「これで最後だ!」


更に後ろ脚の部分にそれぞれ飛ばした。これで準備は整った


「キョウさん!アバルさん!すぐに離れて!!」


「おう!!」 「分かった!」


スケルトンドラゴンから離れる二人、すると奴の敵意は六樹に向いた。だが、六樹の顔には余裕があった。


「俺がこの世界で初めて使った技を食らわせてやる」


「グオオオーーーー」


「落ちろ!!アイテムボックス!収納!!」


次の瞬間、緋影が突き刺さっていた地面が丸ごと削れ落とし穴も開通した。スケルトンドラゴンは踏ん張りを失い直径は15メートル程、深さは20メートルはある落とし穴にそのまま落ちていく。


アイテムボックスによって地面を削り取り落とし穴にするという方法は六樹が初めて使った技であるが、地面に直接触れなければ発動出来ないという制約があった、しかし[剣心刀身]の効果で緋影を地面に突き刺す事でその条件を満たしたのだ、この落とし穴作戦:改により、スケルトンドラゴンを嵌めることが出来た。そして六樹は上からその光景を見てこう呟いた。


「納骨完了、一応言っておくが、()()()()()()()だからな?」


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