28話 魔物と素材
スケルトンドラゴンと直接対峙するグループはそれぞれの戦闘スタイルを確認したのち、夕方まで近接連携の練習をした。
「よし!今日はここまでだ!午後からは各自で装備を整えるように、ギルドが経費で出してくれるらしいからこの機会に色々繕っておけ!解散!」
グループが解散すると、キョウが六樹に声をかけて来た。
「よっ!ルーキー!最前線に参加させて悪かったな、大丈夫そうか?」
銀級未満から引き抜いた人材はゲロンを始めとして六樹以外にも三人程いたが、その誰もがベテラン冒険者といった風貌であり、新人である六樹をキョウが気にかけてくれているのだ。
「はい、今のところは問題無いです。個人的に戦う理由もありますし、ところでなんで俺を指名したんですか?」
「いやー、変な話かもだが、お前急に強くなったよな?それも別人みたいに」
「え!?……確かにそうですね、」
キョウは六樹の実力が急激に伸びた事を見抜いていた。しかし特に詮索する気はないようだ
「方法は聞かないが、強いのはいい事だ!そう言えばちゃんと自己紹介した事なかったな、俺はキョウって言うんだ!よろしく!」
「俺は六樹亮です。………キョウってなんだか日本人みたいな名前ですね?」
なんとなく感じた感想を口に出してしまう六樹、対してキョウは驚くほど食いついてきた。
「鋭いなルーキー!!この名前は俺の親父が江川さんに頼んで付けて貰っただよ!!真っ直ぐ育つようにって意味なんだ!カンジもあるんだぜ!!」
そう言って金色の冒険者プレートを見せてきた。そこには漢字で [香] と一文字で書いていた。
(香車じゃねーか!!)
心の中でツッコミを入れてしまう六樹
確かにこれ以上無いくらいに真っ直ぐだ、名は体を表すと言うが、確かにそうなったらしい。
槍使いが香車か、確かにピッタリな気もする。
六樹はその後しばらくキョウもとい香としばらく雑談した後、鍛治屋に向かった。
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「おう坊主!!いらっしゃい!!」
六樹が来たのはアングリッチを貰った鍛治屋だ、ちなみにアンリは教会の仕事を手伝いに行くらしく一人で来た。
「おっちゃん、仕事を頼みたい」
「おっ!聞いてるぜ、アンデットのドラゴンが出たんだろ?何をして欲しいんだ?」
「アグリッチの点検と武器の新調を頼む」
「分かった!まずアングリッチを見せてみろ」
六樹はアングリッチを手渡す
「……ふむふむ、思ってたより摩耗してるな、激しい戦いでもあったのか?」
「まぁその剣で魔法や物理攻撃を防いだりもしたからな、まぁ褒められた使い方じゃないよな」
六樹はアングリッチを攻撃手段だけでなく防御手段としても使っている。なんなら相手の隙を伺う戦闘スタイルの関係上、後者の方がよく使う気もする。
「いや、それは問題ない。むしろこの剣の使い方としては正解だ」
「え?そうなの?」
鍛治師の意外な言葉に驚く六樹、すると説明が始まった。
「俺が打つ武器にはコンセプトがある。このアングリッチは守りに適した剣で特別頑丈に造ったんだ」
「その頑丈さにかなり救われたな」
「たが、この剣の真価はこんなもんじゃない!前は魔王軍が来て言いそびれてたが、坊主!この剣に魔力を込めろ!戦闘時以外にも暇さえあればひたすら込め続けろ!その度にこの剣は硬くなる。それはもう壊すことが難しいなほどにな」
「そんなに頑丈になるのか!?」
「あぁ、この剣は育てられる。そのうち伝説の聖剣と撃ち合っても砕けないほどの強度になるぞ!」
アングリッチの思わぬポテンシャルを知り驚く六樹、しかし今日は消耗した部分を整備してもらう運びとなった。
そして、次の話に切り替わる。
「で?武器を新調するんだよな?どんなやつが欲しい?」
「それなんだが、素材にこれ使えないかな?」
そう言って六樹は棘獅子から採取した赤い棘をアイテムボックスから取り出した
「おっ?これは棘獅子の棘か?また珍しいもん持ってきたな」
「そんなに珍しいのか?」
「そりゃおめー、棘獅子は山奥に住んでてどこにいるかもわからん上に、探し回って見つけても毒針を食らって返り討ちに会うからな、はっきり言って割に合わん」
「俺何回も会うんだけど……」
「ははっ!それは運が悪かったな!いや、素材が手に入ったんだから逆に幸運とも言えるか?」
鍛冶師に笑われた事から察するに本当にレアな獣のようだ。
「貴重なのは分かった、使えそうか?」
「おうよ!市場に出回るのは稀たが武器の素材として一級品だぜ!まぁ、よく暗器として加工されるからイメージは悪いけどな」
暗器として使われるというのはその毒を使う為だろう。六樹も一度あの毒で倒れた、身をもって危険だと分かる。
「この棘の毒は一体なんなのか知ってるか?あり得ない程の速度で麻痺するんだが……」
六樹は鍛治師にそんな質問をする。棘獅子の毒は体に回る速度が早すぎる。六樹はムカデやスズメバチ、マムシなどに刺されたり噛まれたりした事があるが、痛みはともかく流石にこれほどの効果はなかった。
「棘獅子は魔物たがらな、こいつの毒は魔力に作用すんだよ」
「魔物?何それ?普通の生き物となにが違うんだ?」
魔物というファンタジーではよく聞くが、元いた世界では存在しえないカテゴリーに六樹は困惑する。
「坊主、知らねーのか?生きる為に魔力を補給する生物の総称が魔物だ!この辺じゃ棘獅子や角猪、あと有名どころだと竜なんかもそうだ」
「魔力を補給?魔導師みたいなものか?」
「近いっちゃ近いが魔力を補給する目的が、魔法を使う為と生きる為っていう違いがある。」
まだ理解出来ていない六樹に鍛冶師は説明を続ける。
「俺たち人間は生きる為に飯を食ってカロリーだったか?そのエネルギーで体を動かすだろ?魔物は他の生物を喰らって魔力を補給し、それを使って体を動かしてる。俺たちと行動は一緒だが過程がまるで違うのさ」
「なるほど、似て非なる存在なのか……逆に魔力の補給さえ出来れば他の生き物を食わないのか?」
「まぁそういう事になるな、俺はそこまで詳しくないがそういうやつもいるかもな」
この世界には変な生き物がいたが、それは魔物というカテゴリーがあったらしい。興味深いが話が脱線したので軌道修正する。
「それで?棘獅子の毒が魔力に作用するっていうのは?」
「この棘は特殊な構造でな、この棘に魔力を込めてその上で相手に突き刺すと、棘から魔力を流し込むんだ!」
「その魔力が厄介でな、突き刺した相手の魔力の流れを掻き乱すんだよ!その結果相手はまともに動け無いほど麻痺するって訳だ!」
「その理屈で言うと、魔力を補充すれば何度も使えそうだな」
「そう!そこがこの素材の良いところだ!魔力を補充すれば繰り返し使える。たがら暗殺者なんかには好まれるんだよ。……でも欠点もあってな、相手が魔力の制御に長けていた場合は効果が減るから過信すると痛い目に会うぞ」
「かなり便利そうだ、それで投擲用の刃物を作ってくれないか?」
「よしきた!腕がなりそうだ!どんな形状にする?」
「う〜んと、そうだなぁ、投げナイフか?手裏剣か?……」
六樹が悩んでいるとエスタが声をかけてきた。
エスタ(相棒!日本刀の短刀みたいな形にしてもらえ!俺にとっては一番使いやすい)
六樹(この店は日本刀みたいな片刃剣ないんだよなぁ、どう説明するか……)
エスタ(小柄があるだろ?それを見せればいい)
六樹(コヅカ?なにそれ?)
エスタ(小さい日本刀のおまけみたいな物だ、壊れた俺の残骸を回収してただろ?出してみろ!)
六樹はエスタの指示に従い、倉目に破壊されたエスタの依代の日本刀を取り出した。
するとエスタが体を動かしはじめ、日本刀の鞘から装飾だと思われる部分を引き抜くと、そこから細長い小刀が出てきた。
六樹(え!?日本刀ってこんなイカしたおまけが付いてたのか!?)
エスタ(これが小柄だ、これなら投擲にも使えるだろ)
鍛治師に小刀を手渡し、こんなふうに造ってくれと頼む六樹
「分かった、基本的な形状はこれを元にして投擲用にすればいいんだな、それより坊主……その剣は一体なんだ?」
鍛治師は六樹が取り出した日本刀の残骸に興味津々だった。
「砕けてるが俺の国の伝統的な刀だ、切れ味の良さが売りだ」
「それ、俺に預けてくれないか?打ち直してやる!金なんざ要らねえ!造りを調べたい」
突然の提案に六樹は唖然とするが
「え?願っても無い話だけど、いいのか?」
「任せてくれ!だからその刀について知ってる事を出来るだけ教えてくれ!!」
エスタ(相棒!俺に代われ、懇切丁寧に説明してやる)
「あぁ!その刀は………」
エスタが六樹の口調を真似ながら細かい仕組みを説明し始めた。鍛治師は目を輝かせながら聞いていた。
1時間後
「よし!今からすぐ作業に取り掛かる!刀の方は間に合いそうに無いが、他は明日には終わらせるから期待してろ!」
「めちゃくちゃ早いな、お代なんだがギルドに請求しといて欲しい」
そう言って六樹はギルドから発行された経費を負担する旨が書かれた証明書を渡した。
「確かに承った。ギルドから話は聞いてるから問題ないだろう」
こうして六樹は新しい武器への期待を胸にしながら鍛治屋を後にした。




