25話 呪いの息吹
最近読んでくれている人が増えてきて嬉しい限りです。
地中から奇襲を仕掛けてきたのは、骨格標本のようにきれいに骨だけの姿になったドラゴンだった。翼と腕が一体化したフォルムからしてワイバーンにも近いと言えるかもしれない。
大きさは少なく見積もっても20mはある。見るからに禍々しいオーラを纏っており、存在しない眼球からの視線は、三人を敵として認識している事がわかる。
地中から這い出たスケルトンドラゴンは大きな雄叫びを上げた。
「グアアアアアアアーー!!!」
「耳を塞げ!!鼓膜がやられるぞ!」
スケルトンドラゴンの雄叫びの威力に出鼻を挫かれる三人、しかし真っ先に飛び込んだのは騎士であるグレースだった。大剣を振り翳してスケルトンドラゴンの翼と一体化した前脚に斬りかかる
「はあああぁぁ!!」
ギンッと金属が何かに当たった音が響いた。しかし
「なに!?届いていない!!なんだこの壁は!?」
「瘴気です!!瘴気を鱗のように纏わせているんです!!」
大剣の一撃はスケルトンドラゴンには届かない、スケルトンドラゴンは取り込んだ高密度の瘴気を鱗のように自身の周囲に纏わせる事で、触れる事すら許さない。呆気に取られた瞬間、スケルトンドラゴンの爪による一撃がグレースを襲った。
「ぐ!…ぐあっ!!」
咄嗟に受け身を取るグレースだが受け止めきれず数メートルほど吹き飛ばされた。鎧が攻撃を受け止めてくれたのもあり、なんとか最悪の事態は回避する。だが
「なんだこれは!?鎧が朽ちてる!?」
スケルトンドラゴンの爪による攻撃を受けた場所から鎧がまるで燃えるように朽ち始めた。
「その鎧を捨ててください!!呪いです!それもとびきり強いやつ!体まで広がれば大惨事です!」
アンリの忠告を聞きグレースは鎧を脱ぎ捨てる。
「火炎弾!!」
ルーナが魔法をスケルトンドラゴンに直撃させた。だが、全く効いた様子がない
「嘘でしょ?なんでよ?」
「私が行きます!ルーナ!逃げる手筈を整えてください!!」
絶望するルーナを横目にアンリがスケルトンドラゴンの元に向かいそのの頭蓋骨の上まで飛び上がる。
「スキル!聖拳突き!!」
ガゴンッという音と共に、アンリの拳がスケルトンドラゴンの頭に突き刺さる。だが、先ほどと変わらず瘴気の鱗に阻まれる。
「うぉぉぉ!!いっけぇぇー!!」
アンリの本気の攻撃にバキッという音とともに瘴気の鱗が破れ、アンリの拳がスケルトンドラゴンの脳天に突き刺さった。
ゴンッという鈍い音とともにスケルトンドラゴンの頭が地面に叩きつけられる。
「すごい!攻撃が通った!!」
スケルトンドラゴンに初めてまともなダメージが入り歓喜の声を出すルーナ、だがそんな希望はすぐさま打ち砕かれる。
「グオオオオオォォーーーーーーーーーーーー!!」
という咆哮と共にスケルトンドラゴンは周囲に魔力の放出による衝撃波を繰り出した。アンリは吹き飛ばされる。
「っ!!」
すぐさまアンリは体制を立て直すが、スケルトンドラゴンが何かの準備を始めた。
ブオン………ブオン……ブオン…ブオン、ブォン.ブォン
スケルトンドラゴンが不自然に紫色の光を発し始める。直感でわかる、何かがくる。
「伊吹が来ます!二人とも私の後ろに!」
グレースとルーナがアンリの背後に移動する。
「いと慈悲深き我らの神よ、か弱き我らに三度の護りを与えたまえ!聖壁!」
そう唱えたアンリの目の前に光の壁が三枚に渡り展開された次の瞬間、スケルトンドラゴンのブレスが放たれた。
ゴオオオオオオオオオオオ
そのブレスは黒い炎のようであり、その中に紫の光が入り混じっている。見るからに禍々しい攻撃が聖壁にぶつかった。
「くっ!ルーナ!まだですか!?」
「もうすぐだから!あと少しだけ耐えて!」
ガシャーンッと一枚割れた。二枚目が攻撃を受け止める。
「来た!私の箒!!」
空から一本の箒が現れた。魔法使いの移動手段であり、近くに置いていた物をルーナが先ほどから呼び出していたのだ。
バリンッ と二枚目の聖壁も割れた。ブレスは勢いを殺す事なくいまだに放たれ続ける。
アンリは最後の一枚に力の限り魔力を込める。
「ウッ!、ウオオオオ!!」
「グレース乗ったわね!?アンリ逃げるよ!!」
「は、はい!!」
だが、アンリが希望を持った次の瞬間
バリバリッ、ガシャーン と最後の一枚が割れた。
「!?、こ!この!!」
間一髪アンリは手に魔力を込めて、黒い炎をなんとか受け止める。そして、
「逃げるぞ!アンリ!!」
ルーナが操縦する箒に乗ったグレースがアンリを掴んだ。
「ルーナ!飛べ!!」
「わかってる!!重んもい!!けど!飛べーー!!」
ルーナは本来ならばあり得ない3人乗りの箒を何とか飛ばし、上昇した。
「よし!射程範囲外だ、逃げ切れたぞ!アンリ!!……アンリ?」
グレースはそう語りかけるがアンリの返事がない、アンリの方を見ると、グレースは絶句した。
「あっ、私、これ……ぐっ!!ぐっ!グアアアア!!痛い!!イタイ!ああああ!!」
ブレスを手で押さえ込んでいたアンリ、だが抑えきれず最後には彼女の前胸部に直撃したのだ、一瞬の沈黙の後、アンリは呪いの侵蝕による痛みで絶叫する。
「どうしたのアンリ!!大丈夫!?」
「まずい!アンリが呪いのブレスにやられた!!」
「どうする!?何かできる事ある!?」
「治癒か解呪を使えるか!?」
「ごめん無理!!」
「なら出来ることは無い!!今できることは1秒でも早くアンリに治療を受けさせる事だ!!急げルーナ!!」
痛みで絶叫し、暴れるアンリをグレースはなんとか抑え込む
「アンリ!しっかりするんだ!君なら呪いも解けるだろ?」
「ぐわぁあああァァ!!」
「グレース、多分だけどアンリは錯乱の呪いもかかってるんだと思う!」
「アンリの腕なら解ける筈だ!どうにかならないのか!?」
「痛みを増幅させて錯乱させる。シンプルだけど強力な呪い、今のアンリは半分以上意識が飛んでると思う。魔法を使うだけの集中すらも出来ないはず…」
「とにかく急ぐしかないのか…歯がゆいな」
二人はアンリが箒から落ちないようにしながら可能な限りの速度でアルヒの町まで向かった。
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夕日が沈みきり、辺りが暗くなり始めた頃、三人はなんとかアルヒの町に到着した。
冒険者ギルドの前に箒を下ろした。
「ルーナ、教会に行って高位の神官を呼んできてくれ!!私はアンリをギルドの医務室に運び込む!!」
「分かった!すぐに誰か連れてくる!!」
グレースはアンリを担ぎ上げ、ギルドの中に入った。
「何事ですか?ってアンリさん!?」
「医務室を使わせてもらうぞ!アンリが呪いにやられた!」
受付嬢に最低限の説明を行い、グレースはギルドの奥にある医務室のベットに寝かしつけた。すると受付嬢がアンリに治癒魔法をかけ始める。
「…………ダメだ!私の下級魔法じゃ歯が立たない、一体何があったんですか?」
「実は……」
グレースがことの顛末を話し終えたその時、ルーナが教会からプレテを連れてきた。かなりの早さだ。
「レカルカさんの容態は!?」
「……これはかなり不味い、下がってください、この子は死なせません!」
アンリの傷口を抑え、プレテが治癒魔法をかかる。
プレテの治癒魔法で、呪いの影響で広がり続けていた傷口が少し塞がった、だが
「なに!?また広がり始めた、これほどの呪いは初めて見ました。皆さんよく聞いてください!私は彼女の治療を続けます。皆さんは呪いを解ける人材を探してください!」
プレテの方針を示す。そこに受付嬢が条件を付け加えた。
「支部長に細部を報告する必要があります。二人は一緒に来てください。」
「え?…はい、分かりました。同行します。」
「えっ?でも……分かりました。」
友人の危機に、直ぐにでも飛び出したい気持ちを抑えて今は受付嬢の指示に従う。
「大至急、お願いします。」
プレテがそう背中を押したことによって、三人は医務室を後にするのだった。
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ギルド支部長に事の経緯を報告した。
「分かりました。私はスケルトンドラゴンの対策を行います。また、アンリさんの呪いについてもいくつかの方法を検討してみます。」
「まずグレースさんはこの紙に書いた場所を回ってみてください。解呪出来る人がいる可能性があります。ルーナさんは隣町の教会の神官に話をして、可能であればここまで連れて来てください。よろしくお願いします。」
「分かりました」 「すぐに向かいます!」
支部長の指示に従い、すぐに部屋を飛び出す二人、一人残った受付嬢が質問する。
「私は何をすればいいでしょうか?」
「あなたは手の空いた者をプレテ様の支援に回して下さい。また、魔力回復のポーションなるべく多くを用意するように……あと、ひと段落したら誰か人を出してムツキリョウ君を呼びに行かせなさい。」
「はい、分かりました」
指令を受けた受付嬢が部屋を後にする。
一人になった支部長はギルドの中にある酒場に足を運んだ。
酒場には仕事終わりの冒険者や町の人々が一日の疲れを忘れるために酒を片手に談笑している。支部長はその中の一人の青年に近づいた。それに気づいた一人の青年が話しかけてきた、彼は六樹をチグレから助けた金等級冒険者である槍使いの青年だ
「バロンさん!酒場に来るとは珍しいですね!一杯どうですか?」
「キョウ、私の事は支部長と呼びなさい。」
「今はプライベートだからいいでしょ?」
「いえ、残念ながら仕事です。あなたに頼みたい事がある。」
「!?……分かりました支部長、かなり深刻な問題ですか?」
「はい、ここからは対応を間違えれば町が滅びかねませんね、まったく、忙しくなりそうです。」
次回から再び六樹視点に戻ります。彼はアンリを救えるのか?
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