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24話  思いがけない遭遇

少し時間は巻き戻り、アンリの視点に切り替わります。

六樹と別行動をとり、冒険者ギルドに到着したアンリ、受付を済ませると知り合いに声をかけられた。


「おはようアンリ!今日は一人か、珍しいじゃないか」


「そうそう、最近ず〜と一緒にいた彼氏?は今日いないの?」


そう声をかけてきたのは女冒険者仲間であり友人でもある二人、鎧を着た騎士のグレースと黒い衣装に先端の曲がったとんがり帽子を被った魔術師のルーナ、二人とも銅等級だ、彼女達はアンリがここ最近では珍しく単独行動している事を意外に思っているようだ。


「彼氏じゃないですよ、彼は別件があり今日は来ていません。」


と簡潔に説明するアンリ、だがルーナの追撃が始まる。


「なかなか別行動しないから聞けなかったけどさ!彼一体何者?急に現れたけど割とイケメンじゃん!?まえ気になってちょっと話しかけてみたんだけど…受け答えになんだか知性を感じるんだよ、私には分かる!あれは私たち平民とは違う教育を受けているね!」


ルーナはいつもはバカなのにこういう時だけやたらと勘がいい事にアンリは内心呆れる。そんなルーナをグレースが止める。


「よさないか、あまり人の事を詮索するもんじゃない、冒険者なら尚更だ」


「グレースだって気になるでしょ!?正直になんなよ!」


「………まぁ、正直なところ、私も気になる。」


「負けないでくださいよ!」


グレースの裏切りにアンリは肩を落とす。そして勘弁して教えても良さそうな情報だけを話し始めた。


「彼は最近、遠くの国からここに来る途中で山奥で倒れていたんです。行くあても無いので私の家に住み込みで仕事を手伝ってもらっています。」


「え!?つまり、行き倒れてる所を助けてあげて、更には居候させてるの?なにそれ、そこまでする?」


「確かに、私なら助けて数日は家に泊めてやるかもしれないが、居候まではさせないな」


二人はアンリの行動にそう声を上げた、もっともな話だ。


「……ほっとけなかったんですよ」


アンリがそうこぼした。


すると二人はじっとアンリを見つめる。そしめルーナは質問攻めは続けた。


「あともう一つ聞きたい事が!前に彼、棘獅子を倒したって言ってたけど、あれ本当?」


「本当ですよ、というのも山奥で倒れていたのは棘獅子と戦闘になり毒を受けて動けなくなったからです。」


アンリが肯定する。二人は少し驚いた表情だ


「ふむ、棘獅子を単独で倒したとなれば銀等級相当か?少なくとも銅よりは上だな」


感心するグレースとは対照的にルーナがアンリに食ってかかる。


「アンリあんた、前から強い男が好みだって言ってたけどまさか…」


「違います!私が言ってるのは強い心を持つ人なのであって、物理的な話じゃありません!」


「だったら顔か!顔が好みだったんだろ!?正直に言ってみろ!!」


ルーナの勢いにタジタジになるアンリが答える。


「か、顔は……まぁなんというか、好みではありますが……」


「かわいい」  「可愛いな」


同意する二人、そしてグレースがまとめる


「つまるところ、好みの顔でそれなりに優秀そうな殿方を拾ったので、助けてそのまま同居する事で手元に置いている、と」


「言い方に悪意を感じます」


「レカルカ家のご令嬢はなかなかのやり手ですな!」


そう言って茶化すルーナ、一方でグレースは真面目にアンリの心配をする。


「しかし、同居とはまた大胆な、何かされないとも限らない」


「そ、それは…」


グレースの指摘に虚を突かれるアンリ、だが意外にも助け舟を出したのはルーナだった。


「まぁアンリなら大丈夫でしょ!何かあれば殴って解決できるし…………何もなくても殴りそうだけど」


「殴りますよ?」 「ごめんって!」


ルーナが謝ると笑いに包まれる。談笑がひと段落すると、仕事の話が始まった。


「ところでアンリ、君も郊外に発生したアンデットの討伐を依頼されているんだろ?」


「はい、私は特に相性が良いですからね」


「私達もなんだよ、ねぇ一緒に行かない?アンリが居てくれると安心なんだよー」


「そうですね、バランスも良いですし、一緒に行きますか」


アンリとグレースとルーナは即席でパーティを組み、依頼達成の為にアルヒの町の郊外に向かい始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


移動中、ルーナがアンリにこんな質問をした。


「ねぇアンリ、なんで急にアンデットなんかが湧いてきたの?」


「それはですね、先日アルヒの町の郊外でガドル王国軍と魔王軍獣人部隊との戦闘があったじゃないですか?あの戦闘でガドル王国軍は惨敗、多数の戦死者が出たんですよ。その際に放出された()()からアンデットが発生したと聞いています。」


「王国軍弱すぎない?前は向こうがお情けで退いてくれたからよかったものの、完全に占領されてたよね」


と、ガドル王国の兵達に悪態をつくルーナ、するとグレースが擁護を始めた。


「あれは向こうが上手だった。まさか()()()()を超えて来るとは、それに今思えば事前に情報が漏れていたのも向こうの術中だったのだろう、山間部から来ると分かった所で対策する範囲が広すぎて、軍を広く展開せざるを得ない。そして広がったところを各個撃破されたんだ、かなり周到な計画だな」


この付近の地理的条件を説明する必要がある。


アルヒの町はおおよそ円形に近いこの大陸の南端付近に位置しており、実は北西部一帯がモルガル共和国と隣接している。そのため本来は戦争の最前線であるが、魔王軍から侵攻を受ける事は驚くほど少ない。その理由は国境にあたる部分が巨大な白の山脈によって事実上封鎖されているからだ。


白の山脈は名前の由来である万年雪が特徴で、非常に高い標高の山々が険しく連なる。そのため軍を行軍させるのは無謀にも等しいと言える。

海路から大回りする方法もあるが、そこにはガドル王国が誇る巨大な海上要塞()()()()があり、しっかりと対策されている。

その為、先の戦役では獣人部隊の精鋭達が白の山脈を個人のスペックを持って無理矢理突破したのだった。


しかし、魔王軍が白の山脈を越えられない要因がもう一つある。それについて言及したのはルーナだった


「でも白の山脈って竜がいるんじゃなかった?よく通れたね」


「それなんだが、一年位前から眠ったのか引っ越したのかは分からないが竜を見かけなくなったらしい。竜がいない事に賭けて奴らは来たのかもしれないな」


そんな事を話していると目的地に到着した。そこは情報通り戦場跡だ、スケルトンやゾンビなどのアンデット達が彷徨いていた。


「死体の処理をサボったな?死んだ兵士がゾンビ化してるじゃん!」


「二人はゾンビの相手をお願いします。私はスケルトンを処理します。」


「了解」 「オッケー!」


さっと役割を決めた三人はさっそく仕事にとりかかる。

グレースがゾンビに斬りかかり、動けなくなったゾンビをルーナが火属性の魔法で焼却していく。

一方のアンリはスケルトン達に神官の聖魔法を拳に纏せた一撃を叩き込みバラバラにしていく、これで成仏させているというのだから驚きだ。


しばらくの間、三人は特に苦戦することもなく、アンデットを処理し続けた。


周辺にいたアンデットを処理したアンリが怪訝な顔をして、グレースに質問する。


「グレース、前の戦いでの戦死者はどれくらいの人数だったか知っていますか?」


「確か、700人程が打ち取られたと聞いたような、正確な数は分からないが」


「700人ですか……それにしてはこの()()の量、妙ですね」


「どうしたのアンリ?瘴気が多すぎるって事?」


「いえその逆です。700人も死者が出ていてこの量は少な過ぎるんです。」


考え込むアンリを見て、グレースが質問する。


「私は魔法関連は詳しくないから聞きたいのだが、そもそも()()とはなんだ?」


アンリはグレースの質問に答える。


「生き物は皆、死と同時に大量の魔力を放出するんです。ですが殺されたりすると、その魔力が怨みや憎しみ、未練などの負の感情に汚染されるんです。それこそが瘴気であり、アンデットの動力源となります。」


「なるほど、それが異常に少ないという事はつまり…」


「皆んな安らかに死んでいったって事?」


「バカ!違う!エネルギーを大量に吸い取った()()()がいるという事だ、そうだろ?アンリ」


「はい、そう考えるのが妥当です。」


グレースに考えを修正され、焦り出すルーナ


「ヤバいじゃん!早くギルドに帰って報告しよ?」


「そうですね、一度持ち帰って対策する必要があります。ですがその前にその何者かのエネルギー補給を断つためにこの辺りを浄化します。」


そう言うと、アンリは地面に大きな魔法陣を描き始めた。彼女一人の力では広範囲の浄化を行えないが、魔法陣を使い周囲の魔力も利用する事で力を効果範囲を増大させるためだ。


「いきます!いと慈悲深き我らが神よ、この地に眠りし御霊の未練、穢れと共に祓いたまえ、浄化!!」


辺りが光に包まれ、その光が地面を駆け抜けるように走っていく。淀んだ空気がすぐさま澄んでいくのを感じる。


しかし、その時だった。


ズシンッズシンッと

森の方から何かが近づいてくる音がする。澄んだ空気が再び淀み始めるのを肌で感じる。


「ルーナ下がれ!戦闘準備だ!」


グレースとアンリの前衛が前に出る。

3人は戦闘態勢に入り、物音がした森の方を警戒するが、なかなか相手の姿が現れない。


すると、ゴゴゴゴ、と地面が揺れ始めた。


「何これ!?」「下だ!下から来るぞ!」


すると、アンリの足下から巨大な爪が伸びてきた。


「危ない!!」


危うく突き刺さる所だったが、地面を警戒していたので助かった。地面から突き出た爪は、そのまま腕を地上に伸ばした。いや腕ではない、翼だ、腕であり翼であるのだが、翼であるという事に気づくのに時間がかかった。何故ならその翼は骨しか残っていなかったからだ。


「スケルトンです!警戒を!」


それは、地下から地上に這い上がって来た。

その全体像を見て、グレースは思わず声に出す。


「見かけないとは聞いていたが、まさか死んでいていたとは……」


アンリが息を呑みそして呟く


()()()()


この世界の最強種であるドラゴン、しかし肉は全て無くなり骨しか残っていない。言うなればスケルトンドラゴンが三人の前に現れたのだった。


ドラゴンはファンタジーのロマンです。

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