21話 始まりの場所
最近になって初めて〜〜〜で仕切る事で場面転換する方法を学びました。
この世界で六樹が召喚された場所が江川歩の研究施設である可能性が浮上し、すぐに確認すべく六樹は一人で沢を登っている。今日はアンリは来ていない
「すみません、今日は優先度の高い依頼が入ってるんで、今日は別行動にしましょう。あと、山に行くなら獣を何匹か狩っておいてください」
などとお使いを頼まれた。今の六樹なら、一人で山に入っても大丈夫だと判断されたらしい。
一方のアンリはと言うと、なにやらアルヒの町の郊外でアンデットが湧いているらしく武闘派神官である彼女に声がかかったらしい、ついて行こうかと聞いたものの、アンリ曰くアンデットに対しては相性がすこぶる良いので別に一人でも楽勝なのだそうだ。
というわけで今はかつて六樹が慎重に歩いた川沿いの砂利道を軽快に進んでいる。
「獣を狩る時はあの技を試すか」
エスタと一心同体となり、身体が馴染んできた為か、六樹にはあるスキルが宿っていた。
そのスキルとは[剣心刀身]
その効果は、六樹が所有する刀剣の類は自身の体の一部のとして見なされるというものだ。
鑑定スキルで調べられる事を知らず、どんな効果なのか調べるのに四苦八苦していたのはここだけの話だ。
「おっ、丁度いい所に兎がいるな」
と、そんな事を考えていたら獲物を見つけた。灰色の野兎だ、六樹はアイテムボックスからいつかの短刀を取り出し、それを構える。それはまるで銃口を向けるかのようだ。
「ショット!」
次の瞬間、短刀が勢いよく射出される。詠唱の合否判定が分かり、六樹が言いやすいように変化こそしたものの、これは紛れもなく射出魔法だ。
六樹は倉目との戦闘で、自身の魔法が威力不足であるという事を実感した、そのため、インスタントに殺傷能力を上げるために考えたのが、武器を射出するという方法というわけだ。
飛び出した短刀はまっすぐ兎に向かう。
しかし、狙いが甘かったのか、ギリギリ短刀は兎からそれた場所に突き刺さった。驚いた兎はその場から逃げ出す。
「くそ、外した!戻って来い![アイテムボックス]」
そう言うと、先ほど地面に突き刺さった短剣がシュッと姿を消し、すぐさま六樹の手元に現れた。これこそがスキル[剣心刀身]の効果、六樹にとって刀剣は体の一部にも等しい物となったため、直接触れなくてもスキルであれば発動する事が出来るようになった。これを利用する事でアイテムボックスに出し入れする事で飛び道具を即座に回収できるようになったのだ。
「次だ!兎の動きを読んで………ショット!」
再び飛び出した短剣は今度は狙いどうり兎に命中し、突き刺さった。急所に当たったのか兎はすぐに倒れた。
「よし、晩飯ゲット、早いとこ収納しておこう」
六樹はアイテムボックスと念じる。すると、短刀と共に死んだ兎も収納された、これもスキルの効果だ、刀剣が体の一部なら、それに触れている物も六樹の身体に触れている判定になるらしい。そのため短刀が突き刺さったうさぎも条件が揃い収納可能となったのだ。
スキルの判定は、刀剣が何かに刺さった状態でしか触れているとは認識されないらしく、机の上に剣を置いても机ごとアイテムボックスに収納するような真似は出来なかった。便利だが意外に判定がシビアだ
六樹は目的地に向かいながら獲物をさがす。そして見つけた。鹿だ、立派な牡鹿が川で水を飲んでいる。六樹は息を殺して短剣を構える。今度は外さない。
「……ショット!………あっ、当たったけど普通に逃げてる」
短剣は見事に牡鹿に命中したが、致命傷にはなり得ず普通に逃げ始めた。六樹は追う
しかし、すぐに目の前を走る牡鹿に何か棘のような物が刺さった、赤い棘だ。すると牡鹿は痺れ始めた。
「!?」
そして次の瞬間、グオッという短い雄叫びと共に見覚えのある獣が飛び出した。その獣は牡鹿の首に噛みつき、そのまま牡鹿を締めた。
「お前とはよく会うな、全く会いたくなかったけど…」
その獣は棘獅子、六樹が初めて死闘を繰り広げた獣であり、刺し違える形となった相手だ。目の前にいる個体は前にあったものよりも少し小さいように思える。棘獅子は牡鹿の首を咥えたままこちらを見ている。
六樹(エスタ、逃げるか?あいつは今獲物を獲って満足してるかも)
エスタ(逃げようと思えば逃られる。だが、今の俺たちなら勝てる相手だぞ?)
エスタがそう告げる。六樹はアングリッチを引き抜き戦闘の意思を示した。
「なら、俺の獲物を返してもらおうか」
そう宣言すると、六樹は棘獅子に向かっていった。
「ガロォー!」
と雄叫びを上げ、棘獅子が赤い棘を飛ばしてくる。
だが、六樹は剣で全て弾く、同じ手は食わない。
「グワァ!!」と棘獅子が飛びかかる。
だが六樹はこれも華麗に躱す。まるで動き方を知っているように、それも何度も躱し続ける。
これには種がある。
一つはシンプルにエスタが六樹の体を動かしている事だ、まだ六樹の身体が追いついていないものの、その技術は達人のそれだ。
そしてもう一つ、それはスキル[鑑定]だ
六樹は鑑定スキルによって相手の筋肉の動きを観察しているのだ、六樹の現代知識をエスタに共有する事で、相手がどの筋肉を収縮させ、どこを弛緩させるかを見て、瞬時に次の行動を予測出来るようになったのだ。動きが単純な獣であればなおさらその精度があがる。
筋肉痛に悩まされていた際、暇すぎてひたすら自分の筋肉の修復具合を鑑定していた事で思いついた発想だが、戦闘でそれなりに効果がある事を初めて実感する。
棘獅子の攻撃を捌き続ける六樹、
そして飛ばしてきた赤い棘を手で掴んだで止めた。
「お返しだ!」
そう言った六樹は魔法で赤い棘を飛ばし、棘獅子に突き刺した。どうやら棘の毒は棘獅子自身にも効くらしく、動けなるほどではないが明らかに動きが鈍くなった。
「グ、グオオォー!」
弱った棘獅子がやぶれかぶれで飛びかかる。そのタイミングに合わせて六樹は華麗に棘獅子の下に潜り込んで、抜刀の要領で剣を振るった。
「一閃!」
ズバッと、棘獅子が真っ二つに斬られる。予想以上の威力に内心驚くが腕の筋肉が痛い事に気づく、少し無理をしたようだ。
スキル[紫電一閃]を獲得しましたと脳内アナウンスが流れた
「おっ!新しいスキルか、鑑定……どれどれ?」
[紫電一閃] 抜刀による剣撃の際に威力、射程、速度が上昇する。
「すごい強そう、こういう攻撃的なスキルは初めてだな……ところでステータスはどうなってんだ?」
小学生並の感想を吐いたところで新たな疑問を解決しようとステータスウィンドを表示した。
六樹 亮 17歳
筋力C+ 魔力B+ 機動C+ 技術A 射程C
所持スキル
翻訳、アイテムボックス、鑑定、ディスタブスキル、身体強化、剣心刀身、紫電一閃
「すげーめっちゃ伸びてる、ていうかこの+ってなんだよ?えーと……鑑定!」
[+表記] 特定の条件次第でステータス以上の能力を発揮出来る状態
「あ〜なるほどな、エスタが体のリミッター外せるからプラスって表示されているのか、魔力や技術も多分エスタ関係だな」
エスタ(相棒!この体が俺の技術に追いつけば剣術は更に伸びるぜ!)
と、エスタが今後の期待を語る。現状、六樹の体が戦闘に慣れていないせいで、まだエスタの本領が発揮出来ていないらしい。逆に言えば体が技術に追いつけばさらに伸びるという事だろう。
現状把握が終わったところで牡鹿と棘獅子の血抜きを行う。生き物を殺めたからには可能な限り食べるなりして活用するのが筋だと六樹は考えているからだ。そして、何かに使えそうなので棘獅子の赤い棘を可能な限り回収する。
作業が終わると六樹は再び進み始めた。
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しばらく歩いて、ようやく転移初日に野営した場所に到着した。そこにはまだ焚き火跡が残っていた。そこからは小川沿いから離れ、尾根の方に登っていく。途中でイノシシに倒された若木があった。そして、記憶を頼りに進んでいくが
「やっぱりだ、なんで見つからないんだ?確かこの辺にあったはずなんだが……」
前回探したが見つからなかったように、何故か小屋が見つからない。おおよその場所は合っている筈だが影も形もない、そんな時エスタが声をかけた。
エスタ(相棒、変な魔力を感じる。多分隠密用の結界が張られてるぞ)
「結界!?それで見つからないのか、破れるか?」
エスタ(当然!俺は魔法はダメだが魔力の操作は得意なんだ、特に魔力の流れを断ち切るのはな)
エスタの指示に従う六樹、すると近くの木と木の間に剣を突き刺すように指示される。
「いくぞ、こうか!?………うわ!?、出た」
すると不思議な幕のようなものが消え、時空の裂け目のようになった。よくみると奥にはあの日見た小屋がある。
エスタ(もたもたしてると結界が閉じる、早く入れ)
エスタに促されるまま中に入る。そして小屋に近づくと、よく見るとそこには江川と漢字で書いた表札があった。間違いない、ここだ。六樹は中に入る。
「俺が追い立てられて出て行った時と何も変わってないな」
そこにはいつか見た書斎のような部屋があった。当然だが猪が通った跡がある。しかし、一度素通りして、最初にいた鉄格子や魔法陣がある部屋を見た。しかしそこには変わった様子はなく、依然として魔法陣が妖しく光っているだけだった。
「今回はちゃんと扉を閉めて、よし!書籍を調べるか」
前回の反省を生かし、後方の憂いを絶ってから本棚漁り始める六樹、意外にも魔法に関する書物などは初級の物しか見つからず、この世界の歴史や文化などの書籍が多かった。しかし、机の上に置いてあった本は違った。そこには手書きの日本語でこう書いてあった。
[江川歩 異世界生活の記録] と




