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19話  軽い引き金

倉目の処遇は結構悩みました。

六樹の一撃を受けた倉目が倒れるこむ


エスタ(軽く切り付けただけだ、殺しちゃいない)


エスタの言う通り、倉目はまだ生きていたようだ、だが、完全に戦意を無くしたようで腰を抜かしながらズルズルと逃げようとしている。


「この僕を斬りつけたな!?六樹!?」


何の意味もない確認より命乞いでもすればいいのに、と六樹は乾いた心でそう思う。そして、アングリッチを倉目の喉元に突きつける。


「やめろ!!やめてくれ!だ!誰か……誰か助けてくれ!?」


そう言って倉目はカノジョ達の方を向く、しかし、少女達は怯えた目を向けるだけだった。


「これが、お前の積み重ねだ、倉目」


六樹がそう断じる。そして、脳内でエスタに相談を持ちかけた。


六樹(エスタ、こいつ殺すか?)


エスタ(人間じゃねぇ俺には人の命の価値は分からない、相棒、お前に任せる)


エスタに一任され六樹は少し考え込んだが、結論を出した。


「………………まぁ、殺す程ではないか」


そう呟くと、六樹はアングリッチを下げ、その場から離れようと振り返った。


倉目の罪は主に四つある。

まず魔王軍から逃亡した事だが、これはこの世界の都合に振り回されただけなので、六樹がどうこう言う義理はない、というかどちらかと言うと六樹は倉目の考えは間違ってはいないと思う。


次にエスタに対する仕打ちだが、これはエスタ本人が六樹に一任しているのでノーカンだ。


三つ目は奴隷少女の件だ、だがこれに関しては散々非難したものの、究極的には当人間の問題だと思う。少女達がどう考えてるのかは分からない為、六樹に断罪する気は無い。


そして最後はアンリを攻撃した事だ、正直な所六樹はこれが許せなかった、本気で殺そうか迷うくらいにはそう考えている。だが目を瞑ろう、結果だけ見れば未遂であり、なによりこの場を見ているアンリの目の前で彼女を理由に人殺しするのを見せたくはない。


だからこの場は見逃す。倉目が改心するのを期待するが、六樹やその周りに悪影響がないのならどっちでもいい。そう結論づける


だが


「許さないぞ六樹!!僕とカノジョ達の絆を引き裂きやがって!復讐してやる!君もあの女もいつか必ず復讐してやる!!」


それを聞いた六樹は大きなため息をついた。


「はぁぁ、………………仕方ない、じゃあ殺すか」


あっさりと言い切る。そして六樹は振り返って再びアングリッチを構えながら倉目に近づく。


「やめろ!来るな!!この僕を殺す気か!?」


「仕方ないだろ?次お前とやりあったとして俺が勝てる保証なんてどこにもないんだ。それにお前が復讐のために準備するのは知ってるし、お前は魔法使いだ、腕を切り落としても魔法は放てるし、舌を切っても魔法陣があれば攻撃出来るだろ?だから殺すしかないんだ。ついでにな倉目、俺はお前を殺すことにさほど抵抗がない」


「あ、…ああっ」


六樹のただひたすらに無機質な殺意を向けられ、倉目の嗚呼のような声が響く、倉目は遅れて理解したのだ、敵に回してはいけない人間を敵にしたのだと、真に恐ろしい人間は遥か彼方の異世界ではなく、同じ教室にいたのだと


六樹が剣を振り上げる。そして、容赦なく振り下ろした。


「ウワァァァッ!!……!?」


しかし、咄嗟に目を逸らした倉目に剣が振り下ろされる事はなかった。目を開けてその理由を確認する。するとそこには倉目とっては見慣れたピンク髪の少女が両手を広げて立っていた。


「お嬢さん、危ないからどいてくれないかい?後ろのそいつ殺すから」


命をかけて立ち塞がった少女に、六樹がにこやかに声をかける。だが、目は全く笑っていない。


「いやです。彼を殺さないでください!」


ピンク髪の少女は六樹にそう懇願する。


「それは出来ない、そいつは生かしておくと危険だ」


「なら私ごと斬ってください!」


どうやら少女の覚悟は確からしい


「君は殺さないよ?君は別に悪い事も俺たちに危害を加えようともしてないからね、でもそいつは違う、今さっき犯行予告をしたばかりだ、死んでもらわないと」


六樹が聞き分けのない子供を諭すように淡々と優しく告げる。少女はその殺意が自身に向けられたものでは無いと理解しつつも背筋が凍りつく思いだった。だが食い下がる。


「私が止めます!復讐なんてさせません!!」


そう言い切る。しかし、六樹はいまだに冷淡だ


「ああん?さっきまで洞窟の端でブルブル震えていたのに、一体お前に何が出来るんだ?」


「彼が魔法を放ったら、その間に割り込んで身代わりになる事位は出来ます!そうすれば彼も目を覚ますはずです。私はシンタロウのカノジョだから!」


少女の啖呵を聞いて六樹の目に少しだけ感情が戻る。


「君はなぜ倉目をそんなに庇う?クズだろそいつ、あれだけ怯えていたのに」


「確かに彼は怖かった、私を助ける為に奴隷商に放った魔法が、少しでも機嫌を損ねれば自分に向くかもしれないと考えると、気が気でなかった。」


ピンク髪の少女の口からその言葉を聞いて、倉目は動揺している。しかし、少女は続けた。


「でも!あのどん底から救ってくれたのは彼です!彼がいなければ今の私はいない!」


そう断言する。問題はあれど、恩は恩だと。六樹の問いかけは続く。


「故郷に帰りたくないのか?一生そいつのそばにいる気か?」


「故郷には帰りたいですけど、私はシンタロウ様について行きます。一生そばにいて、復讐なんかする暇もない程幸せにします!!」


その言葉を聞いて六樹は答えを出す。


「……………はぁ、おい倉目、この娘に免じて今回は見逃してやる。だがもし俺や俺の周りの人間に危害を加えようとしたら、次は何人割って入ろうが叩き斬る。分かったら消えろ」


「わっ、分かった、君には手を出さないから」


そう言って倉目達は急ぎ足で洞窟の外を目指し始めた。ピンク髪の少女が最後に一礼して去って行った。


「誰も死なずに済んで良かったです」


アンリがそう六樹に話しかけた。邪魔しないように近くで見ていたのだろう。


「軽蔑したか?」


六樹がアンリに対してそんな質問をする。


「少し、でもあなたが最後に振り下ろそうとした一撃、あれは不自然な間がありました。まるで誰かが止めに入るまでの猶予のような気がしましたよ?」


アンリがそんなことを言う。


「でも、誰も止めなかったら、俺はあいつを殺していた」


六樹の殺意は本物だった。ただ、多少の温情があっただけなのだ


「本気で戦ったんです。命のやり取りがあるのは当然です。あなたの判断は間違いだとは思いませんよ?」


アンリは殺すのも殺さないのも間違いでは無いと肯定するのだった。






「こんな感じで良かったか?」

鬼道清兵衛の墓石をどかし、そこに苗木を植えた六樹がエスタに語りかける。


エスタ(あぁこれでいい、主人様に頼まれてたんだ、エスタ()が死期を悟ったらさっさと墓終いしてそこに苗木を植えてくれってな、そしたら主人様は木になって、落ち葉や花びらと共に世界へ旅に出るんだ)


日本人らしい価値観だなと六樹は思った。そして、苗木に手を合わせる。


六樹(もうすぐここを出る。いいんだな?)


エスタ(あぁ、人間の身体に入った時点でこの場に留まり続ける訳にはいかないんだ、それに主人様も受けた恩は必ず返せってよく言ってたからな!)


六樹(そっか、じゃあよろしくなエスタ、散々こき使ってやる!)


エスタ(おう!千年暇してたんだ、楽しませてもらうぜ相棒!)


こうして六樹達はモノノフの丘を後にした。



一方場面は変わる


倉目達は逃げていた。恐ろしい男だった、魔王軍の兵達から向けられる憎悪のような殺意は知っていたが、あれは違う、まるで蜘蛛が巣に捕まった羽虫に向けるような、機械が家畜を屠殺するような、そんな無機質な殺意、今思い出しても震えが止まらない。


「ぐわっ!?うわっーー!!」


そんな事を考えていると、木の根に足をひっかけ、転倒してしまった。すると、そこに声をかける人影が現れる。


「シンタロウ様、大丈夫ですか?」


それは、ピンク髪の少女だった。元奴隷の少女、倉目が救った気になっていて実際には怖がらせていた少女、トロフィーのようにそばに侍らせて、実際には何も知らない少女、ついさっき倉目を命を賭けて守ってくれた少女が、そこにはいた。


そして、倉目その少女にこんな声をかけた。


「ありがとう、大丈夫だ、それより…………今まですまなかった。君を、君たちを怖がらせていた。もしよければ……君の故郷の話を聞かせてくれないか?」


そう倉目は尋ねたのだった。少女は少しだけ驚いた顔をしたが、すぐにこう返した。


「もちろんです!たくさん話したい事があるので長くなりますよ!!」


少女は笑顔で彼女の故郷の話を始めたのだった。


これにてエスグリミスタ編終了です。

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