18話 二重人格の嫌がらせ剣士
ここまで読んでくれた読書様にはバレてるかもしれませんが六樹はまともな人間としては書いてません
エスタが六樹の体の中に入り、六樹の精神は擬似的な二重人格のようになっている。しかし、よく聞く症状と違い、二人の意識が脳内に同時に共存していた。
「人間の体の具合はこんな感じか…」
エスタが六樹の体の四肢を動かして動きの反応を確かめる。
(エスタ、体の動かし方は分かるか?)
六樹が脳内で語りかける。
「あぁ、主人様の動きは間近で見てきたからな!俺がいればお前は剣の達人だ!俺は裏に潜ってサポートに徹する」
そういうとエスタは六樹に主人格とでも言うべきものを譲り渡す。
「よし、戻った」
今度は六樹の体で六樹が話した、変な感じがしたが不思議とそこまで悪い気はしなかった。
「上手くいきましたか?」
隣で見ていたアンリが心配そうに声をかける。
「あぁ問題ない!無事成功した」
史上初かもしれない精霊の体内移植に成功した事を報告する。そして、
「じゃあ、どうあいつを倒すかを話し合うか」
六樹は喫緊の課題を再度持ち出すのだった。
「と言っても、実はあいつを倒す算段は考えてあるんだ」
六樹には勝算があると、そう言う
「どういう方法ですか?」
「あいつを逃げ回りながら怒らせる。そして杖を切り替える瞬間の隙を狙って一撃で決める。でもこれには問題があって、怒らせる過程で洞窟自体を崩落させられるような事になるとひとたまりもない」
六樹は方法と欠点を挙げた、そこにアンリが提案を挟む。
「なら、私が洞窟の崩落を防ぐように魔法を掛け続けます。逃げ回るのであれば、的を増やすだけなので私は魔力がなるべく多い場所に移動して隠れておきますね」
「そうしてくれると助かる。あいつの魔法は強力だから気をつけて」
六樹の作戦の抱える課題と懸念材料をアンリはきれいに補ってくれた。話が早くて助かる。
作戦会議は早々に終わり、アンリは配置に向かう。六樹はエスタに語りかけた
六樹(エスタ、俺のやりたい事は伝わってるな?)
エスタ(おう!しかし、逃げ回るのは俺任せかよ)
六樹(出来るだろ?)
エスタ(愚問だな!挑発とスキルや魔法は任せるぞ!)
アンリが向かった先から魔法を使ったであろう光が少しだけ見えた。
準備は整った、六樹は倉目のいる中心部に飛び出した。
「逃げ出したかと思ったよ、なんせ相手はこの僕だ」
倉目がそう告げる。まるでもう勝利したかのような余裕の表情だ
「俺こそお前が逃げなかった事に驚いてるよ、魔王軍から逃げた前科持ちだろ?」
すかさず煽り返す六樹に倉目は顔を真っ赤にして反論する
「黙れ!!他の奴らみたいに命をかけて戦えって言うのか!?勝手に召喚した上で勝手に使命を押し付けてきただけだ!!この世界の為に死んでやる義理なんか無い!」
正論だな、と六樹は内心そう思う。だが表情には出さない、それどころか負け犬の遠吠えを憐れむような目を倉目に向ける。
「で、逃げた先でするのが奴隷少女を侍らせてハーレムか?見ていてこっちが恥ずかしくなるぜ、漫画の読み過ぎだろ」
「うるさい!!お前に僕たちの関係の何が分かる!!?水撃砲!!」
しかし、六樹はまるで達人のような足捌きで水の砲弾をかわした、エスタの技術だ。
そんな中、六樹はこんな事を考えていた。
やはりだ、アンリの時といい倉目は後ろに侍らせている奴隷少女達に異常な執着を見せている。あれがあいつの地雷だ、だったら地雷の上でタップダンスでもしてやるか!
エスタ(相棒!こっからは逃げに徹するぞ!)
と、エスタの語りかける。事実、六樹の身体は倉目の杖の攻撃範囲に入らないように動き始めた。倉目は水系の魔法で攻撃を続ける。同時に六樹も煽り続ける。
「不思議だな?奴隷から解放されたはずなのに、なぜ彼女達は怯えながらお前について来てるんだ?」
「奴隷商達をぶち殺して解放した後、僕が共に来てくれるか?と聞いたら喜んでついて来たんだ!」
そう叫ぶ倉目水の砲弾が飛んで来たが、アングリッチで軌道をそらし身を守る六樹、そしてさらに切り込む
「お前……まさかその場で聞いた訳じゃないよな?故郷に送り届けた上で聞いたんだよな?」
「その場で聞いたが?だったらなんだって言うんだ!?」
「お前さ、機関銃を片手に持った殺人鬼にその質問されてNOと答えられるか?俺は怖くて無理だな」
「カノジョ達がいやいや了承したとでも言うのか!?」
「そうだろ、よく考えてみろ、奴隷にされて見知らぬ土地に運ばれ、もしお前の誘いを断ったらどうなる?かなりマシなパターンでも、無一文で土地勘の無い危険な場所での現地解散、最悪の場合は奴隷商を屠った攻撃が自分に向くと考えるな、とても断れる状態とは思えない」
「この僕がそんな真似をするとでも!?」
「するだろ?お前情緒不安定だし、少なくともそう思われていても不思議じゃねーな、お前は奴隷少女達を解放したつもりかもしれないが、ただ持ち主が変更されたにすぎない!」
「黙れ!!!愛し合う僕たちの邪魔をするなー!!くらえ!打ち水!!」
倉目がそう唱えると周囲にビー玉サイズの水の玉が無数に生成されたそして、六樹に向かって散弾のように発射された。
エスタ(全力で行くぜ!相棒!!)
エスタは体を操作し、人間とは思えない脚力で回避する。
ズドン!、ズドン!、ズドン!
と水の弾丸は時間をずらしながら六樹達に迫る、しかしエスタはあろうことか脚力にモノをいわせて壁や天井を跳び回って回避した。
ブチブチブチ、と六樹の脚から嫌な音が聞こえ激痛に六樹は顔を歪ませる。筋肉が壊れる音だ
エスタは人間のリミッターを無視して体を酷使したらしい。まずい、このまま筋肉が壊れ過ぎれば走れない、そう危惧した瞬間
「スキル[身体強化]を獲得しました」という脳内アナウンスが流れた。
まず無理だと吐き捨てていたスキルの習得条件を意図せず満たしたらしい、降ってわいた幸運だが、おかげでまだ戦える。
先ほどから洞窟にかなりのダメージが入っているが、崩れる様子はまだ無い、アンリの魔法のおかけだろう。だが悠長に構えてはいられない、じっくりと倉目との距離をつめながら挑発を続ける。
「愛し合ってるね!?その割には随分と気が多いじゃねーか!?」
「知らないのかい?この世界では重婚は普通なんだよ?それに深い絆で結ばれた僕たちにとっては些細なことさ」
そんな事を倉目は言う。六樹は詰め始める。
「絆だ?だったら答えてみろ!!そこのエルフ少女の両親の名は?その横にいる猫耳娘の将来の夢は?今お前の後ろにいるピンク髪の少女の故郷はどこだ!?答えろ!?」
「!?…………………それは……」
突然の質問に倉目は虚を突かれる。言葉が詰まった
「………………えっ?お前そんな事も知らないのか?」
六樹の気の抜けたような呆れ声が響いた。
「うぁぁぁぁーー!!打ち水!水撃砲!!」
叫びながら魔法を乱射しまくる倉目、六樹は必死で避けながらさらに続ける。
「結局お前は!!後ろの彼女達をトロフィーとしか見てなかった訳だ!だから何も知らない!知ろうとしてないからな!!」
「殺す!!お前を殺してやる!!」
倉目が吠える。そうだもっと怒れ、と六樹は心の中呟く。
六樹(エスタ!そろそろ来るぞ!!備えろ!)
エスタ(任せろ相棒!!)
倉目が後ろの少女達に命令する。
「みんな!!アイツを焼き殺す!!必殺技を使うぞ!!」
倉目がそう言うと、少女達は詠唱を始めた。そして倉目は六樹に向き直り吠える。
「次で終わりだ!!」
そう言った倉目は、先ほどまで持っていた水魔法の杖をアイテムボックスに収納した。杖を入れ替える為だ
今だ!と六樹は確信する。そして念じる
[能力阻害発動]封印:アイテムボックス
「なっ!?っ!?なぜ出せない!??」
アイテムボックスに入れていた強力な杖を差し押さえられ、倉目はパニックになる。
六樹(エスタ!決めろ!!)
エスタ(行くぜ相棒!!)
次の瞬間、六樹はアングリッチを構えて飛び出した。身体のリミッターを解除し、身体強化も乗せた高速移動で倉目に突っ込んだ!
「くっ!来るなぁぁ!!!豪炎!!」
破れかぶれになった倉目は両手から魔法を放つ、しかし杖から放たれたものではないせいか、先ほどより明らかに威力が低いという事がわかる。
エスタ(避けるか!?)
六樹(脚が保たない、そのまま突っ込め!!)
六樹の指示により最短距離を最速で業火の中に突っ込んだ
「うおおおおおおぉぉぉ!!」
二人の声がシンクロする。そして
ザシュッという音が洞窟内に響いた
「くはぁっ」
と、声にならない声を出し、斬撃を浴びた倉目が倒れた。
「悪いが、最後は俺の体質で押し切らせてもらった、この勝負、俺達の勝ちだ」
そう、六樹の勝利宣言が静かに響いた。
六樹の煽り文句を書いていて自分にもダメージが、許さんぞ六樹!




