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13話  魔術師と魔導師

今回は説明文が多いのでちゃんと理解してもらえるか心配です。

魔王軍が襲来してから2日ほど経った。


アルヒの町は魔法などを駆使してとんでもない早さで復興していく、もともと被害が軽微だった事を考慮しても、元の世界と比べて明らかに早いと言えるだろう。もうすでに町にある店は開いている所がほとんどだ。


「うーん…どれにするか、予算は足りるか?」


六樹は今、町の古本屋に来ていた。ここにはスキルを習得する方法が載った本がおいてあるからだ。本は封がされていて立ち読みは出来ないようになっていた。


「おっ、[身体強化]なんてのがあるじゃねーか」


シンプルに優秀そうなスキルを見つけて明るい声が出る。


「あっ、そのスキル私も持ってますよ!」


そう言ったのは、横にいたアンリだ。

武闘家の彼女なら確かに持っていても不思議ではない、六樹はアンリに質問する。


「このスキルの取得方法って分かる?分かるならこの本買わなくてもいいんだけど」


「あ、私の場合は修行していたら、いつのまにか条件を満たして取得したのでよく分かりません。」


そう上手くはいかないらしい。

普通に修行していても、偶然取得出来たりもする様だが、やり方が分かるに越したことはないので、この本を買う事にする。


その本を店主のもとに持って行き、会計をすませる。

買ったばかりだが、封を外してその場で読んでみる事にした。


「どれどれ…あっ、スキル習得には色々と方法があるのか、時間がかかる代わりに楽なやつと、早いけど厳しい方法に別れてるんだな」


楽な方法を読んでみる。どうやら筋トレや有酸素運動を長期間継続してやり続けるものが多いようだ


次に厳しい方を読んでみる。そこには実現不可能のようなものが大量に記載されていた。


「他も大概おかしいけど、己の身体能力のみで、壁や天井を跳び回るってなんだよ!?それが出来る奴は、もうスキルいらねーだろ!」


現実離れしたものがわんさかあった。どうやら地道に努力するしか無いらしい。


「しかし、こうスッと一瞬でスキルを取得出来ないものかなぁ」


などと大きな声で独り言を言う。転移された日に体験しているので、なおさらそう考える。すると


「兄ちゃん!そりぁー厳しいぜ、簡単にスキル付与出来る道具もあるにはあるが、そんな便利な物は王宮や大貴族様達が買い占めちまう!」


そう話しかけてきたのは本屋の店主だ、当然の事ながら便利道具はお金持ちが持っていってしまうらしい。

店主は続ける。


「当然うちにはそんな貴重な物はね……いや、一つあるな、あ〜でもあれはな〜」


「えっ?あるんだ、どんなやつ?」


店主に質問する。掘り出し物かもしれない。

だが、店主は歯切れの悪い態度だ。


「いやー、[能力阻害(ディスタブスキル)]って名前でな、相手のスキル発動を一つ封じ込める事が出来る効果なんだが」


「えっ?優秀そうだけど、何が駄目なんだ?」


六樹はこの世界に来て間もないが、スキルというものの恩恵は実感している。それを封じる事が出来るというのは戦闘もしくは嫌がらせにおいては有用だと言える筈だ。


「問題はその制約なんだよ。まず相手の発動を止めたいスキルを自分が持ってる事が大前提で、自分自身も同じスキルを封印する事で、やっと相手のスキル発動を阻止出来るんだよ」


「なんだそのクソスキルは!前提条件が限定的な上に

使用者にも反動があんのかよ!」


「てな訳で、値段は安いが全くもってオススメ出来ない。まぁ忘れてくれ」


そう店主は言いきる。確かにそんなスキルどう使うのだろう?よほど何かにメタを貼るような事態でも無いと使えるとは到底思えない、六樹は考える。


「う〜ん、………あっ!いいこと思いついた!」


「悪いこと思いついた、の間違いでしょう?」


そんなアンリの毒舌に晒される。どうやら買う本が決まって会計に来たらしい。


「店長!それ、買うよ!」


「えっ?本当か?説明はしたからな?まいどあり!安くしとくよ」


という訳でディスタブスキルを習得出来るアイテムを購入、すごく安かった。出てきたのはスクロールで使用回数は一度限りのようだ。


さっそく使ってみると


能力阻害(ディスタブスキル)を獲得しました」


というアナウンスのようなものが脳内に流れる。いつか経験した感覚に似ていた。


そんなわけで古本屋を後にする。


「そういえば、教会があなたを呼んでいましたよ?」


アンリかそう切り出してきた。


「えー、面倒事じゃないよね?」


「なにやら、先日子供達を助けて貰ったお礼がしたいそうです。」


「人の善意を無下にする訳にはいかない、すぐに向かおう!」


「リョウ、いま絶対お礼という言葉に反応したでしょ?現金な人ですね」


そう言ってアンリは着いてきた。


◇◇


教会に到着した。2日前まではある程度壊れていたはずなのに既に完璧に修繕されていた。

中に入ると前に助けた子供達と壮年の男性がいた、見た目から察するにこの教会の神官だろう。


「始めまして、あなたがムツキさんですね。私はこの教会の責任者であるプレテという者です。先日の一件は本当に感謝致します。私が諸用で外れていた時にあんな事に、いや、言い訳にしかなりませんね。」


プレテと名乗ったその壮年の神官は前置きを省き、すぐに本題に入った。


「ともかく、ささやかながら何かお礼をしたいと思いまして、さっ皆さん、ムツキさんに渡す物があるでしょう?」


そう子供達に呼びかけると、子供達は何やら一冊の本を持って近寄ってきた。


「お兄ちゃん、ありがとう。これ初心者向けの下級魔法の載った本だよ。これあげる」


「えっ?いいの?ありがとう。助かるよ!」


思いもよらない収穫だが、これは助かる。するとアンリがこう提案してきた


「本格的に魔法を覚え始めるのでしたら、まずはあなたが()()()に向いているのか()()()に向いているのか調べて貰いましょう」


「魔術師?魔導師?何それ?」


六樹は当然の疑問を口にする。するとプレテが答えた。


「魔術師は自身から湧き上がる魔力を使い、魔法を放つ者達であり、魔導師とは周囲の環境に存在する魔力を集め、それを消費する事で魔法を使う者を指します。」


「才能というのであれば、魔術師には高い魔力量が必要になり、魔導師であれば、魔力親和性が高ければ良い訳です。」


なるほど分からん。

Q: 魔力親和性とはなんですか?、六樹は聞いてみた


「魔力親和性とは、その人がどれだけ周囲の魔力を吸収出来るかの指標です。ちなみに低いと魔力に対して耐性があり、魔法などに撃たれ強いというメリットもあり、一長一短だったりします。」


なんとなく分かってきた。物理学で例えるなら、体から発散される熱を、エネルギーとして利用するのが魔術師で、周りから熱を奪って使うのが魔導師といった感じだろうか?しかしそうなると一つ疑問がある。


「ここまで聞いた話だと、魔導師の方が魔術師よりも優れてそうに聞こえますね、周りから魔力を集められるんですよね?無尽蔵に魔法を使えるんじゃないですか?」


しかし、それを否定したのはアンリだった。そういえば彼女は自身が魔導師だと言っていた筈だ。


「いえ、そう単純ではありませんよ。魔導師は周囲から魔力を集める性質上、集団で行動するのが難しいんです。リソースの食い合いになりますからね。それに同じ場所に留まって魔法を使い続けると、周囲の魔力が枯渇しますし、周辺環境に魔力が少ないと途端に役立たずになります。」


言われてみればその通りだ、六樹は総括してみる。


「どんな状況でも安定して活躍が見込めるのが魔術師、環境次第だけど、ハマれば強いのが魔導士ってこと?」


「その認識であってますよ」


とアンリに教えてもらう。そして早速検査を行う。


というわけで、魔力量を測る検査だ、どこかで見かけたことのあるような水晶が出てきた。そしてそこに手をかざし、発光の加減で判断する。


(割れろ!割れろ!お約束だろ!)


六樹の下らない妄想を他所に水晶は電球程度の輝きを放つ。


「ふむ、悪くは無いですね、それなりに高い。魔法だけをメインで使うとなると少し心許ないですが、サブとして使う分には十二分でしょう」


そうプレテにジャッジされ、次に魔力親和性のテストだ。

今度は勉強机にあるライトスタンドみたいなのが出てきた。そして、それは何やら妖しい光を発している。

どうやら魔力が出ているらしく、この下に手を入れてどれだけ魔力を透過するのかで判断するらしい。


「む?なんだこれは?!…魔力親和性が低い。と言うよりも、異常なまでに低すぎる!」


異常と言われるとなんだか心配になる。


「どういう事ですか?何かおかしいんですか?」


そうアンリが尋ねた。するとプレテは答えた。


「はい、ムツキさんの皮膚は全くと言っていいほど魔力を通しません。よって魔導師としての適性は皆無です。しかし、魔法や魔力そのものに対しては、非常に強力な耐性を持っています。やはりこれは…」


プレテは六樹を見つめ、真剣な面持ちで話始めた。


「ムツキさん、実は私はレカルカさんからあなたのこれまでの経緯を、大まかですが伺っています。」


意外な事実が判明した。


しかしアンリが意味もなく六樹のことを言いふらすとは思えない、この人に話したのは何か考えがあるのだろうと考えた。


「結論から言えば、あなたが世界を渡った時に落ちた謎の液体は、超高密度の魔力である可能性が高い」


「そして、あなたの皮膚は魔力を通さない、言わば鎧のような状態になっています。おそらくこれは、高密度の魔力から体を守るために皮膚が適応したものだと考えられます。」


と、プレテは六樹の体色が急激に変化した理由を考察し始めた。


「高密度の魔力に晒されると適応反応として、皮膚や毛が変色するという事例が稀にあります。言わば焼け焦げた様なものです。流石に全身というのは聞いたことが無いですが」


突然判明した、体色の変化の理由に戸惑う。まさか、そんな風に体質が変化していたなんて驚きだ。


そして、大事な事を質問する。


「えっと、とりあえず健康に害は無いんですか?」


「特に害のような症状は聞いたことが有りません。強いて言えば魔力を通さないその皮膚でしょう、皮膚程ではないですが他の部分も耐性が高いです。しかし逆に言えば、そのように何かしらの方法で適応出来なければ、あなたの命は無かったでしょう」


ゾッとする。確かにあの謎の液体もとい高密度の魔力の海に落ちた時、とてつもない苦痛だった。


それに、俺のすぐ後に転移したイノシシも、今思えばそのせいで致命傷だったのだろう。魔力で漬け込んだような肉とアンリがそう言っていたのも合点がいく


しかし健康に害が無さそうな所は安心する。考えてみれば六樹が剣を使うスタイルを貫くのであれば、魔法に耐性があるのは前衛としてかなり好都合だ。


「実はあなたにお教えしたい情報があります。先ほどの話とも関係のある話です。私どもからのもう一つの感謝の印のつもりです。」


そうプレテが話を切り出す。


「アルヒの町の近く、モノノフの丘には一つの古い墓があります。そしてそこには一本の刀が突き刺さっています。」


「その刀は強力ですが、難儀な奴でしてね。しかしムツキさん、あなたなら使えるかも」


「何故ですか?」


六樹がその理由を尋ねる。


「その刀の持ち主であり墓に入っているのは、今から千年以上前にこの世界に転移した、あなたと同じ日本人だからです」



補足説明、魔力の表し方について解説します。

これはE〜AそしてSの6段階評価になっており、主人公はステータスウィンドで魔力Bと評価されていますが、これはプレテが話していた通り、そこそこ高い部類です。一般人の場合、C〜D評価位が多く、Eは才能無しです。魔術だけで戦う魔術師はA位は持っています。飛び抜けて高い場合はS評価になります。

また、身体から魔力が生成される量も、魔力量に比例し、時間経過でパーセンテージで回復していくので、魔力の溜め込む量は多いけど魔力の生成は少ない、みたいな事は基本的には起こりません。ですので魔力の生成量は魔力量と同列に評価されます。

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