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1話  転げ落ちる日常

初めまして、異端児と申します。

悪辣勇者を読んでくれてありがとうございます。

割とシリアスな作品となっています。

初投稿なので分からない事だらけで稚拙や分かり辛い文章になっているかもしれませんが楽しんでもらえると幸いです。この作品の地名や固有名詞はなどは空想ですのであしからず。それでは悪辣勇者開始です。

いつもの教室、いつもの席の昼休み、一人の少年が日課のゲームに勤しんでいる。


ちなみに彼が持っているのはスマホの端末ではなくゲームをする為だけに存在する専用機種であり、当然学校側に無断で持ち込んでいる。


そんな他人に迷惑もかけず、かといって真面目でも無いような学生生活を謳歌する彼の名前は六樹亮(ムツキ・リョウ)十七歳である。


黒髪にワイルド系なやや悪人顔であり、基本的には一般人の範疇を出ない特徴だ、だがモブとして処理しようとするには難しい位には存在感があった。


周囲のクラスメイト達は雑談を楽しんでいる。

ゲーム中の六樹の耳にも自然と入ってきた。


「やっばい、風邪引いたかも」


「インフル流行ってるから気をつけなよ?」


「スペイン語の小テストどうだった?難かしすぎるだろあんなの、英語だけでも手一杯なのになんだよ第二外国語って!日本語でしゃべれ!」


「やっとこさ魔剣の新作全クリできた、いやー自由度高いのにバランス調整が絶妙なのほんと神!年一くらいで新作出して欲しいわ」


「なぁニュース観たか?先週末に岸越山で遭難した人、まだ見つかって無いらしいぜ」


岸越山で遭難という単語に六樹はピクリと反応する。


「あー、あれね…奥さんらしき妊婦さんが必死な顔でチラシ配りしてるの見たわ、あれは見てて辛くなるぜ」


「岸越山って昔から結構遭難事故多いよなぁ」


そんな会話を聞いて六樹はふと悲痛な叫びを思い出す。


「あなたの…あなたのせいで!!あの子は!!!」


(また…この記憶か……)


トラウマがフラッシュバックして気分が落ちていると、


そんな彼にふとフランクに声をかける者が現れる


「やぁ!亮!またゲームか?また変なバグとか探してるだろ?」


彼の名前は神宮寺蓮(ジングウジ・レン)


漫画に出てくる王子様のような見た目であり、金髪に整った顔立ちの好青年である。


これで性格も良いのだから当然モテる。

それも尋常じゃなく


そんな王子様とは中学時代からの付き合いであり、親友と呼べるような親しい間柄である。


そんな彼に六樹は言葉を返す


「バグじゃねー、仕様だ、仕様を確認してんだよ」


と自らの正当性を主張し反論する。あまり反論になっていない気もするが


「前に教えてもらったジャンプ3回した後にしゃがむと操作キャラが虚空に落ちていくのはどう考えてもバグだろ…」


「あれは……確かにバグだな」


「あっ!それはそうと生徒会の仕事手伝ってくれないか?」


「またかよ、やだよ!お前の仕事だろ?俺生徒会の部外者だし関係ねーじゃん」


と言って六樹は拒否の姿勢を示す。親友の頼みだがこればかりは仕方ない、シンプルに面倒臭い。


「頼む!この通りだ、作業じゃなくてイベントのアイデアが欲しいんだ、亮、お前得意だろそういうの?」


「前にアイデア出した時も後出しで却下されただろ?」


「なっ?一回だけだから!すぐにやめられるから!依存性なんて無いから!」


「なんでやばい薬みたいな誘い方なんだよ!ねーよ依存性なんざ!」


だが蓮は泣き落としでは足りないと交渉を持ちかける


「分かった分かった、今度釣りでも野草取りでも手伝ってやるから、感謝しろよ?」


「うーん、じゃあ今度、河川敷に生えてるからし菜の採集を手伝ってもらうか」


具体的な見返りを提示されこちらも折れる事にする。


「了解、てかその辺の草なんか取ってどうすんだよ?」


と蓮は素朴な問いかけをする。


「高菜漬けにする。」


六樹はそう簡潔に答える。すると蓮は少し呆れたような諦めたような声色で六樹にこう言った。


「亮、お前は料理が出来て、頭も性格も悪くはない、それに顔面偏差値も五十代後半から60位はあると思う。でも女子が寄りつかないのはそういうところが原因だと思うぞ」


友人から割と真剣にアドバイスを受ける。それに対して六樹は


「蓮……俺は性格悪い方だと思うぞ」


「そういう空気を読まないとこだよ!てかいつもどこでそんな謎のサバイバルスキルを身につけてんだよ?お前ん家は戦時中なのか?」


と素朴な疑問を口にする。


「ほら俺、山育ちだし、ポツンと一軒家みたいな場所に住んでるし」


「それだけでどうこうなる範疇じゃ無い気がする」


などと他愛もない雑談が続く、

気がつけば昼休みが終わりに近づき教室のクラスメイトが教室に揃っていた。


ふとクラスのイケてるグループから女子達がこちらに歩いてきて神宮寺に声をかける。


「神宮寺くん、今日みんなで放課後カラオケ行かない?」


まったく羨ましい限りである。蓮はこう答える


「おっ!いいね!カラオケ、みんなで行こうか!」


口ではそう言いながら少し気まずそうにこちらに視線を向ける、お前も来るか?と聞いているのだ。


対して、こちらは指で周囲にバレないように小さくバツ印を作る。


お前達の空気は合わないから断ると信号を送る。


ついて行って困らせてやるのも面白そうだとも思ったが、やっぱりやめておく。


どうもあの空気感は苦手だ、無理して合わせてもすごく疲れる。


そんなこんなで蓮が放課後の予定の打ち合わせを始めたので俺は授業の準備のために教室の窓際後方の角にある自分のロッカーに教科書を取りに向かう。


当然全科目置き勉で、なんなら鞄もロッカーに突っ込んでいる。


次の授業の教科書とノートを取り出したその時だった。




「……………………ん!?」



何かが起こりそうな予兆が六樹の背中を駆け巡る。


ガダンッガクガクガク!!!


という大地震のような縦揺れが一瞬教室を襲った。そしてその後も余震のような揺れが続く。



「キャアー!」「っなんだ!?」「地震か!?」


突然の揺れに一瞬でパニックになる教室


「えっ!何これ?」


一人の生徒が指差した先は窓だった。そして全員が窓の外を眺める。


「嘘だろ!?何が起こった!?」


窓の外は本来見えるはずの校庭や周囲の民家などが一切なく真っ暗だった、漆黒や暗黒と言った方が近いかもしれない。


それはまるで宇宙から星が消えたような感覚を覚える。蓮が六樹に声をかける。


「亮!何が起きてると思う!?」


なぜか俺に考えを聞いてくる蓮の方を見ると周囲の女子達が不安からか蓮の腕にしがみついていた。


「なんで俺に聞くんだよ、そんな事俺が知るわけ!……ふう……」


六樹は一度冷静になって考えた。

今一体何が起こっているのだろうか


「…………100パー勘だけど、多分教室ごとどこかに移動してるんだと思う」


全く根拠のない仮説を披露する。どことなく揺れ方がトラックの荷台に揺られているのに似た慣性を感じたからだ。


「移動中か…確かに言われてみれば……教室の外がどうなってるか分からない以上、下手に外に出たり窓を開けたりするのはやめた方が良さそうだな」


蓮が六樹の意見を肯定し、クラスメイト達に迂闊な行動を諌めるように声をかける。


その効果もあったか他の生徒たちも一旦様子見に達し始め、少しだけ落ち着きを取り戻し始めた。


そんな時にどこからともなく声が聞こえてきた


「cky&@¥ubdtgbydbju¥@:^*£~<」


声質は女性のようだった、しかし合成音声によるアナウンスのような雰囲気を感じる。


当然の事ながら何を言ってるのか全く理解出来ず全員がその場に立ち尽くす。

しかし、どこかの言語であるような響きだった。


次の瞬間、突然全員の身体が一瞬白い光に包まれた。


六樹はそれが何かは分からないが[何か]を得たように感じた。


初めて味わった違和感に戸惑っていると次のアナウンスが響いた


「次に、スキル[アイテムボックス]を付与します。」


今回はちゃんと意味が分かった。そして、先ほどと同様に一瞬発光し、また同じ感覚に見舞われる。


そして更にこう続ける


「スキル[鑑定]並びにスキル[ステータスウィンド]を付与します」


そして今回は2回続いた。


「……1回目のやつは翻訳スキルか何かか?」


六樹はぼそっと呟く、急にアナウンスが理解出来るようになった事を考えれば、そのあたりが妥当だと考えたからだ


そしてアナウンスはこう続ける


「以上で共通スキルの付与を終了します。それでは後ほど異世界の勇者様各位には、王宮にて各々に適した職業ジョブ能力(スキル)、魔法、武器などを贈与させて頂きます」


「勇者様各位は今しばらくお待ち下s………」


アナウンスは突然途切れたそして突然雰囲気が変わる。


「緊急警報!!緊急警報!!魔王軍による魔法攻撃を探知、各自警戒を!!」


物々しい雰囲気にその場が凍りついた。しかし、すぐに動いたのは六樹だった


「攻撃!?どこからだ!」


教室の角のロッカー前にいた六樹は近くの窓から外を眺め、その魔法攻撃とやらがどの方角からどこあたりに来るのかを確認しようとする。


しかしながら、一見すると正解のようなその対応は完全に裏目に出てしまった。


「亮!!下だ!!避けろ!!!」


蓮が俺に危険を告げる。慌てて自分の足元を見ると既に魔法攻撃と思われる閃光が漏れ出ていた。そして次の瞬間、教室の床を貫いた。


シャン!!という音が響く、一瞬だが光線のようなものが見えた。


「キャァ!!」「ウワァー!」


周囲に悲鳴が巻き起こる。

蓮の周囲の女子達はより強固に腕にしがみついた。


「っ!くっ!危なっ!」


六樹は蓮の警告もあり、間一髪で後ろに飛び、閃光を避ける事に成功する。勢い余って尻餅を着いた。



しかし


ガクッと六樹の乗っている床が傾いた。ヤバい!と思った時には手遅れであり、切れ込みが入った床は既に落下を始めている。


すぐに移動しようとするも、先ほどの回避で尻餅をついていた為に、間に合いそうにない。


しかし、諦めるわけにもいかない、精一杯崩れる床から避難しようとする。


「亮!俺の腕に掴まれ!!」


そう言って蓮が腕を伸ばす。男子生徒二人が腕を伸ばせばギリギリ掴めなくもない距離だ、一筋の希望が見えた。


しかし、その腕は届く事はなかった。


「あっ」


蓮がそう呟く、彼は大事なことを見落としていたのだ、彼のもう片方の腕には以前として、恐怖に慄く女子がしがみついていることを


ほんの少し、無慈悲にも二人の腕は届かず六樹は教室の残骸と共に暗闇に落ちていく、もうどうすることも出来ない。


「一名ロスト!」


無慈悲なアナウンスが流れる


「リョォォーーーー!!」


蓮の悲痛な叫びが聞こえる。六樹は暗闇に落ちていく、次の瞬間、ドボンッという音とともに六樹の体は高密度の液体が溜まった場所に落ちた。


そこはまるで漆黒の海のようだった。


「くはっ!、なんなんだこれ?!アア!?痛いっ!!!」


息が出来ない、何も見えない、ただただとてつもない苦痛が六樹を襲う、まるでとてつもない濃度の塩水に浸さているような、全身を細かい針で刺されているような苦痛、全身からヒリヒリジワジワと何かに入られているような痛みが全身を駆け巡る。


痛い痛い痛いイタイイタイイタイツライツライツライツライクルシイクルシイクルシイクルシイクルシイ


「カッ、クフッ、ン」


言葉にならない声を最後に六樹は意識を手放してしまった。




一方その頃、蓮はというと


「……亮が死んだ…亮が死んだ…、俺が周りに女子を侍らせてたばっかりに親友を死なせてしまった、俺のせいだ、俺のせいだ、俺のせいだ……」


とぶつぶつと口にしながら、無力感と後悔に打ちひしがれていた。


次の瞬間、パッと周囲が教室から豪華絢爛な室内に切り替わる。


王宮に到着したのだ。驚くクラスメイト達の反応をよそ目に蓮はあたりを見回し状況を確認する。


周囲には兵士や騎士と思わしき武装した人物や、貴族と思われる豪華な装いの人々が囲んでいた。


玉座と思われる豪奢な椅子に国王と思われる老人が座っている。蓮を含めたクラスの全員がその人物に注目すると、国王が重低音かつよく通る声で話し始めた。


「異世界の諸君、我が名はグラン・バシレウス、このガドル王国の国王である。まずはこちらの勝手な都合で強制的に召喚してしまった事を深く謝罪する。」


意外にも謝罪の言葉から入った事に周囲は少し驚く、しかし、国王の謝罪はまだ続いた。


なんと玉座から降り、額を床に擦り付けたのだ、土下座である。取り巻きの人間がやめさせようとするが国王は土下座の姿勢を崩さない。


「これが君たちの文化において最大級の謝罪であると聞いている。この蛮行、許してくれとは言わない!しかし、我々にはどうしても君たちに頼みたい事がある!」


事情は分からないが、王と呼ばれる人物が誠心誠意謝罪している。すると、蓮はおもむろに近づいた。


「頭を上げてください国王陛下、お話をお伺いしましょう」



(今の俺たちには選択権が無い、それに全く情報もない。幸いにもトップはまだましな倫理観を持っているのなら、とりあえず今は話を聞く事が先決だ。)


とそんなふうに考えたからだ


すると国王は本題に入る


「今から君たちに特別な力を与える。その力を使って迫り来る魔王軍を退けて欲しい。それが私たちの願いだ。」


なるほど確かに土下座して懇願するわけだ、と蓮は心の中でそう思った。


キャラ紹介

名前 六樹 亮

年齢 17歳

身長 174cm

容姿 顔は悪く無い、ワイルド系の少し悪人顔、やや筋     肉質、黒髪短髪

備考 普段周りに合わせない性格と奇行のせいで目立たないが実は結構高スペック、ただし、隣に完璧超人の蓮がいるので霞む。日常生活においてあまり役に立たない知識や技能などを溜め込むところがあり、妙な知識がある。今後彼がどう悪辣な事をするのかは乞うご期待。


名前 神宮寺 蓮

年齢 17歳

身長 180

容姿 誰がどう見てもイケメン、王子様系の甘い顔、顎     位の位置まで伸びた金髪、細マッチョ

備考 ザ・主人公といった性格、本来の主人公が捻くれ者なので割と対極ではあるがお互いに尊敬しあう良い友人関係を築いている。ルックス、性格が良く、勉強もスポーツも器用にこなすのですごくモテる。書いていて結構いい奴で愛着が湧いてきた。名前はイケメンっぽいやつを適当に考えたなんて口が裂けても言えない。

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