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8話 好きな気持ちと現実

サウナとテキーラで泥酔した次の日の朝、


彼とお寿司を食べて


初めて一線を越えた。



その時、彼が言ってくれた言葉を今でも覚えている。


「昨日、好きな人が真横にいて、しかも同じベッドで寝てるなんて、理性を保つのが本当に大変だった。でも、酔った状態でそういうことはしたくなかった。だから、今日こうしてできて本当に嬉しい。けど、俺がいないところで、また昨日みたいに酔ったりしないか心配だわ。笑」


言いながら彼は、私の手をそっと握り締めた。その手は温かく、どこか安心感を与えてくれるものだった。


素直に嬉しかった。


襲われても仕方がない状況を作ってしまったのは私なのに、彼が必死に理性を保ってくれたことを知って、胸がじんわりと温かくなった。


口移しで飲み物をくれて、キスと同じようなこともしていたけど、その時はまだ酔いが回っていて、それを言う余裕すらなかった。


「ありがとう。」

心の中でそうつぶやきながら、彼の顔を見つめた。




留学当初、「好きな人ができたら付き合おう」そう心に決めていた。





でも、いざその状況になると、いろんな思いが頭を巡った。

彼とはなんだかんだすでに2か月以上連絡を取ってデートも何回も行っていた。


付き合う前に体を許したのは彼が初めてだった。


「付き合う」というのは、私にとって真剣で大きな決断だ。

それは、「付き合って別れたら縁を切る」という覚悟が伴うものだったからだ。


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彼と一線を超えるより前のデートの時、彼がこう言っていた。


「俺、国に帰らなきゃいけないんだ。新しい事業を始めることになってて。」


その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚があった。

寂しさ、納得、羨望、複雑な感情が入り混じり、整理がつかなかった。


でも、何かに向かって突き進む彼は、やっぱりかっこよかった。


私も日本に帰らなければならないことは分かっていた。



そしたら、なぜ彼はアプローチしたのだろう.................


その疑問が頭に浮かんだのは、その日の帰り道だった。


------------------------------------------------------------------------------

彼と一線を超えるより前のデートの時、彼がこう言っていた。

「最初はなんとなくいいな、くらいで、そこまで深く考えてなかった。正直、遊びではなかったけど、軽い気持ちだった。でも、君と一緒にいるうちにどんどん気持ちが大きくなっていって……本気で好きになってた。こんなに好きになると思わなかったから、自分でもどうしていいかわからなくて。」


言いながら、彼はどこか申し訳なさそうに目をそらした。

その仕草がなんだか幼くて、だけど真剣で、愛おしく思えた。


「最初は軽い気持ちだった」なんて、普通言う?笑

そう思いながらも、私は彼のそういう馬鹿正直なところを好きになったんだよな。と改めて感じた。


彼と一緒に彼の母国に行って住む未来は、まだ想像できなかった。

自分勝手かもしれないけど、私は私で、やりたいことがたくさんある。


彼にも、自分の夢や事業を諦めて日本に来るような選択をしてほしくなかった。


だからこそ、別れが見えている未来に向かって進むことが、怖かった。





付き合っても、別れがあまりにも見えすぎていた..........




彼との未来を思い描けなかった..........





彼は何度も私をデートに誘ってくれた。

そして私も、彼と一緒にいる時間が楽しくて、誘いを断る理由なんてなかった。


ただ、その時の感情に正直に動いていただけだった。



後先なんて考えずに……。


彼と一緒に過ごせば過ごすほど、私は彼のことをどんどん好きになっていった。


でも、付き合ったら「別れ」が待っている。


それが最初から分かっている状態だった。




それなら、付き合わずに両想いのままでいれば、悲しい別れをしなくて済むんじゃないか。




そう思った私は、その気持ちを彼に伝えた。




「付き合ったら、いつか別れるよね。それだったら付き合わない方がいいんじゃないかな」


そう告げると、彼は少し驚いたように目を見開いた。

その後、何かを考え込むように視線を落とし、長い沈黙が流れた。

やがて彼は静かに目を閉じ、大きく息を吐いた。


「分かった。」



その声は、驚くほど落ち着いていた。


けれど、その落ち着きの裏に隠された感情が、私には痛いほど伝わってきた。



彼は微笑みを浮かべながら私を見た。


でも、その微笑みはどこか寂しげで、優しさに満ちている分だけ切なかった。




「君の考えを尊重するよ。」




そう言って、彼はそっと手を伸ばして私の髪を撫でた。


その手の温かさが、胸にしみるようだった。




そして、そっとキスをした。






こうして、私たちは付き合わないことを決めた。

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