第5話 酔いと一緒に溶けていく夜
彼とはよく連絡を取っていた。何気ない話から、大事なことまで。
彼はいつもストレートに気持ちを伝えてくれる人だった。それが嬉しくて、少し照れくさくて、つい笑顔になってしまう。
本当は、当時どんなやり取りをしていたのか見返したいけど、全部消してしまったから、もう見ることはできない。それだけ、この話が「過去の話」だってこと。そう思うと、ちょっと切なくなるね。笑
5回目の彼とのデート。今回は彼の友達と私たちの共通の友達も一緒だった。
その日の昼、彼から電話が来た。
「今みんなでプールにいるんだけど、もしよかったら来ない?会いたいし」
「プール入りたい!もちろん行く!」
「着いたら教えて。迎えに行くから!」
ワクワクしながら彼の住むエリアに着いて、「着いたよ」と連絡すると、少しして彼が迎えに来てくれた。
濡れた髪が陽に照らされていて、まるでドラマのワンシーンみたいだった。
彼は私を見るなりニコッと笑って、歩み寄るとぎゅっと抱きしめてきた。
「I missed you.」
低い声でそう囁かれて、心臓がドクンと跳ねるのが分かった。
「I missed you too.」
震えそうな声を何とか整えながら答えると、彼はさらに言った。
「Thank you for coming.」
「こちらこそ、ありがとう。」
至近距離の彼の笑顔に、ドキドキが止まらなかった。
~プールでのドキドキ~
プールにはジャグジーもあって、彼の友達4人はジャグジーでくつろいでいた。
私は、彼とクラスメイトと一緒にプールに入ることに。
そこで、初めて彼の体をちゃんと見た。
水に濡れた肌に浮かび上がる腹筋。その筋肉質な体つきが眩しくて、思わず視線をそらしたくなるけど、気づけば見とれていた。
「見すぎちゃダメだよね…でも、どうしても目が行っちゃう…」
そんな自分に少し焦りながら、彼とクラスメイトがじゃれ合う様子を眺めた。
水を掛け合ったりふざけ合ったり、まるで子どものような無邪気な姿。その姿が愛おしく感じられて、自然と笑顔が溢れた。
ふと、彼が私の方にやってきて、小声で話しかけてきた。
「仰向けになって浮かべる?」
「うん、浮けるよ!」
浮かんでみせると、彼は少し驚いた顔をして言った。
「すごいな…俺、仰向けで浮けないんだよね。ちょっと支えてくれない?」
「えっ?」思わず笑いながら、彼の背中に手を添えた。
水の中で触れる彼の体温がじんわり伝わってきて、胸がドキドキした。
「これって、本当に浮けないの?それとも…?」
心の中で問いながら、ただ支える手に意識を集中させた。
しばらくすると、彼は私の手を取って泳ぎ始めた。
水の中で彼に引っ張られる感覚は、不思議と心地よかった。まるで、世界に二人だけ取り残されたような気分になる。
ふと、みんなから少し離れたところで彼が立ち止まり、私を真っ直ぐに見つめた。
「最初は、なんとなくいいなって思ってただけだった。でも…君のことを知れば知るほど、どんどん惹かれていった。」
突然の真剣な告白に、胸が高鳴った。
「これ…俺がいつもつけてるブレスレットなんだけど、君につけてほしい。」
差し出されたのは、見覚えのある黒いブレスレット。彼がいつもデートの時に身につけていたものだ。
「え…本当に?」
彼が頷くと、嬉しさで言葉にならなかった。代わりに、「ありがとう…大事にするね。」とだけ絞り出した。
彼は照れたように笑いながら「よろしくね」と一言。その笑顔に、また胸が締め付けられる思いだった。
~サウナでのハプニング~
その後はジャグジーに戻り、みんなで涼みながらテキーラを楽しんだ。
私は普段あまりお酒を飲まないけど、あの時は気分が良くて、つい3ショットも飲んでしまった。
そして、待ちに待ったサウナへ。久しぶりのサウナに心が弾んで、すっかり酔いが回ることなんて考えていなかった。
サウナから出た瞬間、ふわっと軽くなるはずの体が、逆に地面に吸い寄せられるような感覚に襲われた。
「あれ…?」
視界が少し揺れて、足元がおぼつかない。それでも、さっきまでの楽しさが残っていて、思わず笑いが止まらない。
「大丈夫?」彼が駆け寄ってきて、腕を支えてくれる。その手の温もりが妙に心地よくて、つい寄りかかってしまった。
「ごめん、なんかフラフラする…」
彼も友達も心配そうに見守る中、なんとか服に着替えて合流しようとしたけど、一歩踏み出すたびにふらついてしまう。自分で自分がおかしくて、つい笑ってしまうと、彼は少し困ったような笑顔を見せた。
「この後友達と予定があるから行かなきゃ!」と言った。みんなに全力止められた。笑
「今日は無理しないで、少し休もう。」
彼の声が優しくて、逆らう気持ちが消えてしまう。そのまま彼の部屋に運ばれるようにして横になった。
~夜中の優しさ~
夜中2時ごろ、目が覚めた。隣には彼が座っていて、私を心配そうに見ていた。
「OMG, so sorry. I got really drunk…」
「No worries. Drink this, it’s a sports drink.」
差し出されたドリンクを一気に飲むと、少しだけ体が軽くなった気がした。
「You feel better?」
「Much better, but still very drunk.」
「Don’t worry. I’ll take care of you tonight.」
その言葉に安心して目を閉じようとした瞬間、彼がそっと手を繋いできた。
指先に感じる温かさと、微かに伝わる彼の鼓動。
「ねぇ、君は今、何を考えてる?」
言葉にしようとしたそのとき、彼がさらに私に近づいてきて――