第3話 元カレとの出逢い
留学先では、友達が集まって遊びに行くとき、自然に他の友達を連れてくることがよくあった。
ある日、仲の良いクラスメイトが友達を連れてきた。
それが今では「元カレ」と呼ぶ人だ。
最初は特に意識していなかった。だが、帰り道で彼がふと「連絡先を交換しよう」と言ってきた。「何かあったら、いつでも連絡して」と言われ、軽い気持ちで交換した。
数日後、引っ越し準備で一人で荷物をまとめていたが、想像以上に荷物が多く、運ぶのが大変そうだと気づいた。「どうしよう…」と困った時、ふと彼のことを思い出した。「ダメ元で連絡してみよう」と思い、思い切ってメッセージを送ってみた。
「いきなりごめん!引っ越しするんだけど、荷物が多くて一人だと運べなくて…今から手伝ってもらえたりするかな?」
メッセージを送ると、彼はすぐに来てくれた。荷物を運ぶのを手伝ってくれて、最後に「今度もしよかったら、一緒にどこかに出かけよう」と誘われた。私は「うん」と答え、彼が「何が食べたい?」と聞いてくるので「レバノン料理を食べてみたい」と伝えると、「いいね、食べたことないから行ってみたい!」と嬉しそうに返してくれた。
その夜、私は改めて感謝のメッセージを送った。
「今日は突然なのに来てくれてありがとう!」
彼も「役に立ててよかった。次会えるの楽しみにしてる」と返してくれた。
~お出かけ前日~
時間や場所の確認をしたら、彼が「家まで迎えに行くよ」と提案してくれた。
彼の家からお店までは徒歩で5分ほど。しかし、私のところまでは25分もかかる上に、方向も真逆だ。こんなふうに「お姫様扱い」してくれる人に会ったのは初めてで、少し驚いた。
「えっ、悪いからお店で待ち合わせでいいよ。」と言ったが、「行きたいから行くんだよ、大丈夫!」と優しく言ってくれたので、素直に甘えることにした。
引っ越しのときも、予想以上に時間がかかったのに嫌な顔ひとつせず、むしろ「連絡くれてありがとう」と言ってくれた。そして迎えに来てくれることが、思いのほか嬉しく感じた。この人をもっと知りたいかもしれない…そんな気持ちが少しずつ芽生えていた。
~お出かけ当日~
彼は本当に迎えに来てくれて、私たちは一緒にレストランへ向かった。食事をしながら、色々な話をした。
「付き合ってる人は?」と彼が尋ねる。 「しばらくいないよ。そっちは?」と返すと、 「最近、5年付き合ってた人と別れたばかり」と彼が答えた。 「5年も?どうして別れたの?」と驚いて聞くと、 「何度か喧嘩して、そのたびに別れ話が出て…疲れちゃったんだ。ちょうど新しい出会いもあってね」と話してくれた。
5年も同じ人と付き合ったことのない私には、その感覚が正直よく分からない。
きっと、お互いの良いところも悪いところもたくさん見て、受け入れてきたんだろう。それを想像するのは、少し難しかった。
「遊びで近づいてきたのかも」と一瞬よぎったけれど、彼と話している時間は楽しく、彼の誠実さや優しさが伝わってくる。私には、自分の世界観を持ち、しっかりとした考えを持っている人が魅力的に映る。だからもっと知りたいと思った。
「本気」か「遊び」かを気にするのは、今はやめよう。
もし体の関係を求められたら、それで切ればいい。
今はただ、彼をもっと知りたいと思っている自分を大事にしたい。
それでいい、そう思った。