12話 彼と最後の日 ~自分の心の声~
ある日、私はいつも通り仕事が終わると彼の家に向かった。
彼はいつも私をドアのところで迎え、ぎゅっと抱きしめてくれる。
その日も変わらず、彼の腕の中に包まれた瞬間、幸せを感じていた。
一緒にサラミのピザと目玉焼きを食べた笑
いつもは携帯を置いている彼だが、その日は通知を確認していた。
視線が一瞬彼の顔に止まる。
「気にしすぎか…」と思い直して、私はピザを食べた。
その後、お風呂を済ませてリビングに戻り、彼と写真を見たり、たわいない話をしたりする時間が続いた。
その空間は私にとって、いつも通りの幸せな時間だった。
---------------------------------------------------------------
その日の夜、いつもとは違う小さな違和感が胸をよぎった瞬間があった。
彼が「ちょっとタバコ吸ってくる」と言った時だ。
「あれ、今までこんなことあったっけ?」
一瞬気にかかったが、「いいよ」と笑顔で返した。
私は残りのピザをつまみながら、リビングのテーブルの上にあった彼との写真に目をやった。
そこに映る私たちは、笑顔で腕を組んでいた。あの日の楽しさが鮮やかに蘇る。それが一層、その場の違和感を際立たせた。
数分後、彼が帰ってきた。
ドアを開けた瞬間、いつもの彼がどこか違って見えた。
普段は明るい瞳が、今はどこか曇っている。
私が「何かあったの?」と聞くと、彼は少しだけ眉を寄せた。声を絞り出すように、「5年間付き合ってた元カノいるって言ってたじゃん?」と言った。
彼の言葉は、静かな部屋に響く。
私は表情を崩さずに「うん」と頷く。
けれど、胸の奥では不安がじわりと広がっていく感覚がした。
その次の言葉を待つ間、時間が止まったかのように感じた。
「彼女からよりを戻したいと連絡が昨日来た」
その言葉が静寂を打ち破る。
「.................なるほど。で?あなたは戻したいの?」
私はなるべく冷静を装って聞いたつもりだったけれど、言葉の端が少し震えているのが自分でも分かった。
彼は長い沈黙の後、「分からない…」と小さく答えた。
その声は、どこか頼りなくて、迷子のようだった。
分からない。
そりゃそうよな。
分からない?
なんだしそれ。
その一言に、私の中でぐるぐると感情が渦巻いた。納得したい自分と、無性に怒りたい自分、そして何も感じたくない自分が入り乱れる。
彼が目の前にいるのに、彼が遠くに感じた。この状況をどう受け止めればいいのか分からず、私の頭の中では様々な考えが駆け巡った。
その時、どんどん色んな考えや想いが出てきていた。
たくさんありすぎて、忘れている感情もいくつかあると思う。
でもその中でも鮮明に覚えている感情が2つある。
・素直に「元カノさんのところに行ってあげてほしい。」だった。
私たちはお互いそれぞれの目標がそれぞれの母国である。
だから、未来が見えないことが分かっていたから最初は「付き合わない」と私から言っていた。
別れて縁を切るのが分かっているのが辛かったから。
でもお互い惹かれ合い、一緒に過ごすようになり彼から伝えてくれて付き合うことになった。
今の自分の
「好き。」
それだけの感情で将来がちゃんと見える元カノさんとの復縁の機会を奪うのはあまりにも無責任だと感じた。
5年間も付き合ってたのだからお互いの良いところ悪いところを知っている。
元カノさんから復縁のお願いなんてこれを逃したらもうないかもしれない。
分からないと迷っているのなら、自分が背中を押さないと。
そう思った。
もう一つは
・「誰かと迷っている人はシンプル興味がない。」だった
彼の色んなところが好きだった。
でもその中でも「一途にまっすぐ」だったところもとても好きだった。
迷っている人とはもういたくない。と思った。
それに5年間も付き合ってた元カノさんにはかなわない...とも思った。
そして私は彼に言った。
「伝えてくれてありがとう。好きになった人が二股する人じゃなくて良かった。
元カノさんは母国にいるわけだから結婚もより現実的だし、この復縁の機会を逃したら、もうないかもしれないよ。私たちは、もともと最初は「付き合わない」って言ってたじゃん。将来が見えないから。だから、元カノさんのところに行ってあげて」
彼は黙っていた。
沈黙が続く。
私は部屋を出てベランダに出た。
外は深夜で、街はしんと静まり返っていた。冷たい風が肌を刺すように感じた。
仕方ない。
少し別れるのが早くなっただけ。
もともとは付き合う予定じゃなかったし。
無責任に彼を引き留めることはできない。
それと同時に怒りの感情も同時に込み上げてきた。
ひと時の迷いだったのかな。
実は連絡を元カノさんと取っていたのかな。
信頼した自分が悪いのかな。
勝手に信じて勝手に裏切られた。
信じるって相手に勝手に完全任せてしまうことだから、やっぱりよくないんだ。
自分が悪い。
涙が勝手にゆっくり流れ出てた。
しばらくして無になった。
も全部どーでもいいやーーー。
どーでもいい。。。
あーーーー、どーーでもいいやーーーーー。
夜景をぼんやりと眺めながら、自分の中で何かが壊れていくのを感じた。それと同時に、妙に冷静な自分がいて、「これで良かったんだ」と繰り返している。
しばらくすると、彼が私の隣に来た。
無言で座り、そっと頭を撫でる。何も言わず、ただそこにいるだけ。
なんだし。撫でるなし。
時間だけが流れる。
「遊びだったの?」気がつくと、その言葉が口をついて出ていた。
「それは本当に違う。信じてほしい。好きになりすぎて正直怖い。好きになればなるほど、一緒に過ごせばすごくほど、お別れの日が近づいていって。正直ここまで好きになるとは思ってなかったからとても戸惑っている。」
彼の声は真剣で、どこか悲しげだった。
でも、私はその言葉を真正面から受け止める気力がなかった。
「元カノさんとは戻るの?」
「分からない。昨日きたから正直気持ちの整理がついてないんだ。彼女ももちろん大切な人には変わりないんだ」
........................
また沈黙が続いた。
「ほら、そろそろ明け方だよ。外寒いし中に入ろう。」
「私自分の家に帰るわ。」
「今帰らなくていいよ。朝に帰りな。」
「大丈夫。今から帰るわ。」
「ダメだよ。俺が許さない。こんな夜中に君に何かあったら大変だ。」
「大丈夫だから!」
「ダメだよ!大切な人なのにそんな危ないことさせられない。」と彼は怒った。
彼の怒った姿を初めて見た。
大切な人?
なにが?
なんで怒ってるの?関係なくない?
そう思った。そして、
"We are over" 「私たちは終わり」
と彼に言った。
彼の目を見る自分の目が今まで彼に向ける眼差しとは全く違うことを自分でも感じた。
冷めきっていた。
目すら見たくらいと思うくらい拒絶反応が出ていた。
「とりあえず中に入ろう。今は冷静じゃないと思う。明日仕事から帰ったらまたしっかり話そう。」
話す?何を?もう話すことはないよ?
私の心はもう決まっていた。
彼が迷っているのなら、私はその迷いを断ち切る役目を果たすだけだ。
私たちはもうおしまい。
彼の決断を自分が理由で間違えてほしくない。
それに、もう今の私は前のようにあなたを見つめることができない。
そう思った。
仕方なくベッドに入り寝ることにした。
彼が言った。
「君もこんな風に感情を出すんだね。新しい一面が見れて嬉しかった。いつも笑ってるから。」
何言ってるんや。正気か。
私は反対側を向いて寝た。
そしたら彼がそっとぎゅーと後ろから抱きしめてきた。
温かくて安心する感覚が、余計に胸を締めつけた。
やっぱり落ち着く。
でも、これで最後。
"We are not over. Let`s talk tomorrow. Good night."
「私たちは終わってない。明日また話そう。おやすみ」
そう彼は言った。
あんたの立場分かってるんか。
自分がどんな思いで伝えたか分かってるんか。
何言ってるん。
そう思った。
-----------------------------------------------------------------
目が覚めると、彼は出勤の準備をしていた。
いつも通りの姿だったけれど、何かが違って見えた。
これが最後か。
まだ眠くて半分寝ていた。
そしたら、彼はそっと私の顔をに手を添えてキスをして仕事へ行った。
いつも寝てる時キスしてくれていたのかな
そう思った。
しばらくして、目を開けて
私は静かに荷物をまとめて彼の家を後にした。




