月夜のセレナーデ
卒業式が終わる。そして、舞踏会が始まった。王子が用意したドレスを着て、王子と踊る。ツェペシュとは違ってけっこう乱暴な踊り方だった。踊り終えるとイリスは飲み物を、持って来ると言って少し離れた。ぼーと、バルコニーで月を見ていると1人の男性に声を掛けられる。
「俺と踊ってくださいませんか?」
「え?」
仮面を付けていたが綺麗な鼻筋の通った顔立ち、どこかで……。
そう思っていると手を引かれる。手を引かれるままに少し踊ってみた。ダンスが上手い。
このダンスの上手さは…、まさか?!
「あなた、ツェペシュなの?」
「なんのことだか?それより1人なのだな?」
「王子は飲み物を取ってきてくれると言って……」
「くくっそうか、幸せになったんだな。」
そう笑う男。踊り終わると歓声が響いた。この踊りの上手さ、そしてあの声……やっぱり。
「ツェペシュなのよね?」
そう言った瞬間人混みに消えた。必死で追いかけるがもう居なかった。かわりにイリスが現れる。
「マリア、俺以外と踊るなよ!」
「ごめんなさい。」
「まあ、いいけど。はい。飲み物。」
「ありがとうございます。」
また、彼に想いを告げられなかった。もう会えないかもしれない。そう思うと涙が零れた。
「マリア?さっきのやつに何かされたのか?」
「いいえ、目にゴミが入っただけですわ。」
誤魔化す。それからどこを探してもツェペシュはどこにもいなかった。
あれは幻だったのだろうか?いや、確かに居た!踊った!なのに……何故なにも言わずに去って行くのだろう?私が嫌いだから?
そうして夜はふけていった。