かなでの野望
学園生活になれてきた1週間後、王子に呼び出される。
「マリア、今すぐにでもお前と結婚したい……」
王子イリスは次期王であるが故に学園に入学してからというもの、女性から迫られることが多くて困っているらしい。
「まあ、贅沢な悩みですこと…」
「そんな冷たい事言わないで俺と、結婚しよう!マリア!次の週末にでも!」
「そんな急に結婚なんて…」
「大丈夫だ!いつでもできるように準備は日頃してある!」
こんな時だけ用意周到で困る。
「ですから、結婚は学園を卒業してから……」
……何言ってるんだろ。本当はツェペシュと結婚したいのに……、会いにすら行けないなんて…。
「はぁ……」
ため息ばかりが増えてゆく。
「マリア!確かにそうだな。結婚は卒業してからがいい。そう思っているんだが……」
「?」
王子が照れくさそうにマリアから目をそらす。
「……お前が他の男に取られないか心配でならないんだ。」
ツェペシュに取られればいいのに……。
「マリア、お前は気づいていないかもしれないが、お前はここ数年でさらに美しくなった。そんなお前を見れば誰もが求婚するに違いない!」
いや、誰も助けてくれませんでしたけど?お前ですら助けてくれなかったでしょうが!なんて文句を言いたくなる。
「マリア……」
「少しお花をつみに行ってまいりますわ。」
「……ああ。」
マリアはトイレを済ませると何やら外が騒がしかった。
何かしら?そう思った時だった。
「マリアァァアっ!!」
「?!」
背後から襲ってくるかなでに、気づかなかった。
「動くんじゃないわよ?動いたらあんたをぶっ殺すわ!」
「っ!」
「まあ、動かなくても殺すけどね!!」
それじゃ、逃げるすべはない。また、転生できないだろうか?困っているとかなではこう叫んだ。
「あのバカ王子を呼んできなっ!あいつの前でこの女ズダボロにしてやんよ!」
「どうしてこんな事するの!?」
「どうして?1回目の転生の時、王子はあんたを殺すためにヴァンパイア狩りをした!」
「知ってるわよ!それで殺されたのですもの!」
「ええ!そこまでは良かったわ!なのにあのヘタレ!あんたの亡骸を見て泣いてやがったのよ!そして私にこう言ったわ!”俺は間違っていた。マリアを信じてやれなかった!お前のせいだ!かなで!!”ってね!」
そんな自己中心的なぁー。もー、ダメだあの王子。
「”例えマリアがお前を虐めていても俺に必要だったのはマリアの方だったんだ!失ってようやく目が覚めた!この女を処刑しろ!”」
あの王子!!??何してんの?!
「私は王子を誑かした女として火刑に処されたわ!どれだけ苦しかったか!あんたにわかる?!」
「……わかるわよ。だって私も何度も死んだもの。苦しかったし、痛かったわ。」
「……ふんっ!次に現代で王子を手篭めにしたと思ったらまたよ!またあのクソ王子!”調べたらいじめなんてなかった!殺そうとなんてしていなかったんだ!お前のせいだ!”そう言って私を屋上から突き落としたのよ!!」
もう、あの王子なにしてんのよー!?
「今回なんて、相手にもされなかった!なんでいっつもあんたが勝つのよ!!」
「勝ち負けなんて、ないわよ!」
「あんたから全部奪ってやろうとしたのに!なんでよ!!」
「奪ったものに意味なんてないからじゃない?」
「うるさい!黙れ!!」
ナイフが頬を掠めた。血が滴り落ちる。そこに王子が現れた。
「マリア!!くそっ!警備は何してたんだ!!」
「見てなさいよ!あんたの愛しいマリアがズタボロになるところをね!!」
ナイフが勢いよく向かってくる。もうダメだ。諦めたマリアは目を閉じた。また転生できますように。そう祈る。
だが、何も起こらない。否、何かが肩に落ちる。べしゃっ。なんだろう?なんだか生暖かい……。目を開けて驚いた。ナイフから血が滴っている。ナイフをとめたのはイリスだった。イリスの手はナイフを掴んでいた。血が吹き出す。
「マリア!逃げろ!!」
「イリス王子!?何故!」
「お前の目的は俺だろ?マリアは関係ない!」
全くもってその通り!だけど!これは酷い!
マリアはイリスの言うとおりに逃げる。イリスはナイフを離した。
「いっ」
かなではナイフで王子を殺そうとする。
「しねぇえええ!!」
マリアは落ちていた石をかなでに投げつけた。石はかなでの目にクリンヒット!
「ああっ?!」
すぐさま警備員達がかなでを取り押さえた。
「イリス!大丈夫!?」
「ふふ、やっと名前で呼んでくれたな。」
「そんなことより手を……」
止血しようとハンカチをだす。止血してなんとか血は止まった。
「イリス、どうして私なんか…」
「お前の事が好きだからだろ?」
「!」
その言葉に少し心が動いた。かなでは王子襲撃の罪で死刑にされる事になった。火刑にされた。火の中、彼女は叫ぶ。
「マリアと王子に災いを!この国に災いあれ!!」
そう叫びながら死んでいった。こうして、かなでとの因縁も終わった。学園生活も何事もなく終わっていった。そして卒業真近になる。
「もうすぐ卒業なのね……」
自室にてマリアはそう呟く。このままでいいのだろうか?このままではイリスと結婚させられてしまう。だが、マリアの心には彼が浮かぶ。
「ツェペシュ……私……」
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