入学
そうして数年がたった。
「はぁ、また学校をやり直しだなんて嫌になるわ。」
なんてため息をつきながら愚痴る。結構例のオオカミ男事件のせいで森には近づかせてもらえないまま数年がたち、学園に入学する歳になってしまった。
「マリア!」
「イリス様?!」
イリスはマリアを馬車で迎えに来た。
「一緒に登校など嫌だと何度も言ったではないですか!」
「何を言うんだ!もしお前が他の女共にいじめられたらどうするんだ!」
「過保護ですこと……」
これからかなでが出てきてそっちについて私を虐めるやつがなにいってるのだか。
「当たり前だろ!お前は俺の婚約者なんだぞ?周りの女共が嫉妬しないわけがない!」
「はぁ、いつも通りどこから来る自信なんだか……」
そうため息をつきつつも仕方なく一緒に登校することになった。入学式を終え、クラスで自己紹介をしていた時である。
「すみません!馬車が壊れてしまって!遅れました!」
「!」
そこにいたのはかなでがいた。かなでが席につこうとしていると目があった。何故だろう。私を見てニヤリと笑ったのだ。
まさか!かなでにも前世の記憶が?!
嫌な予感がした。昼休みの事、イリスがマリアをお昼に誘って食事をしているとかなでが近寄ってきた。そして、わざとベンチに座る私の前でコケたのだ。
「い、たた。」
は?嘘つけ!自分で転んだくせに!
「申し訳ありません。足がもつれてしまって……」
「いや、問題ない。それより怪我は?」
なんてイリスはまんまとかなでの作戦にかかっている。
「少し足が痛みます。」
「保健室まで連れて行こう。」
「ありがとうございます」
イリスはマリアの前でカッコつけたかっただけだった。
「おい、お前連れて行ってやれ。」
お付の執事にそう命令した。これを聞いてかなでの顔は曇った。だが渋々連れて行かれるしかない。
「マリア、お前は怪我とかしてないか?」
「ええ」
「……しててもいいんだぞ?」
はぁ?何を言ってるんだこいつは!
「俺が姫抱きで運んでやるからな!いつでも怪我していいぞ!」
なんてことだろう。まさか王子が私ルートを選ぶとは!そして、かなでの色仕掛けが効かないなんて!?
驚いて口をあんぐりと開けた。
「何をそんなに驚いている?真っ先に聞いてやれなくてすまなかったな。邪魔な奴をさっさと追い払いたかったんだ!」
かなで、どんまい!そう思いながら教室へと戻るのだった。
運ばれている途中でかなではここでいいと断った。そして教室へと戻ってゆく。
「マリア!許さない!今世こそは!あんたから全部奪ってやるわ!!」