王子との距離
王子はあの日以来森と言うワードを聞くだけで怯えていた。ある日庭でお茶をしていると王子がやってきた。
「マリア!」
「王子、なんの御用でしょうか?」
「プレゼントがある!」
「いただいてばかりでもうしわけないので、いりません。」
「これを」
王子はそっと銀のナイフを取り出してきた。
「お前が何故森に行きたいのかわからない、だが、もし森への散歩が許可されたらこれをヴァンパイアに使えばいい。」
「そんなものいりませんわ!使いませんわ!」
「銀はオオカミにも効くという。持っていてそんはない。」
「……オオカミ…」
マリアはしばらく黙っていたが王子から銀のナイフを受け取った。
「ありがとうございます。身に余る光栄ですわ。」
「……マリア!」
王子がマリアに抱きつく。マリアは驚いた。
「好きだ!!」
こんな事はもう望んでいなかったのに。何故必要な時には与えてくれずに今なのだろう。私の心はもう、ツェペシュのものなのに……。
まて、もし、ここで王子を籠絡して裏切れば王子への復讐にもなる。マリアは微笑んだ(暗黒微笑)。
「王子、いえ、イリス様、私もあなたを想っております。」
「え?!で、でもさっきまであんなに冷たかったのにか?」
「それは照れ隠しですわ。」
オホホホなんて笑って見せる。
「マリア!ついに俺の想いが伝わったんだな!よし!じゃあキスするぞ!」
「え?」
キス?嫌だ!だって、私が好きなのは……ツェペシュで……。
だんだんとイリス王子の顔が近づいてくる。マリアはそのまま駆け足で逃げた。
「?マリア?」
目を開けるとマリアはいなかった。
「はぁ、はぁ。どうしてこうなるのよ!」
その後、王子とは屋敷内をぐるぐると追いかけっこした。