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災厄と聖女と覚醒と③

「お待たせいたしました。聖女様、アーサー様。」

クローヴィス枢機卿とやらが、そう言って恭しく礼をする。一般人のオレとしてはそんな最敬礼は居た堪れない、やめて欲しい。この最敬礼は王子に対してだと思っておこう。そうしよう。オレの方が先に呼ばれたとか、そんな記憶は始めから無かったことにしよう。

「クローヴィス枢機卿、歓迎ムードのところ申し訳無いが、聖女殿は覚醒の儀式をご所望なのだ。」

「左様でございましたか。」

割って入ってもややこしくなるだけかもなぁ、とオレは王子のやり取りを黙って見ていた。なんとなくだけど、取り敢えずこの王子はオレが拒否ることはしなさそうなんだよな。こう…価値観を理解してくれてる感じがする。異世界の、それも王子相手に何言ってんだかとは自分でも思うけど。


 枢機卿とも話がついて、オレたちはいったん神殿に行くことになった。実のところ、ちょっとワクワクしていたりする。この非日常感。ここ最近気分は最悪だったし、聖女じゃなかったらもっと良かったけど、まあいいや。オレは流されるまま王子と枢機卿と一緒に馬車に乗って、そうして神殿に向かった。


 馬車ならすぐ、って言ってたけどホントにすぐだった。覚醒の儀式ってどうするのか質問したけど、回答が終わる前に目的地に着いてた。

「難しい事はありませんので、あとは実際に儀式をしてしまった方が良いかもしれませんな。」

どこかぽや~っとした感じもしないでもないクローヴィス枢機卿は、馬車を降りる前にそう言った。初対面の時はもっとテンション高いじいさんかと思ったけど、ホントはこんな感じの人なんだろうか。

 馬車を降りて、神殿を改めて見る。馬車の中から目にしていて薄々は感じていたけど、でかい。初っ端の感想がそれでゴメンね! でもでかいんだよ、こう城とは違ったでかさ。建築様式? ての? アレだよアレ、ギリシャにある神殿と同じ感じ。ギリシャのは壊れてたりしてるけど、こっちはヒビ一つないから、でかさと重量感で、圧迫感がすごい。信心深いとありがたいのかもしれない。オレはこの世界の人間じゃないし、ただひたすら圧倒されるだけだけど。


 枢機卿に案内されて、神殿の中に入る。城と金を基調として全体がまとまっている。外に近い方はまだたくさんの人がいたからかがやがやと喧騒が耳に着いたけど、次第に人もまばらになってくると、音がどんどんなくなっていく。足音と、息遣いだけが。

 神殿の奥には、淡い緑色に輝く大きな宝石が祀られている。ご神体みたいなもんなんだろうか。小柄な成人女性くらいありそうな大きさだ。

「あちらは風の精霊石でしてな。この国は大神殿から見て東にあります故、あの通り風の精霊石を祀っているのですよ。」

そう言って、枢機卿は簡単に説明してくれた。…オレ、属性水っぽいけど、この国の聖女でいいんだろうか。とか考えていたら顔に出てたっぽい。

「聖女様はおそらく水属性の能力をお持ちかと見受けられますが、なに、御心配には及びません。精霊石は地鎮と申しますか、災厄に対抗するためにあるものですから。個人の属性には干渉するものではないので、儀式は滞りなく行えますからな。」

わあぁ… 考えてたこと筒抜けとか、オレ、恥ずかしいわ。今までも筒抜けだったんだろうか。


「では私どもは儀式の準備をしてしまいましょうかね。その間に、聖女様はお召替えをお願いいたします。」

この枢機卿のぽやっと感にちょっと安心する。もう考えるのはよそう、恥ずかしくて死ねるから。考えてる事筒抜けとか。

 いつの間にか司祭の一人が真っ白な服を持って、枢機卿の後ろに控えていた。

「この者が、部屋へご案内いたします。」

そう枢機卿が言うと、司祭は会釈をしてこちらにどうぞ、とオレに言う。そうして着替えのための部屋に案内してくれるらしく、歩き出したのでオレは彼の後を追うのだった。後ろから聞こえる声ではオレの着替えと、儀式の準備が終わるまでは王子はまた別の部屋で待つらしい。まあ、着替えに一緒に居られてもオレも困るしそうだよな、と変に納得した。

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