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水神様の仰ることには①

「人魚と人間の間にできた子、その子の性別が男子だった場合がこちら、女子だった場合があちらと世界が分岐しました。男子は魔力を持ち、世界に魔法をもたらしました。女子は私の加護はありましたが魔力は持たず魔法は使えぬまま。故にあちらの世界では魔法は存在しないでしょう?」

水神のその説明に悠斗は納得しつつ、え?向こうで魔法が使えない理由にご先祖様が関わってるってこと?と、動揺する。魔法とか使いたいヤツに知られたら大変だな、これ。


「え~と、それでオレはどうしたらいいんでしょう?」

魔法が使えなくて当たり前の世界だったし、余計なことさえ言わなければ顰蹙を買うことも無いか、と悠斗は思い直して気持ちを切り替えた。

「巡る災厄に終止符を打ってほしいのです。」

「…今まで出来なかったのに?」

水神の言葉に思わず悠斗は素で切り返した。今までもそこそこ素が出ていたが、それでも使い慣れない敬語を頑張りつついたけれど、極々普通の人間になんて大層なことを依頼するのだろうと思った瞬間に口に出ていたのだから仕方がない。

 仕方が無いんだ、と自分に言い聞かせるけれど冷や汗が流れるのは止められなかった。


「そうですね。今まで出来ませんでした。それには理由があるのです。」

そう言って水神が説明することには、今までの聖女は特に水神たちとの所縁が無かったとのこと。だから聖女としての力は使えても、加護を与えることは出来ても、こうして会って会話をすることができなかった。助言は途切れ途切れになり、正しく全てを告げることができなかったが故、災厄をどうにか封印するに止まり、終止符を打つことができなかったのだと言う。

「あなたは私の眷属である人魚の血を引きます。漸く私の声が届く者が召喚されました。」

水神はどこかほっとしたような表情で、悠斗に微笑みかけた。なるほど、と悠斗は納得した。


 その悠斗の表情を見て、水神は話を続ける。

「北方の地に、邪神と呼ばれる存在が眠っています。」

邪神かぁ、と悠斗は思わず遠い目をした。まあ、こんな災厄が起こるくらいだろうから、邪神とか魔王みたいな存在が居ないはずはなかった。戦ったりするんだろうか。正直、痛いのは嫌だ。

「邪神は元はこの世界を守護する神の一柱でした。彼は、氷雪を司る神でした。かつて、私たち神の一族と人間たちとの関係がもっと近しい時代がありました。」

哀し気に水神は言う。

「え? 神様が邪神になったってこと、ですか? そんなことが?」

「ええ、そうです。当時、彼には愛する者が居ました。ルリビタキの獣人の娘です。」

言い難そうに水神が言うが、悠斗は何となくこの後の流れを察した。そのお嬢さんに何かあったんだろうなあ… ガチギレして邪神になるほどの出来事が… 誰が原因なんだろう… 人間が犯人なら、オレじゃ手に負えないのではないだろうか…

ますます悠斗の目が虚ろになった。

「む、察しが良いですね。まあその、その娘が… 嫉妬の対象になり最終的には命を落としてしまったのです。」

「嫉妬、ですか?」

「ええ。氷雪の神はまあ、美男でしたので。そうして獣人の娘は普通の村娘でした。権力者の娘たちは嫉妬の炎に焼かれて… 氷雪の神が庇えば庇うほど、嫉妬の炎が燃え上がるばかりでした。」

ひい、と悠斗は心の中で悲鳴を上げた。要は集団でいじめたってことだよな? 死ぬまで苛め抜いたのか、神が庇ってもダメって執念深すぎねえか。むしろそっちが邪神になりそうだけど⁉ そっちじゃねえの? っていうか、これどうにか出来んの?


「あなたが聖女として覚醒するさいに、一度限りの奇跡の力も授けましょう。」

怯える悠斗に、水神が語り掛ける。

「奇跡の力、ですか?」

「ルリビタキの娘の魂と肉体は、邪神と化した氷雪の神の下に囚われています。彼女の魂を開放し一度だけ蘇生させる力です。」

水神のその言葉に、悠斗はなるほど、と呟いた。

「そのルリビタキ? の娘さんなら確かに説得できそうですね。」

「失敗したら、これ以上邪神と化した彼をこの世界に留めおくわけにはいきません。止めを刺していただきたい。その際には改めて力を貸しましょう。まずは覚醒からですね。」

水神はにこりと笑った。


 とんでもないことをサラッと頼まれてしまった。ウソだろ…

悠斗は言葉を失った。

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