第8話 その名は、マカイジャー!
「ギ~リギリギリ♪ 違法伐採は最高だギリ~ッ♪」
西多摩地域の山中で、周囲の木々を切り倒すのは丸鋸人間。
切られているのは杉の木、地域の木工ブランドの素材だよ。
切り倒された杉から黄色い花粉が飛び散る、外道がっ!
先行させていた蝙蝠型の使い魔の視覚を借りて偵察。
いや、とんでもない物を見てしまった。
こいつは早く倒さないと駄目だ、俺達は敵の前に姿を現す。
「そこまでだ、クライム悪魔サーキュラー!」
俺は怪人の名前を叫ぶ、敵の周りで飛ぶ花粉がヤバい!
「林業したきゃ、普通に就職しなさい!」
続いて勇子ちゃんも叫ぶ、その通りだ。
「おのれ外道が、花粉症の私に対する嫌がらせですか!」
「これじゃ俺達も花粉症になっちまうぜ。 坊ちゃん達、やっちまいましょう!」
「こんな迷惑な奴、良心の呵責なく倒せるのだ!」
ザーマス、ガンス、フンガーの三名も怒ってる。
「貴様ら、一人以外は人間じゃないギリね? 何者ギリっ!」
サーキュラーが律儀に名を訪ねて来る。
俺達は全員、衣装を統一して来ていた。
左胸と背中にオレンジのカボチャの徽章が縫い付けられた、緑の野戦服。
我がゴートランド王国陸軍の制服である。
「変身してから名乗ってあげるわ、マカイチェンジ♪」
「「マカイチェンジ」」
「デーモンシフト!」
俺だけ掛け声が違うのは仕方ない、一応俺指揮官ポジだし。
変身アイテムは全員共通、俺もやっと変身アイテムが出来たよ。
左手首に着けた、カボチャランタン型の変身ブレスレット。
ブレスレットに触れる事で、ヒーロースースーツが生成され装着される。
俺達の集まりの正式名称。
ゴートランド王国軍、特殊遊撃救命近衛部隊。
ヒーローチームとしての名は、魔界勇者隊マカイジャーだ。
《《近衛》》と部隊名にあるように、形式上は王族である俺の近衛兵である。
「赤い勇者、マカイレッド!」
真紅のスーツとフルフェイスマスクで覆った姿で、勇子ちゃんが叫ぶ。
「青い勇者、マカイブルーですっ!」
青のマスクとヒーロースーツで全身を纏うのはザーマス。
声の様子からして、マスクの下は花粉症で涙目だな。
「黄色い勇者、マカイイエロー♪」
マスクの頭部に犬耳が付いた黄色いスーツを纏っているのはガンス。
仮面の下は、完全に狼の頭の人狼形態だ。
「緑の勇者、マカイグリーンなのだっ!」
人間態の小柄な少女から、緑のスーツで魔族化した巨体を覆うのはフンガー。
ランタン型の変身アイテム、マカイチェンジャーを開発したのは彼女だ。
「ゴートランド王子、デーモンナイト!」
最後は勿論、俺ことデーモンナイト。
兜に金の山羊の角を生やした黒い悪魔の鎧を着た騎士だ。
「人と魔族が手を取って、新たな未来を切り開く!」
レッドがお題目を叫ぶ、このチームの大事なスローガンだ。
「「魔界勇者隊マカイジャー!」」
最後は、全員でチーム名を名乗る。
普通なら、名乗った後で背後で爆発とかするもんだが今回は無し。
俺達に依頼をしてきた観光協会さんからの要請で、爆発機能はオフにしている。
誰の苦情にもならない、夜の西多摩山中に響く俺達の正義の雄叫び。
人と魔族の混成ヒーローチーム、魔界勇者隊マカイジャーの産声だ。
夜空を舞う蝙蝠は、使い魔のデーモンバットだ。
先行偵察の次は、目をカメラにして俺達と敵の行動の撮影に移行する。
事件の調査と討伐を依頼してきたH村観光協会さんと、日本ヒーロー協会に警察。
関係各所にきちんと、ヒーロー活動をしてる記録を出す義務がある。
戦闘以外の面倒事も、現場責任者の俺がやらねばならない。
社会や経済的にも勇子ちゃんを守るとは、こういう事も含まれるのか。
帰ったら、管理職として報告書も書かなきゃ。
「噂の混血王子と手下共か! くたばるギリ~ゥ!」
何故か律儀に俺達の名乗りが終わるのを待ていた、サーキュラー。
いや、人の話を聞く頭があるなら悪事とか働くなよ。
サーキュラーが、無数の丸鋸を自分の周りの空中に生み出し射出して来た。
「守備は任せるのだ、バンプアップッ!」
二メートルになってるグリーンが、全身を更に肥大化させて盾となる。
「あっしは、フリスビーキャッチは得意ですぜ♪」
「これ以上花粉をまき散らせてなるものですか、森は荒らさせませんよ!」
イエローとブルーが跳躍して、グリーンの守りを抜けた丸鋸を素手や武器で防ぐ。
「ナイト、行くわよ! マカイカリバー!」
「任せろレッド! デーモンホーッ!」
レッドは赤い両手剣、俺は黒い平鍬を召喚して手に持ち突っ込む。
サーキュラーは懲りずに丸鋸を飛ばして来るが、そうはいかない。
「デーモンツイスター!」
俺が鍬を振り発生させた竜巻が、敵の飛ばした丸鋸を粉砕して霧散化させる。
「マカイカリバー、バーンエンド!」
レッドが足裏から炎を噴き出して飛び、炎が燃え盛る剣を敵へと振り下ろす。
「ギリ~~~ッ! 刃物の俺が切り殺されるなんて~っ!」
レッドの必殺技で、魂ごと両断されたサーキュラーが断末魔の悲鳴を上げて爆散。
「やった、初勝利よ♪ 皆、ありがとう♪」
「流石だな、嬢ちゃん♪」
「流石、私の発明品なのだ~♪」
「いやあ、こういう活動も良い物ですなあ♪」
「何はともあれ、討伐完了だな♪」
俺達は集い、ハイタッチで初陣の勝利を祝った。
魔法陣で転移してO市に帰って来た俺達。
変身を解いて、ザーマス達は本日の業務終了で解散となる。
「進太郎、ありがとうね♪」
「はっはっは、これからが始まりだぜ♪」
「そうね、私達の戦いは一生だもんね♪」
俺は勇子ちゃんと拳を合わせて、彼女をお向かいの自宅に帰して別れる。
大使館に戻ると、見知らぬ人物が玄関で待っていた。
「お初にお目にかかります殿下、書記官のギョリンと申します♪」
「え、書記官って? 聞いてないけど、一体どういう事?」
灰色のスーツを着た、白い肌に銀髪で耳の部分が魚のヒレ。
何と言うか、イケメン半魚人と言う感じの青年だった。
「はい、女王陛下から事務や書類仕事を引き受けるようにと遣わされました♪」
「え、マジで? 良かった、文官が来てくれた♪」
「女王陛下も、一度に任せ過ぎたと。 殿下の御身が第一ですのでお休み下さい」
「助かった、それじゃあお休みなさい」
「はい、おやすみなさいませ♪」
俺は書類仕事から解放された嬉しさでターンして、母屋へと戻った。
翌日、俺が戦いに勝ちいい気分で寝て目覚めた朝。
「ほう、彼ですか?」
「ああ、槍のギョリンが文官とはな?」
「元海軍の、エリート士官って聞いたのだ」
「そうなんだ? 確かに半魚人って言うなら、陸より海だよな」
「何じゃ、早くも追加戦士か?」
「なら、色はシルバーかしらねえ?」
居間で朝食を取りながら、新人のギョリンについて話になる。
今日の朝食は、中華粥。
どうやら、ザーマス達の話からギョリンは身元は確かな人物らしい。
ゴートランド王国にも、領海と海軍があった事を今更ながらに思い出した。
魔界の海って、実はまだ行ったことはないんだよな。
俺はまだまだ、ゴートランドの事を勉強しないといかんな。
日本での暮らしがメインとはいえ、将来継ぐ国の事も学ばねば。
「で、ギョリンさんって人は朝は魔界なの?」
「はい、彼は魔界の城からの通勤なので」
お祖母ちゃんがザーマスに、ギョリンについて尋ねる。
「こっちと繋がっとるんだし、家で飯を食っても良いのにのう?」
祖父ちゃんは疑問に思う。
なんというか、家の祖父ちゃん達は魔族と親和性が高いな。
「まあ、彼も考えがあるのでしょう」
ザーマスが話を終わらせる。
確かに、俺らがアットホームな関係とはいえギョリンもそうとは限らないだろう。
事件がなければ、今日は普通に休める土曜だ。
皆にも休みはきちんと取って欲しい、家はブラック組織じゃないので。
「プリンス~? 一応、ギョリン用の変身ブレスは作っておくのだ」
「それは、本人に意思確認してからと母上に許可取らないと」
俺の権限でいきなり兼任させるのも悪いし、出来れば書類仕事に専念して欲しい。
いや、俺も書類は書いたり確認と押印はするよ?
「坊ちゃん、戦に人手は多い方が良いですぜ?」
ガンスもフンガーに同調して来る。
「まあ、フンガー達の言う事もわかりますがまずは五人で行きましょう」
「そうだな、勇子ちゃんの意見も聞かないとだし」
初めての戦隊活動と新たな仲間。
俺達の戦隊活動は、幸先の良いスタートだった。