飛び去る機影
みなさんこんにちはブルングです。
楽しんでいただけると幸いです。
昼の13時ごろ。働き始めて4時間と言ったところか。激しい日差しの中、俺は猫車いっぱいに土砂を詰め込んで運んでいた。
周りには、数十名の武装した看守と、長い長い滑走路、そして、駐機してある数機の戦闘機と輸送機が見えた。敵の軍用機とはいえ、鈍く光を反射するその姿は本当に美しかった。
遠くを眺めていた俺に、レイカの声がかかる。
「タイチョー!早く運んでくださいっす!土が溜まってるっすよ!」
レイカは、地面にスコップを突き刺し、額に流れ出た汗を振り払って言った。長いインメル軍仕様のズボンに、タンクトップを着たその姿は、この仕事にピッタリと言う他なかった。
「お前は掘ってるだけだろ。俺は100メートルの道をずっと往復してるんだ」
「それを言うならタイチョーは運んでるだけっすー!私はもう1トン分は掘った気がするっすよ?」
「それにぃー。あれを見るっすよ!」
そう言ってレイカは、3kmほど彼方にある山を指差した。"山"と言っても、そこにある山は天然物ではなく、人の手によって作られた物だった。
俺たちがここで作業をし、その時に出た土砂の堆積場。それがあの山の正体だった。
地層も、固い岩も、自然も。そこには何もありはしなかった。
「あれは……。全部お前が掘った土じゃないだろ……」
「そっすけど……。100分の1くらいは私たちのもんじゃないすか?」
「さぁ、どうだろうな。だが、大半は重機だ」
俺はそう言い残して猫車を押し始める。決して綺麗とは言えない道を、バランスをとりながら進んでいくのは、決して楽とは言えない。
100メートルほど先には、土砂運搬用のトラックが止まっている。そこに土砂を放り込んで、また戻って、そしてまた持ってくる。その繰り返しだった。
汗でふやけた手は、体が悲鳴を上げ始めていることを表していた。しかし、やめたところであの捕虜たちのようになるだけだ。
俺は空を見上げた。青い青い空に、一本の白い筋が見える。日差しを抑えるために掲げた手の隙間から、小さな黒い点が見えた。
「高度25000、マッハ1.3と言ったところか。この気象状況なら、あと0.8は出せるな……」
俺は、静かに呟いた。懐かしい空はこんなにも広いと言うのに、俺を受け入れてなどくれないのだ。
"ピーーーーーーー!!!!"
笛の音があたりに鳴り響く。1人の看守が吹いたその笛の音は、やがてあちらこちらへと伝播し、そこにいた捕虜たち全員の顔を上げさせた。
昼食の時間。それが笛の音の意味であった。
「タイチョー!行くっすよー!!昼食の時間っす!!」
後ろから、笑顔でこちらに走ってきたレイカが言った。
手は土で汚れ、バッサリと切られた髪は汗でへたり込んではいたが、そんなことより笛の音が嬉しいようだった。
「あぁ。そうだな。あいつらを待たせるわけにもいかないしな」
「そうっすね!席取ってくれてるといいんすけど……」
「今まであいつらが他人に出遅れたことがあったか?」
「それもそっすね!さぁ!ご飯の時間っす!!!」
レイカは、両手を上げて、体いっぱいに喜びを表現しながら歩いていった。
俺はその場に猫車を放り投げ、額の汗をシャツで拭いとる。上を見ると、先ほどより長大な飛行機雲がそこにあった。
「速度を上げたか……」
俺は訝しげに呟いた。
皆さん初めまして、ブルングです。
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読んでくれてありがとう!!!
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(作品名:我が空の防人)
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