遠い遠い空
みなさんこんにちは。ブルングです。久しぶりの投稿になります。
今回は空を奪われた空軍将兵の物語です。
楽しんでいただけると幸いです。
※この作品は、pixivにも投稿しています。
(作品名:我が空の防人)
不発であった空対空ミサイルは、ただのデッドウェイトにしかなり得なかった。
"missile!missile!"
警報音が鳴り響き、冷たく、乱雑な声が頭の中で反響した。
次の瞬間、私は遠い空を夢に見ていた。
燃え落ちる機体と、地上戦の黒煙は、我々の没落を美しくも悲しげに映し出していた。
輝く太陽へと手を伸ばして、俺はなんと言ったと思う?
飛び去っていく、天使のマークを纏った白銀色の敵機を見て、俺は何を願ったと思う?
「羨ましい」
俺は二段ベッドの上で手を伸ばしながら言った。手のひらには太陽ではなく、蛍光灯の暗い光が降り注いでいた。
俺の短い髪には、少しの寝癖が居座っていた。
「何言ってんすか?寝ぼけてるんです?」
下の方から、生意気な女の声が聞こえてくる。
「夢を見てただけだ。117番」
「やめてくださいっす。私、レイカって言う名前があるんすけど……セイヤッ!」
そう言って俺のベッドを蹴り上げたそいつはレイカ。蘭 レイカ(アララギ レイカ)。階級は少尉"だった"。
青い瞳を宿した彼女は、元々は長髪だったが、つい3ヶ月ほど前にバッサリと切ってしまった。ちょうど、俺の隊で初めて戦った日のことだった。
「にしても皮肉っすね。この国で一番自由だった私たちが、今や独房の中っすよ。陸軍の連中はもう自由なのに」
彼女は鎖に繋がれた右手をプラプラと揺らしながら言った。
「自由じゃないさ。あいつらは地べたで這いつくばってる上に、オリントリアの操り人形だ。体のいい弾除けにされるのがオチだ」
「言うっすねぇ。まぁ、同感っすけど」
俺たちは戦争に負けた。俺たちの国"インメル連邦"と敵国"オリントリア王国"の戦争は、わずか1年で終結。結果的に残ったのは、温存するあまり使われなかった陸軍戦力と、瓦礫の山となった町だけだった。
俺たちは"インメル連邦第22航空団"の元メンバー。かつて栄華を誇った連邦空軍の、一角を担う部隊のパイロットだった。
今やその栄華は、見る影もない。
「あっ!タイチョー。もうすぐ時間っすよ。嫌なんすよねぇ。"あれ"」
「もうそんな時間か……」
俺はベッドに寝転びながら、遠くを見つめて言った。
「なぁ、ディジー」
「ひよっこ時代の呼び名で呼ばないでほしいっす。レイカっす。わざとやってます?」
「……………………」
「あぁ無視っすかそうっすか。いいですよーだ。…………で、なんすか?」
「……頼みがあ」
そう言いかけた瞬間だった。
"ガチャン!"
俺の喉から言葉が滲み出るよりも早く、俺の言葉は、遠くから聞こえてきた騒音にかき消された。
俺と同じく、この施設に収容されていた捕虜たちは皆一様に鉄格子から様子を伺っている。
「おはよう。インメルの諸君。さぁ、仕事の時間だ!」
坊主頭にベレー帽を被ったそいつは、変に陽気な声で言った。
暑苦しいその声と共に、看守たちが牢屋の扉を勢いよく開けた。看守たちは俺たちの手枷を外し、乱暴に外へ放り出した。
「ほんっと嫌っす。レディには優しくするっすよ!」
レイカは看守たちを睨みつけながら言った。怖くは……なかったが。
俺とレイカは、独房の前に整列させられる。他の捕虜たちも同様だった。ただ一つ違ったのは、彼らの目線だけだった。
怒気をはらんでいるもの、恐怖をはらんでいるもの、打って変わって何もないもの。俺は、一体どんな目をしていたのだろうか。
「よぉし!敗戦国の軍人にしては早いじゃないか!だが……」
そう言って、屈強な体のオリントリア将兵の男は、1人の若い男性捕虜に近づいていった。顔は酷く歪んでいて、笑顔だった。
皆さん初めまして、ブルングです。
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※この作品はpixivにも投稿しています。
(作品名:我が空の防人)
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