バベル
『正確な命令で人々を導け!』
ゲームアプリを漁っているうちに見つけたキャッチコピー。
詳細を確認すれば、街づくり系に分類されるような内容だった。
あまり手を出すことはないが、気まぐれにインストールしてみた。
ゲームのタイトルは、『バベル』。
さっさと、開始してみる。
『バベルへようこそ。君には、人々を導く神様見習いになってもらうよ』
市長とかではないのは定番から少しズレているが、奇を衒っているわけでもない設定だろ。
神託というかたちで指示出しをするらしい。
このゲームのオリジナリティらしいフリーコマンド方式。
プレイヤーが文章を打ち込むと、それをAIが判定してゲーム進行に変化が訪れるらしい。その結果は、千差万別。言葉選びを間違えれば、廃村になることすらあるらしい。
なお、ゲーム内のキャラクターは、神託を絶対として行動する前提がある。どんな非道な命令でも、悪魔と疑われるような進行はないのだ。
さて、画面には簡素な村が表現されている。
一応、ゲームの大目的は、塔の建設らしいので、最初の神託はこうか?
『塔を建てろ』
まあ、これで良いだろう。
スキップ機能使うか。巻き戻しは無理らしいから、三日くらいにしとくか。
はぁ!?ボロボロじゃねぇか!どうなってやがる?
『状態:飢餓』
飢餓だと?
村をしばらく観察してみる。
原因はすぐにわかった。村人たちは塔の建設しか実行していない。狩猟にも行かず、農耕にも行かず、料理もしなければ、睡眠も取らない。
いや、これはいくらゲームでも村人の思考、バカ過ぎじゃね?
取り敢えず、修正を図るか。
『生活を守りつつ、計画的に塔を建てろ』
おっ、狩猟なんかもするようになった。
まぁ、問題ないだろ。一年くらいスキップ。
うん?森がなくなってる……
建材が木材だからか。これ生活大丈夫か?
うーん?三階建てくらいの塔が乱立してやがる。
数も高さも指定しなかったからか。
『塔の建設を中止。植樹によって森林を再生するべし。生活は守りなさい』
こうか?一週間で様子を見るか。
道がなくなった。全部、森だし。
『生活を守りつつ、道を作り、外部の人々と接触するべし。』
スキップ。
あれ?隣村と争ってる。
えっと、ログはあるのか。
『村人は、自分達を神に選ばれた者として、上から目線で接触した』
えぇ……
『あなたたちに違いはありません。交戦を止め、仲直りしなさい。』
どうだ?
おっ、仲直りした。あっさりしてるなあ。
『隣村の住民が信者になった』
なるほど。
『生活を守りつつ、石切場を探しなさい。信者を平和的に増やしなさい。』
塔の建設のためには、人数がいるし、建材も確保しないとな。
スキップ、と。
石切場は結構、見つかってるな。信者も増えてる。
『生活を守りつつ、塔を一つ建設しなさい。できるだけ高く、石造にするのです。』
スキップ、と。
んん?各村に一つずつ建ってやがる。
『国を造りなさい。王を決めるのです。できるだけ高く、石造の塔を一つ、王のいる都に建設しなさい。生活は守りなさい』
スキップ。
信者が減ってる。王選で各村が争い合ったようだ。
『以後、細かいところは、王が決めなさい。王は、人徳ある人間であることを心掛けなさい。布教し信者を増やしなさい。塔をより高く建設するために研究しなさい。』
こうか?これで生活を守ることをいちいち打ち込まなくても良くなるか?
三日くらいスキップ。
目立った破綻はなさそうだな。
スキップ、スキップ、スキップ。
王が死んでる。次代の王は、決めてない!
『平和的に王を決めなさい』
スキップ。
決まらねぇ!どういうことだ。信者が増えすぎて、意思統一ができてねぇんだ。
『平和的に各集落に代表を決めなさい。代表たちが、平和的に王を決めなさい。』
スキップ。
よし、決まった。
『塔を建設しなさい』
スキップ。
おぉ、それなりに高くなったな。王が細かいところをフォローするから、破綻もないし。
まぁ、ちょっと単調なってきたから飽きたな。