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4☆なんだか怪しいお客さんが来たんだけど、名前を呼んではいけないあの人ですか?

 舞踏会から数日。

 今日も今日とて、店の二階で目が覚める。

 数年前に亡くなった、ライリーママが使っていた部屋なんだってさ。

 アタシが転がり込んできた日に、使えって言って貸してくれた。


 何年も前から部屋の主がいないのに、ホコリ一つなくて、普段から掃除してたんだろうなってわかった。

 亡くなったお母さんのことを今でも大切にしているなんて、ホントいい人。

 



 給仕服に着替えてお店に降りる。

 ライリーはとっくに起きていて、床をモップで磨いていた。


「ライリーおは〜」

「おはようレイラ」

「掃除ならアタシがやるよ。ライリーは仕込みがあるでしょ」

「そうか? なら任せる」


 モップを受け取って床磨きに勤しむ。それから布巾でテーブルをふく。

 ルンバなんていないこの時代だからね。自分たちの力でやるしかない。


「そういや聞いたか? 王子は舞踏会で出会ったどこかの姫を見初めたらしい」

「へー」

「反応うっす」

「だって偉い人を見たってお腹はふくれないもん」


 少しずつこの体の、シンデレラの記憶を思い出している。

 毎日残飯しかもらえない、自分の部屋はない、しかも無給。

 日本の社畜のほうがまだマシな生活できてんじゃない?


 この子は『いつかはお母様とお姉様に好きになってもらえるかも』なんて慈愛の精神でお仕えしていたけれど、アタシはそんな生活イヤ。


 シンデレラ、アンタいい子なんだからもっと幸せな生活目指しなって。


「ライリーと一緒においしいごはんの生活がいいよね」

「食い意地はってんなー。ほら、今日の朝飯。いいハムをもらったんだ」

「やったー。ライリー大好き!」

「だから、簡単にそういうこと言うんじゃない」


 トーストと焼いたハム、そして紅茶。素朴でおいしい。おかわりしたいところだけど居候の身だからね。わがままは言わないよ。

 自分の紅茶を飲みながら、ライリーはしみじみとアタシを見つめる。


「レイラは来た頃より元気になったな。かなりひょろひょろだったのに」

「ライリーが三食作ってくれるからだよ。ありがとね」

「……一日一食すらまともにもらえてなかったなんてな。ひどい親もいたもんだ」

「ま、今が幸せだから元家族のことなんてどうでもいいけどね」


 帰るつもりはないし、お仕事とごはんと住むところがあるんだから最高だよね。


 朝ごはんを終えたら店の前をホウキではいて、開店準備完了。

 店の前に折りたたみ式の看板を開いて、扉に【OPEN】の札をさげる。


「よーし。今日も一日がんばろー!」


 開店と同時に何人も常連さんが来てくれる。これからお仕事に行く、炭鉱の人たちだ。


「レイラちゃん今日もかわいいねぇ」

「ほんと? うれしいなー!」


 昼になる頃、見慣れないお客さんがやってきた。

 長いローブでフードを目深にかぶった、ステレオタイプの魔法使い……いや、名前を呼んではいけないあの人みたいな怪しい格好の人。


「人を探しているんだ。どうしてもその人に会いたい」

「ええと、それはおつかれさまです?」


 ここは探偵事務所でもないし迷子センターでもない、ただの小さなレストランなんだけど。来るとこ間違えてないかな?


「レストランならいろんな客が来るだろう。協力してくれ」

「えぇぇ…………」


 アタシはどうすればいいか迷って、ライリーに目を向ける。


「探偵を雇うべきでは?」


 ライリーもごもっともなことを言う。


「その探偵とやらもどこにあるかわからないから、たまたま目に入ったこの店に頼んでいるんだ」


 ライリーがやれやれとため息をつく。


「困っているのに放っておくこともできないか。レイラはこの街の探偵事務所の場所わかるか?」

「まあ一応」

「いったん休憩にしてやるから、案内して差し上げなさい」

「えええぇ………」


 雇い主に言われちゃったら従うしかない。それにライリーの言うように、困っているのを放置するのもね。

 そんなわけで、名前も知らないこの人を探偵事務所まで案内することになった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 「シンデレラぁッ……また会ったなぁ……ッ」 みたいな、1巻映画版のクライマックスシーンが浮かんだぜ(ぇ
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