泉のほとりで
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思わぬことで嫌な思いをしたローズであったが、気を取り直してナイアードの泉に向けて出発した。
ナイアードの泉に到着後、泉の上全体を覆うように結界を張って、
その中で ポセイドンや風の精達とナイアードが話し合えるようにした。
ローズは 精霊達の内輪の話に参加したくなかったので、
林の中で一人酔っぱらうことにした。
といっても 実際には 酔っぱらったつもりになってふてくされていただけだが。
「どうしたの?」ティンカーがポケットの中から顔を出して尋ねた。
「エドガーの身勝手な態度に怒ってる」ローズ
「どういうところが身勝手なの?」ティンカー
「あいつが 私に懸想していることは雰囲気でわかるの。
でも 口を開けば厭味ったらしい批評ばかり。
しかも 私がエドガー以外の人と話しているところに割り込んできて
雰囲気をぶち壊しにするのよ。
なまじ 最初のころの印象が良かっただけに
あいつの嫌味をうまくスルー出来なくて、ウマイイの言葉を悪くとった反応をしてしまった。
ほんとは 嫌味を込めた物言いをしたのはエドガーであって、ウマイイではないとわかっていたのに、瞬間的に ウマイイが嫌味を込めて言ったんだろうみたいな言い返しをしてしまった。
ウマイイは大人だから うまくその場を収めてくれたけど、申し訳ないことをした。」ローズ
「困ったね」ティンカー
「うん。
ダブルバインドの奴は遠ざけるのが一番いいんだけどな」ローズ
「ダブルバインドって?」ティンカー
「言葉に乗せてる雰囲気と 言外にまとう雰囲気が真逆の奴
しかも 好悪どちらにでも取れる言い回しを多用して そういうえげつないことをやる。
つまり こっちがどういう反応しても ダブルバインドを重ねて相手を自分の思い通り追い込める言い方をする奴、苦手よ」ローズ
「だったら 逃げる?」ティンカー
「目下の所逃げ場がないから、ウィリアムに言って、エドガーが私の前に現れ無いように手を打ってもらうしかないかな。
ウィリアムの配下の人間すべてが 私の前に出てくるわけではないもの」ローズ
「交渉がうまくいくといいね」ティンカー
「自分の感情にかかわる交渉ごとは苦手よ。
うまくいった試しがないもの。
だから とりあえずお願いして、だめならダメで次の手を考えるか
どうにもだめなら この世界から脱走してやる」ローズ
「せめて 逃げるのは人間の世界からだけにしてね
僕は 君が好きだから、嫌いな人から逃げるために 僕たちからも逃げないで」ティンカー
「それって 私と一緒に悩んだり考えたりしてくれるってこと?」ローズ
「それが君の望みなら」ティンカー
「そんな風に言ってくれる人 今までいなかった。
いっつも否定されて 批評されて 負の感情か過剰な期待をむけられてばっかりで
私の身になって声をかけてくれる人なんていなかった。
こんなマイナス感情のど塊みたいな私の側にいてくれてありがとう。
そして御免」ローズ
ティンカーは黙って ローズの胸ポケットの中に入った。
(僕が人間なら 君を抱きしめてあげられたのにね)と思いながら。
それから ちょこっと顔を出して言った。
「僕は 君が好きだよ」
「ありがとう。」ローズはティンカーに笑みを向けた。
「暗い時こそ 心に明かりをともさなくちゃね」ローズ
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