侍女か国王か
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バスケットをもった女のあとから王様もついて入ってきた。
アメリアと名乗る女は、応接セットのテーブルの上にティーカップとマカロンの入った容器を置いた。
それを扉のわきに立ってじっと見ている王様。
なんなんだ?この状況
気力を振り絞って言ってみた。
「ここでは 入室の許可もなく 侍女と称する者が 勝手に鍵を開けて入り込んでくるのですか?」
「メサイア様の指示です」女
「つまり メサイアは私をここに監禁し、あなたを使って私を好きに扱う魂胆ですか!」
短剣を抜き放って構えた。
国王ウィリアムは素早くアメリアに手刀をかまし、彼女はぐにゃりと崩れ落ちた。
気絶したようだ。
「この者は ボンド家の次女だ。
ここは神聖都市ゴーリア。王都から馬車で1日の距離にある。
アメリアは 王都にある交易商人ガーランド家に嫁いだ後、離縁されて生家のボンド家にもどった。
ボンド家は、神殿の奉公人の口入家業をしている。
この度 アメリアは、神子召喚の巫女役兼神子の侍女としてメサイアに雇われた。
アメリアが前の結婚で離縁された理由は この者が富豪のゴーエン家の者とよしみを通じたからだ。
今回この者を神子の侍女にするにあたって後ろ盾となったのはゴーエン家の当主だ」
「頼む 私と一緒に来てくれ。
国王として あなたをこのまま神殿勢力の支配下に置いておくわけにはいかない。
あなたの命と安全は この身と同じように守ることを誓う」
ウィリアムは 私の目を見て一気に言い切った。
「メサイアは 召喚の場に居たのですか?」私は尋ねた。
「居た。
私が 無遠慮にあなたに触れてしまい あなたが激怒している間に、
わきの扉から抜け出し、もう一方の扉からロープをもって飛び込んで来た」
「目の端にちらっと写った人影は・・」
「やはり見えていたのだな。
私の不作法は 謝罪する。
償いについては あらためて話し合おう。
しかし 今は 決断してくれ。
私とともに来るか否か」
「ついて行けばどうなります?」
「時間がない。さらうぞ。ゆる」
と言いながら踏み込んでくるウィリアムを避けながら私は叫んだ!
「いや! 乱暴しないで!」
「ついてくから暴力はなし」小声で付け加えた。
彼は黙ってうなづき「必要なモノを持ち出せ」とささやき返した。
私は とりあえず ウイリアムに借りた毛皮のコートをとってきた。
ナイフは鞘に納めて胸元に、刀はもともと腰にさしたままだった。
ウィリアムは私をコートで包んで 片腕で私を抱えて 階段を駆け下りた。
ファイヤーマンキャリーでなくてよかったと心底思った。
あれをされると 頭に血が下がるから。
でも 左腕だけで 成人女性を縦抱きに抱えるとは すごい腕力だ。
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