塔の中のお姫様
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メサイアに案内されて部屋を移動する途中 本当に誰にも会わなかった。
振り返りもせず 無言でスタスタと歩いて行くメサイアの足は 意外と速かった。
ジグザグと廊下を移動し、中庭を横切り、階段を上って案内された部屋は塔の中にあった。
これではまるで 囚人みたいではないか!
窓の下は堀 しかも部屋は3階。
窓から外を眺めていたら、メサイアが説明を始めた。
「ここヒロポン王国では 庶民は神子様のお力を信じ その到来を心待ちにしておるのですが、
貴族の方々は懐疑的、
王族は 万が一招聘に失敗しては威信にかかわると及び腰だったのです。」
「それゆえ 教会が中心となって招聘の儀を行うことも内密とされ、立ち合いも国王陛下のみ。
実のところ大司教である私も招聘の儀をいつ行なうか 開始寸前まで知らされておりませんでした。
「その結果 せっかく御光臨下さいました神子様をお迎えするのが未熟な二人のみとなり 大層不愉快な思いをさせましたこと お詫び申し上げます」
「二人?」
「巫女と国王です」メサイア
「国王や巫女ともあろう者が 女性に対する基本的なわきまえすら身に着けておらぬとは」
「申し訳ございませぬ」
「私は いつまでここに幽閉されるのですか?」
「幽閉など とんでもない。 ただ神子様の身の安全のために」
「私の存在を不都合と考え暗殺を謀る者でもがいるのですか?」
「神子様が御光臨なされた今では 神子様を我が物として利用する者が多数いると思われます。
ですからこそ 当面は こちらでお過ごしいただきたく」メサイア
「祭祀の間では、私に魔物退治をさせようとしているかのごときお話でしたが・・」
「民衆は 神子様が先頭にたって 魔王討伐を成し遂げられることを請い願っております」
「あなたは 私に何を期待しているのですか?」
「私の役目は 神子様に何かを願うことではなく 神子様にお仕えすることです」
「それでは ちゃんとした食事と動きやすい服 安眠できる寝室に 清潔な風呂を希望します。
靴も外を歩くことのできる私の足にあったものを。」
「その為にも侍女を一人つけることをお許しください」
「護衛も野営もしっかりとでき、礼儀作法に精通した侍女ならば許可します」
(生殺与奪の権を握られているときに、
媚びるか強気に出るか?それが問題だ。
フラットな対応?それどんなんよ。わからねー。
真っ正直な私は、一度媚びると 何も言えなくなって精神的に追い込まれて最後プッツンなので
ここは 正々堂々と自分を主張することにした。
どうせ自力では元の世界に戻れないのだから、
自分に正直に生きて あっさりと殺されたとしてもしかたがない。
一応武器は手に入れたのだから、戦うもよし、自決するもあり。
人生 潔よくいこうではないかと開き直ることにした。)
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