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チート姫  作者: 木苺
第2章 神子様の優雅な日々
28/70

お披露目会

(神の愛し子 4/5)

 病院など、神子様肝いり&ウィリアム国王初の大型施設が完成し、庶民の期待が高まったところを狙って、神子様のお披露目会をすることにした。


 一つには 人集めなど実際の運営にとりかかれば、なにをどうしたところで、選から漏れた欲深き人から不満が出てくるのは明らかだったからだ。


 それ故 期待が高まった今のうちに神子様とウィリアムの権威を高めて、民衆の期待を信頼へと転換しておきたいというのがウィリアムの本音であった。


「信頼とは、実績に対して寄せられる産物ではないのですが?」ローズ


「政治の世界においては 少々不満があっても 不満だと民が思わないことを信頼というのだよ」ウィリアム


・・・


ヒロポン国の謁見の間というのは バルコニーに面した吹き抜けの2階にある。


玉座は実質3階の高さにある


玉座の前には 玉座と同じ床の高さのが通路が横に広がっており

その端は国王と国王と同等の地位にある者だけが使うことを許される出入口がある。


バルコニーにつながる床面には貴族や官吏の有象無象が並んでいる。


そこから玉座まで至るひな壇には それぞれの役職や身分に応じた官吏や貴族が並ぶ。

 列席者は立位が基本だが 一部高齢者・障害のある者には椅子が用意されている

 しかし 事前の許しなくして座ることは許されない。


バルコニーに面した壁面は開け放たれ、重要な儀式が行われているのを 国民が地上から見上げることができるようになっている。

 魔法使いたちが 拡声魔法を使って 王の声や王が認めた賓客の声を国民に伝える。


 時には 重要なシーンを ピンポイントで拡大して 広場の巨大スクリーンにアップして写すこともある。


 今回も ウィリアムとローズの姿を拡大して3つのスクリーンに映す予定だ。

・・


出席者が所定の位置につくと、ファンファーレとともに玉座の間の前に下がっていた幕が開いた。

 ファンファーレが鳴っている間 一同は頭を下げ続け、

 鳴りやむと頭を上げる。


 そして玉座に座る ヒロポン国王ウィリアムに向かって 一斉に国王賛歌を歌った。


 ウィリアムは ゆったりと椅子に座って 人々の顔を見ている。

  (口パクだ 音痴だ よい声だ 一所懸命に歌っているな良し(よし))などと思いながら


 いつもなら ここで

「慈しみ深き国王より 体の弱きものへ 着席のお許しがありました。ありがたき幸せ~」と

お触れが出るのだが、

今回は、ドラムの(とどろき)が響きわたり、

国王ウィリアムが立ち上がり、貴賓入場口に向かって直立した。


王への忠誠心高き者たちは 王に従い貴賓入上口に向かっておなじく直立した。


ドラムがやむと祝祭歌の演奏がはじまり

「神の(いと)し子 天上からのご使者 神子(かみこ)様のおな~り~」と口上が響き渡った。


貴賓口のカーテンが開いた。



事前の打ち合わせ通り、近衛隊長に先導されたローズが謁見の間に姿を現し、

王座の前に立って出迎えの姿勢をとるウィリアムに向かって歩んでいった。


 純白の皇太子服に 勇者の緋色のマント

 金色の剣帯に束ねるは杖と神刀

 ポニーテールにされた漆黒の髪は まっすぐに つややかに つららのごとく垂れ下がり

 金色の輝きを放っている。

  ティンカーの仲間たちが ローズの髪のあちこちにくっついていたり

  頭の回りを飛び回っているからだ。


  妖精の姿は通常 特別な才能のある魔法使いにしか見えないが、

  光の妖精ががんばれば、人に見える光を放つことができる。


  今回は ティンカーの紹介でローズと契約した妖精たちが光の妖精に進化して

  ローズに光の演出を加えるべく がんばったのだ。

 


ローズの後ろには 緋色の毛氈もうせんの上に魔法剣をのせた三宝(さんぽう)を捧げ持つエドガーが しずしずと付き従った。

 三宝の四隅にも、光の妖精たちが陣取って輝きを添えた。


 エドガーは 今では「神の愛し子親衛隊隊長」に昇格している。

  エドガー以外の親衛隊員を、影の者達が交代で務めているのはマル秘である。


入室後から ローズの歩みにあわせてざわめきが広がった。


 御婦人方はローズの衣装センスと外見を評価することに忙しい。

  ローズを少年だと思った者もいるようだ。


 騎士たちは 神子が神刀を差していることに眉を寄せ、

 神職の者達は喜色を示すものと不快そうな顔をするものが半々


 男達は 魔宝剣や杖に反応を示した。


 事前のレクチャー通り 各自の職能・派閥に応じた反応であった。

  (ウィリアム・エドガー・ズーム、3人がかりの説明ありがとうございました。)


祝祭歌の最後の音ぴったりに ローズはウィリアムの前に立った。


ウィリアムは 片足をひいて臣下の礼をとった。

「神子様 よくおいでくだされた」


   国民の前でのファーストコンタクトにおける 国王の振る舞いについては

   事前協議でかなりもめた。


   国王になって日の浅い己に威厳を持たせたいウィリアムの意向と

   ローズを信頼して神子を持ち上げておいた方が 処遇をめぐる神子トラブルが回避できて

   結果的にウィリアムの治世が安定するという意見ズームの対立だ。


   ウィリアムとしては自分が全責任を負うことにより、

   今後、ローズがスケープゴートにされることを防ぎたいという思いもあったのだが

   ウィリアム一人に責任を集中すると、逆にウィリアムに敵対する者が、神子を標的にするから

   かえってローズの自由が奪われると、ローズとエドガーは反論した。


   最後はローズとウィリアムの対等な協力者関係を構築し、責任を分担するという合意のもとに

   神子様↑↑(アゲアゲ) その保護者となるウィリアムの基盤強化作戦とあいなった。



バルコニーの下に集まった民衆から歓声があがった。


ローズは 軽い会釈で王に答礼した。


ウィリアムとローズは、並んで正面に向き直る

  打ち合わせでは二人が腕組みをしたり

  ウィリアムがローズの腰に腕を回す案も出たが←ウィリアムのみが主張

   身長差がありすぎた。

  

 「そもそも皇太子服を着ている神子様は 遠目には男にしか見えません」

   カゲの痛烈な一言ですべては決まった。

   =ウィリアムは、ローズを女の子扱いしてマウントを取ることをあきらめたのだ。

  

「皆の者に紹介しよう。

 こちらにおわすは 神の(いと)し子 神子様だ。」


地上で巻き起こる拍手と大歓声。

帽子を上に放り上げている者もいる

それにくらべて2階席の皆様は静かだ。

  

ウィリアムは 片手をあげて民衆を制し 話しを続けた。


「最近 神殿で不正に執り行われていた数々の神事の真似事をいぶかしみ

 内定を進めていたところ、神より啓示が下された。


 神の愛し子を使わす(ゆえ)

 神子様を呼び寄せようと騒ぎ立てていた者達すべてを処罰せよと。


 そして2度と天を騒がし大地を荒廃させる召喚儀式と称する不正を行なってはならぬと。


 我は天の声に従い、神殿に駆け付け、神の愛し子神子様をお迎えすることに間に合った。

 そして 我に隠れて召喚の儀式を画策しておった者達をとらえた。

  

 今後しばらくの間 神子様はこの地にとどまり視察を続けられる。

  おのが欲望を満たす為に天を騒がす不届き者がいかに罰せられるか確かめるために。


 神は今 お怒りである。

 われら人間が 天の慈悲に値する存在であるか疑念を抱かれておる


 それと言うのも みだりに神の名をよばわり、

 神子召喚などと言うまやかしにより、天の愛し子をさらおうとする輩があらわれたがゆえに。


 神子様が ご降臨下されたのは われらを救うためではなく、

 罪人(つみびと)を罰し、われらが許されるに値するか否かを調べるためであると心得よ。


 それゆえ 皆の者は 隠すことなくご質問にはお答えし ありのままの姿をお見せするように。

 厳正なる神の裁きにわが身をゆだね、我らの悔い改めし姿を見ていただこう。」


騒いでいた地上の人々もちょっと落ち着いて 両手を胸の前であわせたり、腕を胸にあてて祈りや敬虔のポーズをとる。


「神子様 ヒロポン国にご降臨くださりましただけでなく

 私ウィリアムに 神子様のお出ましを広く知らしめる栄誉をお与えくださいましたことに

 心より御礼申し上げます。」

   そういって ウィリアムは ローズの前で 深々とお辞儀をした。


「おそれながら」宰相が椅子から立ち上がって発言する。

「魔王討伐の件はいかがなりますでしょうか?」

  宰相は 特に体のどこかが悪いわけではない。

  激務で疲れたからという理由で椅子に座っていた。


「天候の乱れは いつただされるのでしょうか?」

公爵が立ちもせずに発言する。

 こいつは 肥満で歩くと息切れがするらしい。

 それでも 国王の前で発言するときは 立ち上がるのが礼儀であり決まりだ。


「無礼者 控えよ。」王は一喝した


「神子様が 視察を終えられたのち 我らを救うに値すると判断なされたのち

 我らの処遇が決まるであろう。


 今はまだ この地の乱れを天はお怒りだ。


 我に 神子様を案内することを許された天の御慈悲に満足せぬ不届き者は報いを受けよ」


王が指さすと 衛視たちが宰相と公爵をひき立てて行った。


ローズが横を向きウィリアムと目をあわせると、

王はローズに向き直って目礼し、再び人々の方を向いて告げた。


「神子様の慈悲により 宰相は自宅謹慎。

 不敬な態度をとった公爵は入牢とする」と宣言した。


  王宮謹慎ならば 王宮内の貴族用の牢(割と良い部屋)での尋問だが

  貴族の入牢ならば 地下牢に閉じ込められての拷問に近い。


 (神子にかこつけて ウィリアムに敵対するものを入牢させてしまったよ><)


  ちなみに自宅謹慎は そのまま降爵または爵位はく奪やらお家断絶につながる


ウィリアムは ローズの手をとり 王座の横にある豪華な椅子に座らせた。


「では これから少しの間、我への発言の自由を許す。しかし神子様への質問や請願は許さぬ。


 天より御光臨下さった神子様は心のままにふるまい、神子様の問に答えるのが我らの務めなのだから」


大臣や神官たちは鳩首きょうしゅする。


「発言がないようだな。 では解散だ」と王は宣言し ローズの方に顔を向けた。


私は軽く微笑み、二人同時に立ち上がって並んで退出した。


後ろからは 魔法剣を捧げ持つ エドガーが付き従った。


バックに流れるは 威風堂々だ。

 二人が謁見室を出るとバルコニーに面した扉が閉められ、幕も閉じた


「これにて 本日の式典は終了です。

 押し合わぬよう順番に 衛視の誘導にしたがって お帰りください」とのアナウンスが流れた。

※ 土日休日は 朝8時 夜8時の2回投稿

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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