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チート姫  作者: 木苺
第2章 神子様の優雅な日々
26/70

立てこもり事件

(神の愛し子 2/5)

幸いにもウィリアムの体に損傷はなかった。


 「いったい 何が起きたのですか?」ズーム


 「雷撃魔法でしょう」カゲ


 「足から頭に突き抜けるように痛みとしびれが走って、一瞬気を失いかけた」ウィリアム


 「背中を叩かれなければ、心臓が止まったまま死んでいたかもしれん」ウィリアム


 「ずいぶんと(きわ)どい手加減でしたな」ズーム


 「まったくだ。慎重だが容赦のない性格と見える」ウィリアム。


ウィリアムが服を着なおしていた時、階下の気配を感じたズームは、内階段から執務室へと駆け下りて行った。


・・

伝令が立てこもり事件の発生を告げた。


なんでも 神子召喚派の残党が悪魔術派の拠点に集結し脅迫を始めたらしい。

 「神子を彼らに引き渡さないのならば、自爆して呪いでこの国一帯を覆いつくす」というのだ。


スラム街の中心にある悪魔術派の拠点には いろいろと仕掛けが施されているうえ、

もともと悪党たちのたまり場であった。

加えて今回は、王都内のならず者たちを集めて周囲を固めているので うかつに近づけない。


ウィリアムは もともと少数精鋭の兵と影の者達を駆使して勝ちぬき王座に就いた人間だ。


だから今回も ウィリアムが単身説得に赴き、衆目の注意を集めている間に、カゲ達に攻撃させたかったのだが、あいにく その手は使えないと影の者の(おさ)に反対された。


「だったら拠点にファイヤーボールを打ち込むというのはどうかしら?」

ウィリアム達といっしょに階下の休憩室に移動していたローズが口をはさんだ。


「半端な攻撃で、呪いの反撃を受けては困る」ウィリアム達


「なにもかも全てを蒸発させればいいのでしょう?」ローズ


「できるのか?」ウィリアム


「たぶん」


「多分では困る」


「地下室も含めてすべてを蒸発させたら、大きな穴が地面にあきますが

 それでもかまわなければ」

ティンカー達からの情報で拠点の内部構造を確認したローズは答えた。


「呪いその他 悪しきもの一切合切を含めて あそこに居る者達すべて

 あそこにある物すべてを蒸発させ無害化していただけるのなら助かります」カゲ&影の長

その意見にウィリアムやズームも同調した。



というわけで、ローズは ウィリアムと二人で現場に赴いた。

 ウィリアムは黒い馬にまたがり

 ローズは白馬に乗って、白いローブに身を包んで。


まず最初にウィリアムが、神子の前に投降するようよびかけた。


中からは応答なし


次にローズが、悪しき行ないを改めるようにとよびかけ、このまま人々を傷つけようとする者には鉄槌(てっつい)を下すと告げた。


中からは「やれるならやってみろ」と挑発の声がかえってきた。


そこで ローズは ファイヤーボールを投げた。


悪魔術師達の拠点は 一瞬にして消え失せ、あとにはクレーターが残った。


念のためにローズは浄化魔法を放った。

あたり一帯がキラキラと輝き平地に戻った。


「浄化されたこの地には、病や飢えに苦しむ者・家族を失った者達の苦痛を(やわ)らげる施設を作ろう」

ウィリアム国王が宣言した。


・・・

そののち、王の執務室に戻った一行は、病院・療養施設・福祉施設を合体した救貧院計画をローズに見せた。

 建設の時 何か手伝ってもらえることはないかと。


 ローズは 土魔法を使って建物を作っても大丈夫かとティンカーにこっそりと尋ねた。

 (君の魔力と 僕たち妖精の力とは別物だから気にしなくていいよ)

ティンカー達妖精は答えた。


そこでローズは病院の建物を建てることにした。

さらに 救貧院だけでなく、安価良品市・安心産科助産院・効果ありあり値ごろ薬局も併設して

庶民から親しまれる場所にしてはどうかと提案した。


「差別的な目にさらされやすい弱者のための施設だけを孤立させると、

 そこで働く者達が慢心して不正にそまりやすくなります。

 また施設を必要とする者達を食い物にしようとする悪しき輩が集まり、

 ますます庶民の足が遠のき、腐敗が進行します。


 だから、庶民の日常生活に密着した必要不可欠な 良質な施設を併設することにより、

 質の高い人と物が集まる良質な場所と評価をあげ、

 衆人環視の目が働き、健全かつ親しみのある場所にと育てていくことが大切ではないでしょうか?」



翌日、ウィリアムは、建築家たちとともに現地に行き、地割を行なった。

続いて、エドガーともに到着したローズが、地割に従って病院の建物を建てた。

 土魔法を使って 頑丈かつ燃えにくい壁・床・柱を作ったのだ。


扉など細かい造作は皆で工夫するようにと告げた。


ウィリアムは国王として、神の愛し子であるローズへの感謝を盛大に述べ、病院が完成したら、「神の愛し子記念病院」と名付けることを約束した。


さらに もともとあった救貧院計画を発表するとともに

ローズの発案により、市を建てたり、宿泊可能な助産施設や 薬効の確認された薬を売る店の建築も検討することとなったと告げた。


国王の到着以来、ぞくぞくと詰めかけていた民衆は、

ローズにより建物が出現すると拍手喝采し、

ウィリアム国王により病院の運営が約束されると大喜びした。


そして 今後付属施設を建てる予定の敷地を守るための 柵の設置に協力を申し出た。


市民としても、せっかく浄化された場所が、早い者勝ちとばかりに乱暴者に占拠されたり

はたまた金持ちや貴族に占有されるのはいやだったのだ。


それくらいなら 国王と大魔法使いである神子様に協力して、自分たちのために用意されるらしい施設の建築に協力する方が はるかに良いと思ったのだ。

※ 本日 夜8時に2回目の投稿をします



※ 土日休日は 朝8時 夜8時の2回投稿

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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