神の愛し子
(神の愛し子 1/5)
ウィリアム達は、執務室につながる休憩室で、神子披露をどのような形で行うか討議していた。
執務室よりも休憩室の方が広く、声も外に漏れない仕組みになっていたので、密議には適しているのだ。
「この際、私の権威を確立する形で式典を行いたい」ウィリアム
「その場合、神子様に失態が生じたときには、ローズ様を神子様と認定した国王に非難の矛先が向きます。
それを防ぐためには、生涯 ローズ様を幽閉しなくてはなりません」カゲ
「おとなしく幽閉される人にはみえませんが」エドガー
「やはりここは ローズ様とウィリアム様で協力していただき、
国王は神子の降臨に感謝し
神子は 国王を支持し祝福するという形にするのが望ましいかと」ズーム
「あれは、私が保護するこどもだ!
あれは 素直に私の言葉に従っておればよいのだ!」ウィリアム
突然、ウィリアムの髪がひっぱられたり、逆だったりしはじめた。
「どういうことだ!?」ウィリアム
カゲはため息をつきながら言った。
「ローズ様の所に行って お尋ねしてはどうでしょうか?」
・・
一同は 5階のローズの居室にあるDKへと移動した。
移動に当たっては、まずエドガーがローズに先ぶれし、
そのあと、残りの者達がぞろぞろと内階段を上がって行った。
(この人 ひどいんだよ)
ティンカーは早速ローズに告げ口をした。
ローズは、妖精たちに髪を引っ張られているウィリアムを見ながら尋ねた。
「私が 素直にあなたの言葉に従うだけの存在であれと、あなたが言ったって本当?」
「国王の上に立つ者の存在を許すわけにはいかん!」ウィリアム
「しかし 国王と神子が対等であっても良いのではなくて?」ローズ
「そんなこと 認められるか!」
とたんに ピュッピュッと四方から水がウィリアムめがけて飛んできた。
「子供じみた真似ははやめろ!」ウィリアム
「あら 私はまだ なにもしてませんわ」ローズ
妖精たちはウィリアムを取り囲んで、ポケットの中のハンカチや飴玉を引っ張り出したり、髪をひっぱって結んでみたり、水をかけたりやりたい放題だ。
「恐れながら伺います。
神子様は 妖精達と契約を結ばれたのですか?」
カゲが丁寧な口調で質問した。
「この国では 妖精との契約がありきたりなの?」ローズ
「ごくまれに そのような力を持つ方が存在すると言われております。
古には 契約した妖精や精霊の力により、魔術師長・国王・法王になった者も」
「俺は そのようなたわごと認めない!」ウィリアムはカゲの言葉を遮った。
とたんに一斉に水攻撃がはじまり、ウィリアムはびしょぬれだ。
「魔法は 妖精や精霊の加護がなければ使えないのかしら?」ローズ
「必ずしも そうとはかぎりません。
妖精や精霊の力を搾り取って使うのが魔術であり、
世俗ではそれが魔法と呼ばれております」カゲ
「魔法とは 本来 精霊の加護を受けて使うものだ」ウィリアム
(でも ローズは僕と契約を結ぶ前から魔法が使えたよね)
ティンカーがこっそりとローズにささやいた。
「妖精を使役するには、妖精との契約が必要だと言われています」カゲ
「でも 私は妖精を使役していないわ」
「私たちとは異なり 自由に妖精や精霊達と交流したり魔法を使えるのが
神の愛し子であると言われております。
それゆえ 神の愛し子を呼び寄せようと召喚魔法を研究する不届き者集団が発生し
神の愛し子を呼べずとも、様々な存在を呼び出したあげく、
己に都合よく使えるものだけを神子と称して祭り上げる輩が横行している現状に
私は断固として抗議する者であります!」カゲがきっぱりと言った。
「ローズ様は 神の愛し子でいらっしゃいますか?」ズーム
(ここは 正直に魔法を使えることを言った方がいいよ)ティンカー
ローズは、ウィリアム・ズーム・カゲ・エドガーの心を探った。
敵意は感じなかったが、何もよめなかった。
「私が 神の愛し子かどうかは知りません。
でも 魔法は使えます。」ローズ
「これまでに見せた以外にも使えるのか?
攻撃魔法を使ってみろ」ウィリアム
「いいのですか? ほんとに使っても」ローズ
「かまわん やれ」ウィリアム
「それでは お言葉に甘えて。
でも 後から文句は言わないでください。
そして ちゃんと私を対等の存在として認めてください」
ローズは 軽く 電流をウィリアムの足元に放った。
びしょ濡れのウィリアムの体を電気が走った。
ビリビリっ!
やけどはしなかったが、一瞬 全身がしびれた。
呼吸がとまりかけたが、ローズが風魔法を使って背中をたたいたので息をふきかえした。
「これが お前の全力か? それとも手加減をしたのか?」
かすれた声でウィリアムは言った。
「手加減したに決まってるでしょう。
どっか 痛いところとか、感覚のないところがありませんか?
念のために裸になって全身 傷ややけどがないか おつきの方に調べてもらった方がいいと思います。」
ローズは気遣うように言った。
「念のために服を乾かしておきますね」
ローズは 心の中で服や髪が乾くようにと念じた。
全身が乾いたのを感じたウィリアムはその場で服を脱ぎ始めたが
「セクハラ!」とローズに叫ばれ、
エドガーに引っ張られて、中廊下に出て服を脱ぎ、側近たちに全身を確認してもらった。
その間に ローズは 紅茶を入れて一服した。
相変わらず 時を選ばず男達が押しかけてくるなぁ
しかも どんどん人数が増えてる
寝室以外は プライバシー皆無だなとぼやきながら・・・
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