ローズとエドガー
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ウィリアムが イライラと出ていくのを見送ったローズとエドガーは
そのまま 第一応接室のソファに座り込んだ。
「なんか いろいろ迷惑かけちゃってるわね」ローズ
「これも仕事のうちですから。
ローズ様こそ 突然召喚されて たいへんだったでしょう」エドガー
「うん。
さすがに 誘拐監禁無期懲役はきついわ。
引っ張り出されたポイントにどんぴしゃりで送り返してもらわないと 失踪中どこ行ってた?とか問い詰められるのはわかってるし
異世界にワープしてましたって言っても信じてもらえないのは明白だし。
変な時間軸に放り出されたなら すっごく困るし。
召喚って ちゃんと送り返すことまで考えてやってるの?」
「いや 送り返したという話は聞いたことないです。
だからエドガー様は 異世界召喚を反対してらしたんですよ。
拉致と同じだと言って。」
「えっ そうなの?」
「おや ご存じなかったのですか?」
「えーと 魔物退治をしろとか
神官側と国王側のどっちにつくか選べとか
ウィリアムの立場が不安定だから誰にもわたさんとか
そんなようなことは聞かされましたけど
神子召喚にウィリアムが反対していたなんてちっとも知りません。
召喚された私が気が付いた時には ウィリアムは私をつかんで覗き込んでましたからね」
「それでは なぜウィリアム様につくことに決めたのですか?」
「神官のメサイアに選ばれて私の侍女になったと自称する女が不愉快極まりない存在だったから。
しかも ウィリアムは 自称侍女の後にくっついて入室してきて、
女を殴って気絶させて、
私も殴って気絶させてから運び出そうとしたので、
殴られるのが嫌で殴られないためについてきただけよ。
その気になれば 彼を刺し殺す隙はあったのだけど、
王様殺しても逃げ切る自信がなかったから 連れられてきただけ。」
「お願いです! ウィリアム様を傷つけないでください。
そのかわり 私エドガーの一命をとしても、ローズ様をお守りいたします。
たとえウィリアム様であろうと
ローズ様を傷つけたり無体を働こうとしたときには御止めいたします。」
エドガーは ローズの足元にひれ伏した。
「あのねえ ウィリアムが私を傷つけようとしたときに
あなたウィリアムを切り殺して私を連れて逃げる覚悟はあるの?」
「私が命をかけてウィリアム様に縋り付いて御止めしている間に
ローズ様はお逃げください」エドガー
「それじゃあ 全然役にたってない。
この状況で どうやって逃げろというの?
私一人で逃げ延びて生き延びられると思う?」ローズ
「だからこそ ウィリアム様を信じて ウィリアム様に守られていてくださいませ」エドガー
「それって あなたの立場からすると最上の状況よね」
ローズはうんざりとした顔で言った。
「あの 今の話 ウィリアム様に伝えてきます。
ウィリアム様ご自身の行動で ローズ様の信頼を勝ち取られますようにと奏上いたします。
ついでに 夕食の素材も仕入れてきますので
夕食 何を召し上がりたいですか?」エドガー
「ここは 肉と魚 どちらが手に入りやすいの?」ローズ
「肉です。牛・羊・鶏なら手に入ります。」
「じゃあ 炒め物に向いた肉と野菜と芋をお願いします。
あと調味料や香辛料もあれば 適当に私好みの味付けにするわ。
こちらでは 主食はなんなの?」
「米・麦 いろいろありまして、パンやパスタ・小麦粉もご用意できます」
「卵は?」
「鶏・うずら・カモの卵があります。」
「ハム・ソーセージなど肉の加工品は?」
「あります」
「乳製品は?ミルクとかも?」
「いずれもございます」
「だったら 明日の朝は パンと野菜と卵料理と肉の加工品または乳製品にして。
今夜の主食は米を炊飯してほしいのだけど こちらはそういう調理法ある?」
「炊飯したコメ、つまり白飯ですか?」
「そうです」
「できますよ。」
「じゃ 白飯はあなたが作ってね。炒め物は私が作る」
「申し訳ありません。当地では炒める調理法は一般的ではないので
どのような肉や野菜を用意すればよいのでしょうか?」エドガー
「じゃあ 肉・野菜・芋を上手に組み合わせた料理を出して。
調理法は任せる
味付けは・・濃すぎるのはいや 辛いのも塩気が強いのもだめ。
それと 風呂の蓋が欲しい。
メモ用紙と筆記具も」ローズ
「風呂の蓋とメモ用紙と筆記具ですか?」
「そうよ 今 言っといたほうがいいかと思って。」
「メモ用紙は何に使われるのですか?」
「伝えたいことが浮かんだ時に 忘れないようにメモして後でまとめてあなたに渡すとか。伝言を残すとか」
「かしこまりました」エドガー
エドガーの困惑した顔を見てローズは言った。
「できる範囲でよろしく。
それと むやみに期待させてそれを裏切ったり、
やってやるからと細かく説明させて ただの情報集めに利用するのはやめてよね」
「けっしてそのようなつもりは」エドガー
「そちらの情報をなにもあたえず お望みの物をと言われても
こちらの希望がうけいれられない・実現しないなら 話すだけ無駄よ。
そちらが 手札をさらして 現物並べて 私が欲しいものを選ばせたり
私が希望したものをすんなり持ってくるんでなければ、
お望みどおりになるわけないじゃない」ローズ
「申し訳ありません」エドガーはしょんぼりした。
「そっちから話をふってきて、会話が自分の思い通りに流れなかったので自分は傷つきましたって顔されたら
私が ただのわがまま・いじめっこみたいじゃない。
異文化交流で 一番卑怯なのは、自分のやり方を押し通しているくせに
相手の希望をしゃべらせるだけしゃべらせてから、それをすんなり認めず
自分たちが傷ついた~被害者だ~って主張することよ。
ウィリアムの良い所は 被害者ずらしないところだと思う。
だから あなたもご自分の務めを果たされますように。
貴方の立場でできる範囲でのお気遣いは ありがたく受け取っておきます。」
ローズは軽く会釈をして席をたった。
エドガーはがっくりと気落ちしたが とりあえず ウィリアムの元に報告に行った。
報告内容を ウィリアムの執務室で一緒に聞いていたズームからエドガーは叱られた。
「そういう時は ローズ様の要望にそった食材集めや調理法についてはコックに相談すればいいんだよ。
お前だって 何から何まで 自分の欲しいものを事細かに無知な人間に説明するよう求められたらうんざりするだろうが!」と。
一方 ウィリアムは 信頼できる調理人はと考えてウマイイ選んだ。
(それにしても 俺はまだ ローズの頭の中で拉致監禁犯のままだったのか、
ショックだ!)ウィリアム
一方ローズの回りに集まっていた妖精たちは 互いに協力して
エドガー・ウィリアムや彼らの接する人々に関する情報を集めて回っていた。
ズームやカゲに気づかれないように注意を払いながら こそ~っと。
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