八つ当たり
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「ところで 警備という観点からすると、エドガーやズームが宿直室に詰めている必要が本当にあるのですか?
転移や盗聴・覗き対策になるのですか?
物理攻撃に対しては 二つの階段の下で登ってくる人間を阻止していればよいのでは?」
ローズは思い切って質問した。
「なにかあった時に ベルの知らせですぐ駆けつけるためには 宿直室に詰める必要があるのだが。
その二人が あなたに迷惑や不快感を与えたのか?」ウィリアム
「いいえ。
エドガーがとても気を使ってくれているのはわかります。
しかし 私は監視されることに慣れてません。
だれにもじゃまされず 不意の訪問者にもわずらわされず 一人でくつろぐ時間が必要なのです。
ここに来てまだ 2日ですが、常に見張られ不意の訪問に悩まされ、気の休まる時がない」ローズ
「十分に休息の時間は与えていると思うが」ウィリアム
「陛下 発言をお許しください」エドガー
「なんだ」ウィリアム
「兵士や城づとめでない庶民は 仕事が終われば自由です。
ご令嬢もまた 召使をベルで呼び出すことはあっても、突然の訪問にさらされることはありません。
ローズ様は このフロアに入ってから しばしば陛下が予告なく訪れたり
急な連絡が次々と入るので疲れておいでなのです。
今はまだ 仕方がないとしても、できれば 陛下とローズ様の打ち合わせは夕食を共に過ごされるとか
時間を決めて行なってはいかがでしょうか?」エドガー
「フム・・・ローズ嬢、明日の朝7時に 30分ほどこちらのキッチンでともに朝食をとることをお許しいただけますかな?
その時に わかっている予定をお知らせするということで。」ウィリアム
「今から明日の朝7時まで 5階で 私一人で過ごすことを保障していただけるのなら」ローズ
「申し訳ないが エドガーには宿直室か第一応接室で過ごしてもらわなくてはならん。
エドガー!宿直室で寝るときはドアを開けて ベルの音がしたらただちに起きるのだ!」
「はっ」エドガーが敬礼した。
ローズは エドガーに申し訳ないと思ったが、ズームに近づかれると 非常に「見張られている」感がして嫌なので ウィリアムの決定を受け入れた。
ウィリアムの探るような眼を感じてローズは正直に話すことにした。
「エドガーごめんなさい。
ズームが近づくと まるで見張られている・視られている感じがして神経がいら立つの。
だから あなたには24時間連続勤務になって申し訳ないけど よろしくお願いします。
実のところ 真夜中になにかあれば ベルであなたを起こすより、
内階段をかけおりて ウィリアムを叩き起こした方が早い気がするのだけど」
ウィリアムは呆れた顔をしていった。
「ズームは 探索の名人なのだ。
常に 護衛対象とその周囲の気配を探っている。
それを感じてあなたがいら立つというのならしかたがない。
真夜中になにかあれば、休憩室に居る私の寝こみを襲いに来るがいい。
あなたは 階段側にも鍵を取り付け私が内階段を使用するのを阻むおつもりのようだが
私は休憩室側からは鍵をかけないと約束するよ。」
ローズがうんざりした顔をするのを見て ウイリアムはそれ以上いじわるを言うのをやめた。
本当は 朝食のためにキッチンへあがれるように また夜間非常時に備えて内階段の鍵を外せと言いたかったのだが。
さらに
「エドガー おまえは 宿直室の中で眠る時にドアを閉めてよし!」と言葉を足すと
ローズがほっとした顔をするのを見て、げっそりとした。
絶対に 俺よりもエドガーの方が ローズから信頼され気に入られていると感じて。
なので休憩室に引き上げてから、ズーム相手に盛大に八つ当たりすることにした。
「お前の気配察知が ローズにきづかれ ただでさえ 気難しい女性が完全にへそをまげてしまって手がつけられない!」と。
そして カゲにも 一言いうことにした。
「ローズは 神聖文字が読める。神子を侮るな!」
ズームは静かに答えた。
「やっと ローズ様を淑女とお認めになられてうれしゅうございます」
「神子とは聞いておりませんでした。
魔法に目覚めた庶民を導けとしか伺っておりません。
神子様と知らされておれば もっと違う扱いをしましたものを」カゲ
ウィリアムは ドンと扉を蹴って 「もう寝る!」と宣言して・・
諸事伝達を済ませてから 休憩室に閉じこもった。
(おれだったら 24時間警備してもらえて 子ども扱いしてもらるなら
もっと単純に喜んで 気楽に遊びまわるのに。
なんであいつは あんなにピリピリして なんでも自分でやろうとするのやら)