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チート姫  作者: 木苺
     王宮到着・妖精との出会い♬
22/70

情報交換

(9/11)

「失礼します」

入口で一声かけてDKに入り ウィリアムとはす向かいになる位置に座った。


エドガーは席を立ちながら「お茶は何にしましょう」と尋ねた。


「ローズが望むものを」ウィリアム


「緑茶でお願いします」ローズ


エドガーはコンロで湯を沸かし、茶を入れた。


湯呑を手にウィリアムは尋ねた。

「いったい 何があった?」


「といいますと?」ローズ


「カゲを休憩室に転移させたのはおまえか?」ウィリアム


「はい」


「なぜだ。

 魔力の暴発か?

 会話の途中で人を放り出すなど失礼だとカゲは怒っているが」


「人を(あなど)る無礼な言いようにカチンときたのです」ローズ


「エドガーによると キッチンの壁から耳のようなものが生えたそうだが あれは偶然か?意図してやったのか?」ウィリアム


「なぜ そのようなことを尋ねるのです」ローズ


「なぜなら 魔力の暴発は危険だからだ。あなたにとっても」ウィリアム


ローズはじっとウィリアムの目を見た。

 彼が心底ローズの身を案じているのが分かった。


 (なぜ このような質問を?)

 (『壁から耳』は今まで見たことのない魔法だからさ)

かすかな声が聞こえた

 (転移や結界は?)

 (何十人もの魔術師が命がけで協同して行う大魔法だ)


自分を見つめたまま じっと考え込んでいるローズに、ウィリアムは声をかけた。

できるだけ優しく聞こえるようにと気を使いながら。

「怖がらなくても良い。

 しかし転移は 多大な魔力を使う大魔法だ。

 それが無意識に発動するようでは命に関わる。

 意図して行なう場合も、しっかりと学んだうえで慎重に使わなければならない」


「一つ伺いますが、エドガーは どのようにして湯を沸かしたのですか?」ローズ


「コンロを使いました」エドガー


「魔法・魔力・魔術といったものを使わなかったのですか?」ローズ


「私は杖を使えないので、コンロと言う道具で火を起こして湯を沸かしました」エドガー


「台所の蛇口や浴室のカランから出るのは水だけですか?」ローズ


「そうです」エドガー


「カランからは湯は出ない?」ローズ


「魔法使いなら 杖を使って、カランから出る水を温めることができるかもしれません。

 しかし それには多大な魔力が必要ですから、そういう危険なことはしません。


 杖から出す水の量や湯の量も個人差があります。

 魔法使いは皆 最初は杖から水や湯を出す練習をして、

 少しでも多くの水を出そうと努力するのだと聞いています」

エドガーが丁寧に説明した。


ローズはエドガ―の頭の中を覗き込んだが、

絵本の中の魔法使いが杖から水を噴き出している絵しか見えなかった。


「神子のお披露目式では どれくらい出せば合格なのですか?」ローズ


「お披露目式では 杖からパッと光を出すくらいでもよいのだが

 神子としては 菜園に水を撒くことができるくらいの方が喜ばれる。

 実のところ 今現在 名実ともに水魔法使いである者は一人しかおらん。

 俺も コップに半分くらいなら水は出せるが水魔法使いとは名乗ってはいない。」


そういって ウィリアムは ローブの内側から短い杖を取り出し

湯呑に水を注いで見せた。

「飲んでみろ。きれいな水だぞ」


ローズは 湯呑に注がれていた水を鑑定して言った。

「人の使った食器の共有はしません。

 それが蒸留水であり、ごくごく微量の魔力回復効果があることはわかりました。

 ウィリアム殿はお疲れのようなので ご自分で出した水を飲んで

 そこに放出されたご自分の魔力を取り戻すことをお勧めします」


「お前 鑑定魔法が使えるのか? いつからだ!?」ウィリアム


「お前と呼ばないでください。

 魔法が使えるようになったのは こちらに来てからです。」


ウィリアムは ぐいと湯呑の中の水を飲み干した。


「魔法・魔術・魔力関係の本を読ませてください」ローズ


「読み書きができるのか?」ウィリアム


「元居た世界ではできて当たり前です。

 隣の部屋にあるハーブ類のラベルは全部読めましたけどね。」ローズ


「あれは 神聖文字だぞ!

 カゲは お前がラベルに目もくれず 適当に瓶の蓋を開けて

 ハーブパックの中身を選んだとひどく怒っていた」ウィリアム


「ローズの名称を含んだラベルが5つあったので、呼称と実態が 私のいた世界と異なる可能性も考えて 蓋を取って中の香りを確かめたのです。

 ラベルそのものは一目で読めましたから。

 その時の気分にあった名称の瓶を選んだのが カゲ殿にはお気に召せなかったのですか」ローズ


「ほかに読める文字の種類は?」ウィリアム


「そんなの こちらの書物を見せてもらわなくては 読めるか否かわからないでしょ。

 歴代の神子はどうだったのですか?」ローズ


「そのあたりのことは 不明だ」ウィリアム


「そもそも 書物は それぞれの専門家や所有者が定めた閲覧基準をクリアしなくては見せてもらえないのだ」ウィリアム


「なんですか それ?」ローズ


「火魔法の本を読みたければ 火の魔法を使って見せろとか。


 もちろん 王の権限で見せられるものはあるが

 できれば 神子としてそれなりの実績なり信頼なりを築いてもらわないと・・」ウィリアム


「火の魔法ねぇ」ローズは 掌の上にファイヤーボールを浮かべて見せた。


ウィリアムとエドガーの驚愕ぶりを見てすぐに消した。


「水」ウォーターボールを浮かべてから 消した。


「これからは 人前では杖を使ってほしい。

 さもないと大騒ぎになる」ウィリアム


「わかりました。 じゃ 先ほどのは見なかったことにしてください」

そう言ってローズは杖を取り出し、

まっすぐに立てた杖の上に火をともして見せた。


「持続時間はどれくらいがよろしいですか?」


「もう消していいぞ。具体的なことは式典の打ち合わせの時に決めよう。

 水についても 今は出さずともよい。

 ただ ここに来てから出した水の総量だけ教えてくれ」


「午前中に、カランをひねって出てくる水を湯にかえて、バスタブを満たしました。

 その残り湯を 先ほど温めなおしました。

 杖から出した湯の量は ほんの少しです。」


「エドガー! 報告は!」ウィリアムは大声を出した。


「エドガーがいないとき入浴したし、そのあともキッチンよりこっちには彼が来ないように命じていたので エドガーは知らなかったのではないかしら?」


「入浴されたことは知りませんでした。

 バスタオルなどの話は 使用前の確認のお話だったのかと」

エドガーはウィリアムの前で頭を垂れた。


「じゃあ 普通入浴はどうするの?」ローズ


「キッチンの大鍋で沸かした湯を運ぶのだ」ウィリアム


「えっ? でもバスタブにカランがついていたじゃない」ローズ


「あれは 俺が水で体を洗うために取り付けさせたのだ」ウィリアム


「えっ あなた ここの風呂場を使っていたの?」ローズ


「ああ もともとここは私の居室だったと言っただろ」


「じゃあ これからどうするの?」


「そのことについては お披露目会が終わった後、浴室のドアを新たに廊下側から(はい)れるように付け足すなどして 俺も使えるようにしてほしいとあなたに交渉するつもりでいたのだ。

 その あなたが散歩に出る時間に俺が浴室を使うとか」

あきらめの心境でウィリアムは言った。

 またもや怒鳴りだすんだろうなぁと思いながら。


「はぁ~~~~~」

「なんで 最初から女性専用部屋がないのよ~」ローズはつっぷした。


「内戦のあとだから仕方がないのだ。許せ」ウィリアム


実際ウィリアムの頭の中で 警備上のあれこれで渦巻いているのが見えたので ローズは何も言えなかった。


(もう! 私に手を出してこなければいいわ!

 でも 耐えがたい状況!!)

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