謀議
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ローズがお昼寝している間に、エドガーとウィリアムは ウィリアムの執務室にて密議を開いた。
もちろん 4階から5階に上がる階段は通行止めでズームが階段登り口に座り込んでいる。
「くそう トイレはこのフロアのものを使い、ベッドと洗面も執務室の隣の休憩室を使えば何とかなると思ったが、風呂を使えぬのはきつい」
ウィリアム
「いっそ 浴室の扉をつけかえましょうか」エドガー
「扉二つにしたらどうだ?
もともとあの扉は俺がつけかえたのだから」
「ああ そうでしたね。非常時には寝室に閉じこもることができるようにと
廊下側にあった扉を寝室側につけかえたんでした。」エドガー
「まったく ナインペタンのこどものくせに 貞操観念だけは大人なみとはどういうことだ?
15にならねば婚約すらできぬというのに
まだこどものくせに いっちょこまえに淑女扱いを要求するとは」ウィリアム
「失礼ですが ローズ様はすでにそれくらいの年齢なのでは?」エドガー
「あれは 絶対にまだ12歳以下のこどもだ!」ウィリアム
「何を根拠にそのようなことを」エドガー
「俺は あいつを担いで運んだのだぞ。
うそだというなら 肌にぴったり張り付くシャツでも着せて見てみろ
あれなら少年でも通るまな板だ」
さすがに裸身を見たと言ったら差しさわりがあると思い 言い方を工夫してみたウィリアム。
「しかし 女の子の場合は 物心ついたころから貞操についての心がけは必要ですから
年齢とは関係なくローズ様のおっしゃることは尊重しなくてはならないと思います」
「だからめんどうなのだ。
あー はやく私のモノになればいいのに」ウィリアム
「政治的に囲い込みたい事情は理解しておりますが
女性の意に反するふるまいはおやめください!」エドガー
「わかっておるわ! だからこうして手間暇かけておる。
だいたい あの娘は『なにかあれば自害する!』だからな。
実戦経験はなさそうだが、一刀必殺の心構えだけは持っているようだから
おまえも あの娘を精神的に追い詰めないように気をつけろ。
一度 人を傷つけることを覚えたら 容赦なく切り捨てご免に走りそうな危うさを感じる。」
「たった二日の間で そこまでお判りになりましたか。
それにしても 異世界人とは 厄介なものでございますね」エドガー
「まったくだ。
そこがまた蠱惑の女性と言われる由縁でもあろうが」ウィリアム
「魔性とか蠱惑というほど育っては居ない感じがしますが・・」エドガー
「ええい こまかい!
だから あれは12の子供ということにしておけ!
蠱惑の女も魔性の女も 魅了の少女・少女の魅惑からはじまるのだから
人畜無害の子供が一番だ!」ウィリアム
「なるほど。
ならば 最初からそうおっしゃればよろしいのです。
胸のあるなしに言及しては いつそれを見たのかとまた新たな問題が発生しますから」エドガー
「ならば そこは聞かなかったことにしろ!」ウィリアム
(実のところ俺は 眠ろうとするとあの真っ白な肌とほのかなふくらみがちらついて困っているというのに。筋肉質の男の胸より小さいのにこどもの胸とは明らかに違う。女性の胸と言うのは あのようにして育っていくのか? えーい人の気も知らないで、こいつは!! あれはこどもだ!子供以外の何物でもない!!私は何も見なかった!!)ウィリアムは心の中で叫んだ。
実のところ ウィリアムは諸般の事情で同年齢の女子と関わることなく育ったので
恋愛はおろか、女性との付き合いそのものの経験が限りなくゼロに近いのである。
「とにかく あの娘が 俺のことを兄かなにか人畜無害な家族のようにでも思って
5階の寝室以外の場所を共同スペースとして使うことを受け入れてくれないと
やりにくくてかなわん。
クローゼットの服なども 今は私のマジックバックと侍女室につっこんであるというのに」ウィリアム
「そのあたり ざっくばらんに話せばわかってくれそうな気もしますけどね。
というか それくらい受け入れられるくらいの信頼関係を築いてくださいよ」エドガー
「まったくだ。
さしあたっては 神子様のお披露目式を無事に済ますことを第一に考えよう。
『召喚された神子様は まだお子様であるゆえ 私が保護者として引き取る』と
皆に認めさせぬことには、外に出すことも、人に会わせることもできん!」ウィリアム
※ 月~金は 朝7時の1回投稿です




