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チート姫  作者: 木苺
     王宮到着・妖精との出会い♬
16/70

内鍵とズームとベル (居室見取り図あり)

(3/11)

ウイリアムが出て行き、エドガ―とともに部屋に取り残された。


階段フロア(=踊り場)につながる扉は内・外どちらからも鍵がかかるようになっていた。


とりあえず 毛皮のコートを脱ぎ棄て、一人がけソファの上に置いた。


二人掛けのソファに腰を下ろしてエドガーに声をかけた。


「この建物内の警備はどうなっているの?

 この部屋の鍵は?」


「1階が警備詰め所です。

 3階まで各階に詰め所がありますが、1階には警備員の休憩室もあります。

 1階から3階までは事務室もあります。

 4階にはウィリアム王に許された直属の者しか入ることが許されていません。

 5階はこれまで ウィリアム王と私しか入ることが許されていませんでした。」

エドガーが直立不動で答えた。


「あなたは 護衛として信頼されているの?

 それとも侍従として信頼されているの?」


「まだ そのどちらになるのか正式には決まっていません。

 今の私の身分と状態は ウィリアム様がおっしゃったとおりなのです。


 ですから お部屋の案内でも 御身回おみまわりのお手伝いでも なんでもお申し付けください。


 部屋の鍵は・・目下もっかの所 私が持っております。

そのう ローズ様がおひとりでお部屋の外に出ることはありませんので」

エドガーが申し訳なさそうに言った。


「わかりました。

 つまり 私の自由は 陛下の休憩室とこの部屋の中にしかないということですね。」


「もちろん お外に出られたいときには おっしゃっていただければ そのように手配いたします」エドガー


「じゃあ せめて あなたがこの部屋を出るときには 必ず私に声をかけて頂戴ちょうだい

 そして このフロアまで来る人は 今のところはあなたとウィリアムに限って。

 ウィリアムが私に紹介しなかった者は 誰一人ここには来させないようにして頂戴!」


「かしこまりました。

 そのように王に伝えます。

 実際ウイリアム様も そのようにお考えだったと思います」


「それと 外から開けることのできない内カギを取りつけて頂戴」


「それは すでについております。

 姫様から要望されるまでは その存在を黙っているようにと言われておりましたが」


そう言ってエドガーは 階段ホールに続くドアの隠し内鍵うちかぎの存在を示した。


さらにフロア全体の各室の案内をしたあと、内階段につながる扉の隠し内鍵を見せた。


内階段室は、寝室と書斎の間 その両室へと通り抜け可能なウォークインクローゼットの中にあり

内階段室のドアは、フロア中央の廊下に面していた。


内階段のドアにつけられた隠し内鍵を前に 微妙な顔をするローズを見てエドガー言った。


「このフロアは もともと王と王妃またはそれに準じる方のための部屋なのです。


 ウィリアム王は独身で女っ気ナシで、合理的な方なので

 移動時間の短縮と護衛の数を減らせるように

 塔の中に執務室と居室を置き、新たに隠し内鍵を取り付けたのです。

 ウィリアム王の腹心以外で この隠し内鍵の存在を知らせたのはローズ様お一人と存じます」


「念のために伺いますが このフロアにある浴室やキッチンもウィリアムと共有なのですか?」

ローズはこわごわ尋ねた。


「その件については まだ 伺っておりません。

 しかし 王はもともと食事らしいお食事もとらずに働かれておりますし

 ローズ様が浴室をお使いになる時には 内階段に中から鍵をかけ、それでも心配なら

 扉の階段側に 入室不可の張り紙をしておけば 王も緊急時以外は立ち入ってこられないかと存じます」


ローズは(かた)い表情で言った。

「内階段の扉には常に「入室不可」の掲示をし、隠し内鍵を掛けます。

 

 ウィリアム殿が利用される階段は 外階段に限っていただきたい。

 このフロアへの立ち入りも 第一応接室までにしていただきたい。


 そもそも女性の居室に男性が立ち入るなど考えられない。

 まして 出入り自由など 私に死ねというのと同じです!」


「ローズ様のご要望はすべてウィリアム王に伝えます。

 ただ警備上の観点から申し上げますと

 ウィリアム王には こちらの風呂とトイレ・洗面をお使い頂くことが非常に望ましいのですが」エドガー


「浴室もトイレも洗面も 寝室の一部であって独立していないのに 無理です!

 私を娼婦扱いするな!」

ローズは怒鳴った。


「決してそのような。

 私の考えが至りませず 申し訳ありませんでした」

エドガーは 深々と頭を下げた。


しばらく エドガ―をにらみつけていたローズだが 気を取り直して言葉を足すことにした。


「寝室はもちろん風呂・トイレ・洗面所は 男専用・女専用と場所が完全に独立して異なるのが当たり前の世界から来ましたので 共用なんてありえません!

 たとえ女性がいないときでも 女性の使う風呂やトイレ・更衣室・寝室に入ってくる男は すべて犯罪者です!


 たとえ異世界に来たとしても この習慣を変えるわけにはいきません。


 さらに食事の場所に関しても 男性が集まるところ 女性が集まるところ 性別の区別なく使える所と

 (おのず)と利用者層が別れ 暗黙の了解として成り立っていました。」


「そのことも きちんとウィリアム王に申し伝えます。

 ローズ様にとって ありえないほど非常識なことを申して まことに申し訳ございませんでした」

エドガーは 再度 腰を折った。


「ご理解いただければ結構です」

ローズは軽くうなづき、頭を下げ続けるエドガーに頭を上げるように促した。



室内の見回りを終えて応接室に戻ったら、扉をノックする音が聞こえた。


挿絵(By みてみん)


エドガーがローズの許可を得て扉を開けるとと、ウィリアムが岡持ちを持った男を連れて入ってきた。


「護衛兼連絡係のズームだ。

 護衛はエドガーとズームが交代で行う。

 表だった警護と 侍女が来るまでの世話係はエドガーが主に行う。

 ズームは陰からの警護と諸連絡係を主とする。

 この階の宿直室は主にエドガーの待機場所とするが

 彼がこのフロアを出るときにはズームが宿直室に待機することになるのは許してほしい」


ウィリアムの紹介により ズームは軽く目礼して、

だまって 岡持ちを応接セットのテーブルに置き、王の後ろに下がった。


「中には 朝食代わりの蒸し饅頭が入っている。

 ひと風呂浴びてから食事にするなら このまま蓋をしておけばよい

 1時間くらいならば 保温が利くから」

ウィリアムは そう言って、ズームを連れて部屋から出て行った。


二人を見送り ローズは しっかりと内鍵をかけた。

そして 向き直って言った。

「ズームがどんな人からわかるまでは、この第一応接室より中には入ってきてほしくないわ」


「そのように王とズームには伝えておきます。

 私に 用がある時には 各部屋に備え付けのベルを鳴らしてください。

 私は ふだんこの第一応接室で待機しておりますから、

このフロア内のどこでベルを鳴らしても聞こえます」


エドガーは さきほど部屋を案内して回った時に、

ローズが各部屋のベルを鳴らして その音色の違いを確かめていたほほえましい光景を思い出しながら言った。


「ねえ どんなふうに聞こえるか知りたいから

 あなたがそれぞれの部屋で鳴らして来てくれる?

 私は ここに座って 確かめるから。

 念のために ベルを鳴らす前後に声をかけてね」


「かしこまりました。」

エドガーは一礼して 各部屋で 部屋の名前を告げながらベルを鳴らした。


ローズはエドガーがDKへ移動すると扉をきっちりと閉めていたので、多分声は聞こえないだろうと思ったが、それでも(あるじ)(ローズ)の要望にはきちんと応えたのだ。


「どうでした?」エドガーは第一応接室に戻って尋ねた。


「ベルの音は聞こえた。少し違いがあったような感じもしたけど

どれがどれだかわからなかった。

 声はぜんぜん聞こえなかったわ」


「盗聴防止のために そのように作られているのです。」エドガー


「でも だったら 侵入者があっても すぐにはわからないわ。

 それに 部屋でなにかあっても ベルがなければ通じないのね」


「侍女室と真ん中の廊下に居るときは 各部屋の音や声が聞こえるようになっています。

 だからこそ 侍女選びが難航しているのです。

 目にしたこと耳にしたことを決して漏らさぬ侍女を見つけるのがたいへんで。


 そもそも ウィリアム様は これまで侍女をお使いになっていなかったのです。」


「侍女と護衛の役割分担が明確なのね。

 なのに その両方をこなさなければいけないあなたは大変ね」

ローズは申し訳なく思った。


「こちらこそ ご不便をおかけして申し訳ありません」

エドガーは頭を下げた。


ローズは 言いにくそうに口をきった。

「それでは 私は浴室を使います。」


「かしこまりました。 どうぞごゆっくりなさってください。


 用がある時は いつでも気軽によんでください。

 特に私を必要となさらないときは いちいち行動を報告されなくても大丈夫ですよ。

 少なくともこのフロアに居る間は。」エドガ―


「それは助かります」


「差し支えなければ 先ほどのローズ様のご要望をウィリアム王に伝えに行きたいと思うのですが

 お一人にしても 大丈夫でしょうか?」

エドガーは 控えめに尋ねた。


「はい」

ローズは軽くうなづいき、エドガーを部屋の外に送り出し、しっかりと隠し内鍵もかけた。

いっそドアチェーンもつけて欲しいと思った。


階段を下りながら、ローズのことをかわいい人だなぁとエドガーは思った。

そして 用心深いところが ウィリアムに似ているとも思った。

 そもそも 腰に大小を差したまま違和感なく動き回るなど武芸者のようだ。

 そのわりに 激怒した時も 刀に手をやらないのが不思議だった。

※ 土日休日は 朝8時 夜8時の2回投稿

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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