ローズの立場
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「ここが 俺とおまえの部屋だ」ウィリアムはそう言いたかったが
部下の前でびんたが飛んできては面目が立たぬと考えて
「ここが おまえの部屋だ」と言うことにした。
ローズは 素早く部屋の中を見て取ると
ウィリアムの後について入ってきた若者に目を向けた。
「これは 衛視見習いのエドガーだ。夜間は侍従の代わりに俺の身の回りの世話をさせている。
当面 お前の侍女の手配ができるまで、エドガーが お前の世話のすべてと護衛を担当する。」
「エドガーと申します。
よろしくお願いします」
青年は 胸に手をあて 片足をひいてお辞儀をした。
「ローズです。
これからお世話になります」
まっすぐ立ったまま 軽く会釈を返した。
「警備上の観点からすれば おまえは俺と同じフロアで過ごしてもらった方が安心なのだ。
しかし 何かと不都合があろうかと思い、階をわけた。
ここは5階。
もともとは俺の私室だったがあまり使っていなかったので、お前が使っても差支えはないだろう。
4階には執務室の隣を俺の休憩室とする。
そこと5階の寝室とは直通階段でつながっているので
お前は自由に私の休憩室までは降りてきてよい」
ウィリアムのことばで ローズは固まった。
「私は子供をどうこうする趣味はない。
ただ 話し相手が欲しくなった時には、侍従を通さず自由に話に来てくれてよいという意味だ。」
ウィリアムは あわてて言葉を足した。
(この分では5階のキッチンと浴室も共有だとは とても言えないな。
まあ いい 2・3日の間ならなんとかなるだろう)
「陛下は 私はいくつだとお思いのなのですか?」ローズ
「12・3歳の子供ではないか?」
「そう見えますか?」
「うむ こちらとしても おまえがまだ子供であった方が都合がよいのだ」
「つまり?」
「こちらでは 15歳で婚姻可能年齢となるからな。
そして 神子を妻にして権威を得ようとする男は多い。
だからこそ 国王としては おまえを手放すわけにはいかないのだ。
教会勢力の手ごまとして どこぞの男と婚約を決められても困るし、野心家の妻にされても困る。
だからこそ おまえには、王家の姫として 王が保護する子どもとして しばらくおとなしくしていただきたい。
その代償として できるだけ おまえの望みをかなえるように
快適にこの国で過ごしていただけるように手は尽くす」
「わかりました。
とりあえずの 私の望みは 風呂と食事と睡眠です。
手を出されるのも 命じられるのも お前呼ばわりされるのもいやです。
人に煩わされず 脅かされず 休息をとりたい」
「その望みをかなえよう。
とりあえずは エドガーがあなたの護衛兼侍女だ。
そのほかの世話係がそろうまでは 私とエドガーの護衛で我慢してほしい。」
「よろしくお願いします」
ローズは軽く一礼した。
ローズの厳しい目線に追い立てられるような気もちで ウィリアムは部屋を出た。
(なんだよ、急にしがみついてきたと思ったら
今度は高飛車に!)
階段の踊り場につながる扉の外で中の様子をうかがっていたズームに 室内の監視=ローズの動向をうかがうように命じて
ウィリアムは4階の執務室に向かった。
※ 本日 夜8時に2回目の投稿をします




