到着
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肌を刺すような冷たさに目が覚めた。
あたりは ほの明るい。
座席に座りなおした。
太陽はどこだろう? ローズはきょろきょろと首を動かした。
「起きたか?」ウィリアム
「はい」
「茶が入っている。新しい水筒だ。水筒からじか飲みで申し訳ないが」
ウィリアムから 平たい水筒を手渡された。
「ありがとうございます。」
本体と鎖でつながっている水筒の蓋を外し、そっと飲み口に唇をあてた。
ぬるめの甘い紅茶だった。
ほっとする。 ありがたくいただき、キャップを閉め、
先ほど ウィリアムから借りたハンカチの端で口を拭いた。
真っ白で 王冠の縫い取りが隅にあった。
さすが王族。
「城まであと少しだ。
なにか 食べるか?」ウィリアム
「まだ 大丈夫です」
「そうか。 念のために これをもっておけ。
中の携帯食料は自由に食べてよいし そのほかの物も好きに使え。」
そう言って ウィリアムは ポシェットを押し付けてよこした。
ローズは落とさないようにそれを首にかけ、中を確かめた。
薄焼き菓子があった。
小瓶の蓋をあけると 消毒薬の臭いがした。
三角布と蝋マッチも入っていた。
一種の救急袋のようだが ろうそくは入ってなかった。
毛皮の外套についていたフードをかぶりなおして、薄焼き菓子を1枚食べ
甘い紅茶をもう一度飲んだ。
・・
二輪車は 人影のない町を走り抜け 大きな城門の前についた。
ウィリアムが 手を上げ一声かけると、門が開いた。
ウィリアムの合図で、二輪車が行く先々の門が開いていく。
やがて、大きな建物の前で二輪車は止まった。
箱型の塔のようだ。
ウィリアムは ローズを抱えて飛び降りた。
なにしろ高速2輪車にはステップがなく、
ローズとしても 裾の長いロープで乗り降りするのは 練習なしでは転びそうな気がしたので、
おとなしく ウィリアムの首に腕を回してつかまった。
腕を回した時 ウィリアムは一瞬 体を固くした。
あわてて ウィリアムとの間を隙間を作ろうと、少しだけ腕と体を離したら
「しっかりとつかまっていろ」と逆に抱き寄せられた><
なんなのよ、そんなに抑え込まれたら苦しいじゃないかあ!
おもわず 彼の背中を軽くたたいて「きつい 締め付けが苦しい」と告げたら
不機嫌な顔をされた><
ウィリアムは 迎えの者たちに次々と指示を飛ばしながら
そのままローズを抱えて階段を昇って行った。
5階まで上って、ホールにおろされたローズは
そのまま ウィリアムに手を取られて、部屋の中に案内された。




