乗り換え
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ウィリアムはうとうとしていた。
娘の声で目を覚ますと、外の空気を吸いたいという。
御者席に移りたいというが 御者席の状態をわかって言ってるのだろうか?
しかし 青白い顔で脂汗まで浮かべて座っている姿を見ては・・
正直 ここまでひどく酔っている人間は 初めて見た。
馬車に乗ったのことがないのだろうか?
それとも 揺れのない高級な車にしか乗ったことがないのだろうか?
だとしたら 相当なお姫様育ちだが・・・
幸いにも 駅馬停にはすぐについた。
馬車が止まると 娘はぱっちりと目をあけて期待のこもったまなざしを向けてきた。
「トイレ休憩だ。
今準備するから 少しこのまま待っておれ」
娘は絶望の色をうかべたが
「あと少し我慢してくれ」そう言い置いて馬車を下りた。
部下に命じて 貴賓用トイレと快速二輪車の用意を命じた。
それから ローズを抱き上げ、毛皮をかぶせて貴賓用トイレに連れて行った。
貴賓用トイレというのは 要は移動式簡易トイレと水桶を置いた 床のきれいな部屋である。
一般のトイレは床に溝を掘った程度なので、服の裾が汚れてしまう。
だから貴族・神職階級以上のものが早馬を使う時には
貴賓用トイレを用意することになっている。
ローズをトイレ室におろし、使い方を説明すると
彼女は 水筒を置いて行けという。
なんでも 生水でうがいをしたくないからだそうだ。
まったく! かなりのお姫様育ちのようだ。
タオルも要求された。
とりあえず ハンカチを渡しておいた。
私は部屋の外で毛皮をもって立ち番だ。
部下に命じて 新しいタオルと追加の水筒をもってこさせた。
扉をたたいて タオルを渡したいと言ったら、感謝の言葉とともに受け取ってもらえた。
口は悪いが 立ち居振る舞いからは 育ちの良さがうかがえる。
変な娘だ。
※ 本日 夜8時に2回目の投稿をします