あゆみより
(3/6)
「ご馳走様」
娘は菓子と茶を頂いた後 両手をあわせて軽く頭を下げた。
「それはどういう意味だ?」ウィリアム
「といいますと?」
「今 手をあわせて頭をさげただろ?」
「習慣です。食べ終わった後の。」
「その心は?」
「食べられることに感謝して。
天の恵み・地の恵み、そして食材を用意して運んで調理してくださった方々への感謝
その他もろもろへの感謝を込めて です」
「あなたもまた 神職にあったのか?」
「いえ ごく普通の庶民です。
私がいた世界では 庶民しかいません。
中には 神学を学ぶ人もいますが その人もまた庶民です」
「王は?」
「いません」
「ならば 政治は誰が行うのだ?」
「皆が話し合って決めます。
ちなみに 私の国のことわざに、政治の話は飯をまずくする、とか
ところ変われば品変わる ということばがあります。
だから こことは無関係な異世界、つまり私の国の政治の話をするのはやめませんか?」
「慎重だな」
一息置いてウイリアムは言葉をつづけた。
「ところで あなたの名前はなんという?」
「ローズとでも呼んでください」
「つまり 本名は明かさぬと?」
「そういう習慣です」
「そうか」
「申し訳ありませんが 少し疲れました。
このまま休ませてください」
「馬車を止めるわけにはいかぬのだ」
「わかっています。だからこのまま居眠りします」
思わず「男と二人きりだぞ」といいそうになったウィリアムだが
またもや女が大騒ぎしだすと困ると思い「好きにしろ」とだけ言った。
一方ローズも 妙なことを言われてなくてほっとした。
馬車酔いとでもいうのだろうか さきほどからムカムカして気持ち悪くて
しゃべる気力がつきていたのである。
※ 本日 夜8時に2回目の投稿をします




