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清掃


 登録は滞りなく進み、僕らは新しくCランクパーティとして仕事をすることになった。

 パーティーランクはパーティ内のランクの平均で決まるわけではなく、合計の評価を規定と参照する。

 だから、僕とレアの二人がパーティーを組んでもBランクパーティになるわけでは無いのだ。


 「活動は明日からで良いんだよね?」


 「ええ。今から行くと……流石に遅くなりすぎちゃうから」


 確かに既に日は傾いているし、そろそろ夜の帳が下りる。


 「じゃあ僕は適当に下水道の掃除でもしてくるよ」


 依頼には常駐の物もいくつかあり、そのうちの一つが清掃系だ。

 報酬は少ないが、僕なら比較的すぐに終わらせられるし、実績の評価が多くもらえる。

 Aランクになったパーティーに常駐依頼を受けたことのない人は居ないと言われているほど。


 (運動にもなるしね)


 「もう、明日からって言ってるのに……」


 「あ、そうだ。本気でAランクを目指す訳なんだし、流石に二人だと辛い。適当に勧誘しておいてよ」


 そう言い残して、さっさとギルドを出る。

 レアは見る目もあるし、きっと良い人を見つけてくれるだろう。

 因みに、ミュイラとトーチはノベクが入れたのだ。レアは反対していた。


 「え?いや、ちょっと!」


 「よろしく!」







 「こんばんは、お疲れ様です」


 今日の依頼が出されていた場所にたどり着いた僕は、入り口の警備員の人に挨拶をする。

 20代くらいの、真面目そうな男性だ。


 「ん?清掃の冒険者か?」


 「はい」


 そう言いながら、ギルドで発行されているカードを見せる。

 稀に魔物が入り込んだりするため、警備員が常に常駐しているのだ。

 他にも、違法な取引なんかをさせない為でもあるらしいが……そちらはよくわからない。


 「そうか、助かるよ。中にもう一人いるからそっちに色々聞いてくれ」


 「はい」


 中は狭く、そこまで酷くはないがツンとした臭いがする。


 (どこだ……?)


 「〈光球〉」


 光の魔法を浮かし、周囲を照らす。

 この魔法は簡単な物だが、浮かせるのがかなり難しい。練習中、どれだけ飛ばしてしまったことか。

 今回の場合、周囲を照らすことよりも自分がここにいると伝えるための側面が強いが。


 (暗いところを動くだけなら夜目で良いしね……)


 そのまま進んでいくと、ランタンを持った40代くらいの男性警備員の人を見つけた。


 「こんばんは、お疲れ様です」


 「ん?……おお、お疲れ。清掃かい?」


 「はい」


 「じゃあ……これを使いなさい」


 そう言って、モップを渡される。


 「有り難うございます」


 「よろしくね。右の方はまだ全然進んでないからそっちを頼むよ」


 「了解です」


 軽く言葉を交わし、二股に別れた通路を右に進む。


 「〈剛力〉〈探知〉……よし、やるか」


 探知に24体の魔物が引っかかった。

 そこそこ遠いが、先に討伐した方がいいだろう。


 モップを一度しまい、魔物の方にはしる。

 余り血をばら撒かない為、剣ではなく魔法で行こうと思う。



 (この辺……)


 探知によると、この辺りなのだが。

 上にも下にも魔物は見えない。


 「……水の中、か?」


 その場で跳躍し、光球を水の中に落とす。


 「〈浮遊〉〈透視〉」


 (うわぁ……)


 そこにいたのは、蛭……の、魔物。

 見た目は気持ち悪いと言う他ない。体を大きくして、まだら模様の赤と黒の皮に、魔物全般の目と同じ色の点がついている様な感じだ。

 太っているのがいくつかいて、鼠の魔物と同程度の大きさ。

 そのせいで、魔鼠だと勘違いした。


 「……どうしよう」


 今までで何回か清掃の依頼は受けているが、蛭と遭遇した事は一度もなかったのだが。

 後でギルドに報告するのは確実として、どうすればいいのかがわからない。それでも、色々試すしかないか。


 (……あんまり、周りを汚したくないんだけどな)


 「……仕方ない。〈蒼焔〉〈浮遊〉」


 まずは、通常の蛭と同様に乾燥させてみることにした。

 浮遊で浮かせ、火で炙る。


 (……ダメっぽいかな)


 既に大分乾燥しているはずだが、いまだにウネウネと動いている。気持ち悪い。

 乾燥させる事に意味がないだけではなく、火関連の効果が薄い可能性が高そうだ。


 (内側から攻めるか……)


 「〈風切〉」


 口の部分をこちらに向け、そこに風魔法を送り込む。

 内臓をズタズタにすれば、流石に死んでくれると思うのだが。


 「……お、よかった。ちゃんと死んでくれた」


 動かなくなった蛭を見て、少し安心する。

 これなら、なんとかなりそうだ。


 (……蛭って、買取してたっけ……?……いやまぁ、結局持って帰るし聞けばいいか)






 「よし、これで最後」


 魔鼠を凍らせ、そのまま切る。


 あの蛭を殺し切った後、更に奥にも魔物がいた為、その処理に来たのだ。

 魔物の処理がやっと終わった為、今から清掃に入る。

 と言っても、小まめに掃除されているし、故意に汚す人がいる訳でもないため、濡らしたモップで擦れば綺麗になる程度の汚れだ。


 「〈水纏〉」


 モップを取り出し、綺麗な水で濡らす。

 上の方から下に擦って行き、汚れを落としていく。

 しっかり力を込める必要があり、トレーニングにもなる。

 他の人は助かるし、この制度は素晴らしいと思う。


 (冒険者は身体が資本だからね)





 「終わり!〈消臭〉」


 汚れを落としきり、ついでに匂いも消しておく。


 (帰るか)


 「お疲れ様です。これお返ししますね」


 「おう、お疲れ様。ありがとな。……あぁ、そうだ。これ持ってきな」


 警備員の男性に感謝されつつ、渡されたものを持って外に出る。


 「終わりました」


 「おぉ、お疲れ様。気を付けて帰れよ」


 「はい」


 軽く言葉を交わし、ギルドの方向に歩く。

 警備員の男性にもらったのは、依頼達成の証明書と飴だ。

 サボっておきながらやったと虚偽報告した人がいたらしく、証明書があって初めて報酬がもらえる様になったらしい。


 (飴は……好意なんだろうけど)


 子供でもないし、なんだかなぁ……と言う感じだ。


 「まぁ、ありがたく食べるけどさ」






 「はい、お疲れ様でした」


 マイラさんに証明書を出し、報酬を貰う。


 「あ、そうだ。僕が初めて見ただけなのかもしれないんですが、下水道に蛭の魔物がいました」


 そう言って、蛭の魔物と魔鼠の死骸を取り出す。


 「え?……下水道に、ですか?」


 「はい」


 そういうと、マイラさんは考え込む様に視線を下げる。


 「……そう、ですか……ご報告、有り難うございます。死骸はこちらで買い取らせていただきますね」


 「お願いします」


 結局、死骸と依頼達成の報酬合わせて銀貨1枚と銅貨4枚になった。


 「……もしかすると、何かの前兆の可能性があるのでお気を付けてくださいね」


 「わかりました。それでは」


 「はい!また明日!」




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