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いかに早く、楽に、安全に殺せるか


 「〈探知〉」


 紅蓮の剣の面々と共に森に入り、魔法を使う。

 魔力が放射状に広がり、僕に情報を伝えてくれる。


 〈探知〉は魔力をばら撒き、跳ね返りや魔力の反応で地形や生物の数、状態なんかを調べる魔法だ。

 難易度も高いし疲れるし頭が痛くなるし魔力消費も高いしで、使う人はほとんど居ない。便利だし、有用だからもっと使う人が多くても良いと思うんだけどね。


 「すげー、詠唱短縮初めて見た」


 「いえ、それよりも探知自体が貴重です」


 「両方凄いわよ。流石ね……」


 「っと、よし。大体分かったよ。魔猪はこっち。大体200mくらいかな」


 そう言って、東の方に進む。


 「え?」


 「おいリーシェ、早く行こうぜ」


 「あ、はい、今行きます」


 足を止めていたリーシェに、グレンが声をかけている。


 (こういう気配りが出来るのはいいな)


 単独行動しないと言うのは、生存の観点から見て重要だ。




 そのまま進んでいくと、お目当ての魔獣に出会えた。

 と言っても、相手はこちらに気付いていないが。


 5m程の大きさで、黒い体毛を持つ、赤目の猪。

 魔獣や魔物と動物の違いは、目が赤いか否かで決まる。


 「じゃあ、まずは戦いを見せてね。大丈夫、危ないと判断したらすぐに助けに入るから」


 「わかりました、見ててください。よし、いくぞ」


 「「「「おお!」」」」


 掛け声を合わせ、近付いて行く。

 移動は慎重にしているし、全員周囲の警戒も出来ている。

 目標に集中する余り他の魔物に遅れをとるなんてこともあるのだ。その点、しっかりと周囲の警戒を怠っていないのは素晴らしいと思う。


 「赤く燃え盛る炎よ、球体を形作りかの敵に飛来せよ〈炎弾〉」


 初撃を放ったのはアリア。

 射線上に木がなく、且つ目標が木の近くから離れたところを狙えている。


 また、ジウは既に能力強化を掛けきり、準備は万端といった感じだ。

 距離を取れているのも素晴らしい。


 接敵する前にアリアは3回、ジウは2回攻撃出来て居た。


 「らァッ」


 グレンが横からしっかりと剣で切り裂き、エントルが正面から盾で魔猪の動きを抑えている。

 リーシェは時折味方の魔法が当たってしまっていたり、暴れる魔猪に巻き込まれてダメージを負っているエントルやグレンに治癒を掛けているし、それぞれがしっかりと役割をこなせていると思う。


 (これなら、全然大丈夫そうだね)




 何時でも助けに入れる様に魔法の準備はしていたが、何事もなく討伐出来ていた。

 魔法を解除し、後ろからそっと近付く。


 「お疲れ様」


 「わっ!?」


 そっと手を置いて声を掛けると、ジウが声をあげる。


 「ソラさん!どうでしたか!?」


 その声で皆が気が付き、グレンが真っ先に駆け寄ってきた。


 「うん、なかなか良かったよ。皆がそれぞれ自分の役割をこなせてたし。もしかして誰かに教えてもらったことある?」


 そう聞くと、エントルが答えてくれる。


 「はい、グレンの両親が元衛兵でして」


 (なるほどね)


 「うん、じゃあ、ちょっとだけダメ出しをするね。まず、グレンとエントルはもう少しダメージを受けない戦い方をした方がいいかな。グレンの場合だと味方の後衛の攻撃をもっとみるとか」


 「成程……確かに見れてなかったかもしれません!」


 「エントルはずっと張り付いてるんじゃなく、ヘイトを買いつつも避けていいところは避けた方がいいかな、あんまり攻撃もらいすぎると痛いしリーシェとジウの魔力が尽きちゃうからね」


 見ていた感じ、ある程度は慣れているのだろうが、痛みと言うのは動きを阻害する要因になる。

 受けずに切り抜けられるのなら、それに越した事は無い。


 「……わかりました」


 そういうと、素直に頷く。


 「次は……戦闘中、もっとアイテムは使おう。攻撃を受けないってのとも関係するけど、アイテムは出し惜しみしない方がいいよ」


 アイテムの出し惜しみで死んだりしたら本末転倒だし、時間や労力もより掛かる。

 時と場合と相手にもよるけど、駆け出しの時はどんどん使っても良いと僕としては思う。

 それに、市販のアイテムは作成者の人達の好意で比較的安めに設定されている。死んでしまったら戦力的にも経済的にもマイナスしかないから。


 「冒険者ってのは……あぁ、これはあくまで僕の考えなんだけど、いかに早く、楽に、安全に殺せるかが大事だから」


 そういうと、グレンがふと思い出した様に口を開く。


 「あれ?でも、ソラさんって3人で飛龍とギリギリの戦いをしたことがあるって聞いたことがあるんですけど……」


 「あー、あれね。僕は戦う気無かったんだよ……」


 依頼で幻想峡谷に向かった時に対峙したのだが、飛龍に他の冒険者が襲われていた為やむなく戦っただけで、本来であれば刺激せずに戦う気もなかった。


 「でも、倒したんですよね?」


 「まぁね、本当に死にかけたよ。だから、尚更無理は禁物」


 あの時はアイテムも魔力も全力で使って、死に物狂いで何とか討伐した。

 それでBランクに上がったんだけどね。


 「はーい」


 「話を戻すけど、後もう一つ言いたいことがあって。倒した後ね。もっと警戒した方がいいよ」


 衛兵であれば戦闘が起きたとしても門付近だろうし、視界に入った敵で全部だと思っても問題はない。

 ただ、冒険者であれば周りは安全を保障されていないのだ。


 「……ぁ、確かに……ソラさんが敵だったら、って考えると……」


 と、ジウが呟く。


 「うん。今回は僕もいたってことで気が緩んでた部分もあるかもしれないけど、本当に気をつけてね。……それじゃ、帰ろうか。魔猪の死体はちゃんと持ちなよ」


 因みに、魔術収納は持っているらしい。

 道中、リーシェが餞別として教会から貰ったと、グレンが嬉しそうに言っていた。


 「はい!勉強になります!」


 「まぁ、ここまで偉そうに色々言ったけど、結局人には向き不向きがあるから、死なない程度に色々試してみて。僕のはあくまで参考程度にね」




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