表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第003話 敵は本能寺にあり! 弐之巻

【簡易説明】

河童:青、緑系統の色素持ち

 ……有り得ない。えぇ、有り得ないわ。

本能寺陥落? ふふっ……、そんなわけ無いじゃない。

化生如きの本能寺、何するものぞ!

あんなもの、飾りよ! 助兵衛(すけべえ)には、それが分らないのよ!


 南蛮渡来の巨乳なんてねぇ!? 日之本の品乳に比べたら、駄乳以下の何物でも無いのよ!

あんな重り、体力を無駄に削るだけですし?

重心だって、不安定になるし?

面積も多めになるし?

はっきり言って、斬り合いの邪魔なのよ!

分かるかしら? 戦闘では、些細な物事が勝敗を分けるのよ!

重心の不安定化! 的の肥大化! 回避行動の遅延化! 痛覚の鈍化!


 そして何より、四十八手! ……四十八手!

慎ましいからこそ、技術力の向上に繋がるのよ!

『取り敢えず、色々挟めばいいでしょ?』とか何とか考えてる内は、技術力の向上なんて望めるはずも無いでしょ!

取り敢えず、挟むだけ? そんなもん! (ちち)さえありゃ、誰でも出来んのよ!!

誰にも真似できないことをする! だからこその四十八手よ!


「お父ちゃん? あの人、何を話して──」

「お前には、まだ早い! 本当に、早いから!」


 ……ぜぇ、……ぜぇ。……はぁ、……はぁ。

はっ!? 信長様!? 信長様は、どうなされたの!?


「化生と言うなら、そちらもデース! イエローならぬ、ゴールデンモンキー?」

「ご、ごおるでん? 渡来語で御座いますですか?」

「秀吉、黄金色の猿と言うことだ。……それと、言葉遣い」


 黄金、黄金ねぇ。言われてみれば、確かにそうよねぇ。

猿子の髪色、黄金に近い茶髪なのよね。まるで、日輪そのもの。

渡来人の血でも、混じってるのかしら?


「これは、茶髪でありまする!」

「フ~ン? そう言うことに、しておきマ~ス!」

「……こほん! ああ、その何だ? 良く見たら、変わった着物であるな? 秀吉なら、似合うのではないか?」

「……えっ!? そそそ、その様なことは決して!!」


 さ~る~こぉ~? その場所、代わりなさいよ!

信長様の寵愛を受けるのは、この(わたくし)以外に考えられないでしょ!?


「……でだ? その着物は、何と言うのだ? 渡来物であろう?」

「フッフッフッ! 良くぞ、聞いてくれましたネー! これぞ、当店一押し! 南蛮渡来の『メイド服』デース!」

「……『冥土服』!? やはり、化生の類!?」


 ……『冥土服』!? やはり、化生の類!?

逃げて、信長様!? 超、逃げて!


「落ち着くのだ、二人共。女中のことを渡来語で『めいど』と言うのだ」

「な、なるほど。渡来語で御座いましたか」


 流石(さすが)、信長様。あれはつまり、割烹着(かっぽうぎ)のような物なのね。

よく見たら、形状も似てるし。ひらひらして、可愛らしいわね。


 ……あら、何かしら? 何かを見落としているような?


「お猿サン? 良かったら、レンタルするデスカー?」

「いや、その必要はない。そうであろう、フランソワ?」

「流石、フール殿! 分かってますネー!」

「いやいや、貴様ほどでは無かろうかよ!」


『ハハハハハハッ!』


 おのれ、化生めぇ! 信長様に、色目を使いおってからに!

あの駄乳こそ、本能寺の極み! 即ち、敵は本能寺にあり!

その穢れた本能寺を抉り取ってやるわ!


 ──ミシミシッ! ベキキッ!


「あのぅ、お姫様(ひいさま)? それ以上なさいますと、柱が壊れて──」


 後で、弁償するわ! 分かったら退きなさい、小娘! あいつ、抉れない!


 ……えっ!? 今、信長様と目が合った!?

いえいえ、そんなはず無いわ! 私の変装は完璧なはず!

こちらには、南蛮渡来の『さんぐらす』があるのですから!


 あ、あら? 嘘でしょ? ひょっとして、見破られてる?

……念の(ため)、静かにしましょうか。


「どう言うことですか? 信長様?」

「……ふっ。聞いて驚け! 見て驚け!」

「何と、なーんと!? この長屋には!!」

「南蛮渡来の茶屋以外にも!」

「様々な問屋が、軒を連ねているのデース!」


 この河童、調子に乗りよってからに……。

信長様と息ぴったりとか……、お光だけに許された特権でしょうに!!

猿子は、何してるのよ!? 呆けてる場合じゃないでしょ!?


「流石、信長様。この秀吉、感服致しました」

「ふっ……。そうであろう、そうであろう」

「フッ……。そうでしょうとも、そうでしょうともデスネー!」


 …………けっ。河童の癖に、またしても調子に乗りおってからにぃ!


 あら、いけない。大和撫子にあるまじき醜態でしたわ、おほほ!

隠密任務、隠密任務♪


「と言うわけで、注文を頼む」

「了解したデース! こちらが、御品書きデース! 懐で温めておきました、フール殿!」


 今、何処から取り出したのかしら?

見間違いでなければ、胸の中から取り出したように見えたのだけれど?


 …………ちっ。妖怪牛女めぇ。

これだから、南蛮渡来の駄乳製品はっ。


「いや、待て。何故、それを知っている?」

「ただの流行りデース! 気にしたら、負けデース!」

「そうか、そうであるか。では、こちらの『今日の御勧め』とやらを頼む。お主はどうする、秀吉?」

「では、信長様と同じものを御願い致しまする!」


 せっかくだから、わたくしも何か頼もうかしら?

そこの小娘。……何故、逃げる? いいから、来なさい。

うふふ、何処へ行こうと言うのかしら?

魔王の右腕からは、逃げられないわよ?

さぁ、その御品書きを寄越しなさいな? ……さぁ……さぁ……さぁ。


「フール殿! ご注文の品を御持ちしたデース! 『今日の御勧め』は、頭に『あ』の付く……」

「ほほう? さては、餡蜜であるな?」

「餡蜜!? それなら、秀吉も大好物です!!」


 餡蜜……、信長様と一緒。私も、同じ物を頼──


「南蛮渡来の『アームストロング砲』で御座いますデ~ス!」


「『あ』しか、合っとらんでは無いか!?」

「『あ』しか、合って御座らんですよ!?」

「『あ』しか、合ってないじゃないの!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ