プロローグ
荒れ果てた大地。崩れ落ちた塔。死体の山。血の池。
ただ見た全ての景色が、そんな色だった。
体はボロボロで、手の平の感覚もわからない。漂う臭いも吐き気がする。耳に入る音もなぜか静かだ。眼に映る物のピントも定まらず、口の中は何か鉄の味がする。
そうだ。俺は今、死の間際なんだ。そんな淡々とした答えが頭をよぎる。
「もう終わりか…?そんなもんかぁ勇者様よぉ……!!」
目の前にいる相手が剣を振りかざしてくる。自ずと俺もそれを防ごうと剣を構える。
あぁ……いつからだろう。こんな時が来ると思った日は。お前と相対する時が来ると思った日は。
あぁ……いつからだろう。こんなにお前が憎いと思った日は。こんなにお前がこの世から消えてしまえと思った日は。
時は204年。とある異世界から二つの強大な魔力が消えた。
異世界は新たな光を取り戻しつつある中、ただ二つの蟠りは消えないままだった。
その想いは異世界を舞い、はるか遠くの果てに。
異世界の人々はこの長い歴史に幕を下ろした、とある二人の歴史書を書き上げた。その名を…。
「勇者と魔王」と。
二つの光はただ彷徨う。はるか遠くを。
そんな二つの光はとある青い星に辿り着く。壮大な宇宙の中にあるちっぽけな星に。
その二つの光は同じことを想い続けた。とある命に宿るまでに…。
「「こいつだけは俺の手で倒す。」」
二つの光はやがて一つの光に変わり、一つの命に宿りく。
そしてその命はやがて、幾つもの命を背負う勇者になる。