NTRとパンツと初揉み
「あれ、音無が起きてる」
輪廻と一緒に第二科学室に戻ると、神代さんに膝枕されていたはずの音無が椅子に座って上体を起こしていた。
とはいえ、机に突っ伏しているので、意識が覚醒しているわけではないようだ。
そしてその隣に座っている神代さんが、何故か頭を抱えている。
「神代さん、どうしたの?」
俺の問いに答えたのは当人ではなく、相変わらず机に座って脚をブラブラさせている短冊ちゃんだった。
「うん、音無ちゃんがね、どうやら神代ちゃんじゃあ寝心地が良くなかったみたいで、『つくえのほうがまし』って」
「ああ、それで落ち込んでるのか」
結構繊細なメンタルをしてるんだな。
「私が…………天海さんに負けるなんて……。そんなことあっていいはずが……。これがNTRというものですか……」
「雰囲気は近いけど、意味は全然違うんだよなぁ。ていうか風紀委員の人が下ネタとかどうなの? それは短冊ちゃんの専売特許だからさ」
「いや別に私、下ネタを専門に扱ってるわけじゃないんですけど……」
短冊ちゃんが抗議の目を向けてくる。いやいや、抗議したいのはむしろ、こっちの方なんだよ。
「あ、そうだ短冊ちゃん、ちょっと俺の前に立ってくれない?」
「へ? なんでですか? 先輩、まさかおっぱい揉むつもりじゃないですよね?」
「揉まねえよ。ていうか無い乳が揉めるか」
「はあ!? いやいやいや! ありますからね、おっぱい。これでも私Dカップなんですよ!?」
と、自分の胸を両手で持ち上げて熱弁しているけれども。
「いや、男の俺にブラのカップ数言われてサイズが分かるかよ。それこそ揉ませてでもくれないと」
「ん、まあ確かに……じゃあ、揉みます? って! 揉ませるわけないでしょ!」
ちっ、引っ掛からなかったか。頭悪そうな癖に小賢しいな。
「はあ……先輩。童貞過ぎて女の子のおっぱいに興味があるのは分かりますけど、そういう姑息な手段を使うのは普通に引きますよ? いえ、悲痛に引きますよ?」
童貞過ぎるってなんだよ。あと俺の童貞に心を痛めるんじゃない。
「まあ確かに、男らしくはなかったな。じゃあ短冊ちゃん、ここは潔く、おっぱいを揉ませてください!」
「いや、揉ませませんから」
頭まで下げたというのに、物凄い蔑んだ目で見られている。酷い後輩だ。
「はあ、まったく、先輩って本当になんというか、格好良くないですよね。外見は可もなく不可もなくって感じなのに」
うん、外見すら褒められていないな。
「そんなに私のおっぱいが揉みたいんだったら、早く私のパンツを見つけてくれませんかねー」
「え?」
「え?」
短冊ちゃんの言葉に俺がキョトンとすると、そんな俺に対して短冊ちゃんもキョトンとした。
「パンツ、見つけたらおっぱい揉ませてくれんの?」
「え、あ、いや……」
短冊ちゃんは、ばつが悪そうに視線をさまよわせた。
しかし俺は、ちゃんとこの耳で聞いた。
「短冊ちゃんに二言はねえよな? パンツを見つけたら、おっぱいを揉んでいいんだな?」
「う……ま、まあ! い、いいですよ! もし先輩が本当に、私のパンツを見つけられたらね!」
『短冊ちゃんに二言はない』、などという言葉は生まれて初めて使ったが、どうやら効果覿面だったらしい。
これだから短冊ちゃんは単純で助かるぜ。
「よし分かった。なら短冊ちゃん、やっぱり俺の前まで来てくれ」
「な、なんでですか?」
「パンツの在り処について、ちょっと思い付いたことがあったんだ。けどそれは大声では言えないから、耳打ちで」
「うぇ……は、恥ずかしいことですか?」
「聞いたら分かるって。ほら、おいで」
俺が手招きすると、訝しい表情をしながらも話の内容が気になるのか、テーブルから降りるとゆっくりと俺に近付いてくる。
「はい来ました!」
半ばヤケクソ気味のアイドルである。
目の前に立ったそんな彼女の耳に俺は口を近付け。
「あのな、実はお前のパンツ……」
他の人に聞こえないように、音無ボリュームで話す。
短冊ちゃんが話に集中しているのを確認して、俺は短冊ちゃんの身体の背後にと手を回す。
そして、
「ここにあったんだ」
そう口にするのと同時に、短冊ちゃんのスカートを思いっきり捲り上げた。
時間が停まったような感覚。
短冊ちゃんの肩越しに、俺にもハッキリとパステルピンクのパンツが見てとれる。
やっぱり、短冊ちゃんはしっかりとパンツを穿いていた。
「い、いゃああああああっ!」
その絶叫と共に、俺は短冊ちゃんに突き飛ばされた。
「な、なな、な! 何をするんですかこの変輩!」
変態と先輩が混ざってるのかもしれない、その言葉を放った短冊ちゃんの顔は真赤になっていた。
痴女系アイドル、どうした。
「何って、お前のパンツを見つけてやったんだろうが。あ、そうだ、約束約束」
俺はそう言いながら再び短冊ちゃんに近寄ると、おもむろに短冊ちゃんのおっぱいを鷲掴みにした。
「おお、確かに中々でけーな。ブレザー越しでもちゃんとした弾力が――」
そこまでしか言わなかったのではなく、言えなかった。
気付けばなんか甲高い音が部屋に響いて、俺の顔が強制的に右を向いて、そしてその後で、ヒリヒリとした痛みが左の頬を襲っていた。




