最初の仕事
いきなり現れたのは白いエプロンをして、どこか輪郭の四角い小母さんだった。
『五月蠅そうな小母さんだな』
『脂肪太りだと、丸くなるけど、筋肉のついた太り方だと四角くなるんだよね』
カラが日本語で呟く。
腕まくりした二の腕を見て、タロも納得する。
「何わけのわからないことを言っているの」
小声で日本語で会話する二人を小母さんは怪訝そうな顔で見る。
「いえ、何でも」
二人は慌てて言語を戻す。
「仮にも、婚姻前の男女、あまりくっつかないように」
小母さんは随分と厳格な規律を持っているようだった。
「タロ、ですね、貴方は男性職員宿舎にそして、カラですか、貴方も女性職員宿舎に入ってもらいます。ですが特例として、個室が与えられます」
この辺りは市街地に近い、そのため地価も結構高めだ。そのため下級職員などは二人部屋以上が普通だ。
「なんといっても男女ですから、二人同室などもってのほかです」
「はあい」
二人は声を合わせて返事をする。
「荷物はそれだけですか?」
二人は当座の着替えを入れた鞄しかもっていなかった。
「それだけです」
「私はウィスラーと申します、職員を統括する立場なので、覚えておくように、何かあった場合は必ず私に連絡をするように」
厳めしくそう言うと、ウィスラー夫人はその場を後にした。
カラは女性職員に、タロは男性職員に連れられて、部屋に案内される。
寝台と机だけある簡素な部屋に通され、鍵を渡される。
合鍵はウィスラー夫人が持っているらしい。
入浴は一番奥の水場でと教えられ、、そして基本的な約束事と周辺の見取り図を記された紙を渡されてからは部屋に取り残された。
「とりあえず、食堂に行こう」
鞄を床において、財布だけ持って、カラは部屋を後にした。
タロも食堂に来ていた。
「カラちゃん、お腹減ったのか」
「それもあるけど、仕事でしょ」
タロは改善版のレシピを作ると約束した。ないを改善しなければならないか、実食してみるしかない。
「ああ、そうだな、しかしカラちゃん、敬語いいよ、タメでしょ」
「前世年齢は違うでしょう」
「ま、そうだけどね」
片や学生、それも高校そして片やそれなりな社会人、おそらく前世込みなら十ほど違うだろうか。
「親御さんは泣いただろうね」
高校生の娘に死なれた親は普通泣く。
「うちの場合ね、単に娘に死なれたのか、それともメダルが取れないまま死なれたのが悲しいのかわかんないですよねえ」
殺伐とした話になりそうなので、話を変えることにした。
食堂は基本、日替わりしかないようだった。
「献立は一つか、A定食とかB定食とかバリエーションがないかね」
日本の食堂と比べるが、献立が一種類しかないほうが調理の手間がかからないのは稲目ない。
「経費節約なんじゃないですか、二つ選べれば余るのも出てきそうですし」
「そりゃそうか」
タロは定食のトレイを手にテーブルに着く。
「感想ある?」
まず、見た目からチェックと、筆記用具を手にしていた。
「野菜の種類が少ないですね、蛋白源も一種類しか使ってないし」
カラが端的に答える。
「じゃ、食べてみますか」
カラの意見をメモしてからタロはフォークを握った。




