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広がる夢

 手足をきつめに縛って練習はそれなりに効いたようだ。

 全員その場に倒れそうになっている。そして周囲は怪訝そうな顔だ。

 当たり前だが、手足を縛っている以外は普段やっている剣術の修練をやっているようにしか見えない。

 そりゃ血管絞めているんだから、疲労物質たまりまくりだろう。

 カラだけがわかっていた。

「それじゃ、ひもをとってね。それとドリンクは一杯ずつだからね」

 コップ一杯のハチミツ水を渡す。以前は果物の汁を混ぜていたが、今回はコストカットのため酢を少し混ぜてあった。

 圧迫されていた手足をほどくとようやく安堵の声が上がる。

「この訓練は週一回になります」

 カラの宣言に周囲が凍り付く。

 食事に関してはタロの進言が利いて、栄養を考えたものを用意されていた。

 モツ煮はミネラルという栄養が取れるというカラとタロの報告書とやはりコストカットという利点があるので、それなりに会議などで議論があったようだが可決されたらしい。

 この世界は魔法という手段で、カラのいた世界でもあったような設備もある。つまり冷蔵庫もあるので、腐りやすいモツも簡単に保存できる。

 いままで田舎で暮らしていたので実感がなかったがほぼカラのいた世界と同じ生活環境を再現できる。

 そして、あちらになくて、こちらにないものも。カラは口に含めば、水中でいつまでも呼吸できる石というものに興味津々になっていた。

 水中ではまんべんなく負荷がかかる、それなら水中で体操でもさせればどれほど筋肉に負荷が欠けられるだろうか。

 プールの水深ってどれくらいあったかな。

 とりあえず、どれだけの水深が用意できるか、もちろん水深が深ければ深いほど強い負荷がかかるのは言うまでもない。

 不穏なものを感じたのか飲み物を飲みながらカラを薄気味悪そうに見ていた。

「じゃ次はスラックラインをやります、バランス感覚を鍛え、インナーマッスルを鍛えましょう」

 そう言ってカラは織りひもが張られた柱を指さす。

「まず、この上に立つことから始めます、そこから歩けるようになってください」

 スラックラインも上級者はそのうえで空中一回転して着地くらいの芸をやることができるのだが、そこまでは期待していない。

 不安定な場所で立つことができればいいのだ。

 結果、メイドさんより素質がなかった。

 どうやら女性のほうが体が柔らかくバランスをとるのにしなやかだったらしい。

「とにかくできるだけ長く立つことを考えてくださいね」

 一応、下に敷物を敷いたのでカラは深く考えなかった。



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