とりあえず負荷
そして、カラの前に立っているのは竜騎兵隊の精鋭十五人。
まじかと思った。
いかにも筋骨隆々で、これ以上鍛える余地があるのかと。
とりあえず、心肺機能の向上を求めて、マスクを用意した。
これは呼吸効率が三分の二くらいに下がるマスク。
とりあえず、試せるものから試してもらうことにした。
疑似的な高地トレーニングだ。竜騎士というなら、ある程度酸素の薄い高度を飛んでいた可能性が高い。たぶん大丈夫だろう。
「まずですが、準備体操として、ラジオ体操を行います」
とりあえず、十分間を空けて、並んでもらう。ラジオ体操は準備運動のためのメソッドがすべて詰め込まれた優秀な体操なのだ。
「それでは腕を上げて背筋の運動」
カラがお手本としてラジオ体操を始める。それにワンテンポ遅れて竜騎兵隊の面々も体操を始めた。
第二までやったが、相手はまるで疲れた様子が見えない。
まあそうだろう、ラジオ体操はあくまで準備体操なのだから。
「やはり体力づくりの基本は走り込みですよね」
いかなるスポーツも走り込みを軽視しない。ないスポーツのほうが少ないくらいだ。
「このマスクをつけてください」
用意しておいたマスクをつけてもらう。前日からが自分で付けて、性能を確認していた。一時間で気分が悪くなった。
これは確実に酸素をちょっとだけシャットアウトしてくれている。
「このまま走り込みお願いします」
ラジオ体操が楽だったので、これも楽だろうと思ったようだ。皆快くマスクをつけてくれる。
そして走り込みが始まった。
走るフォームはそれなりに奇麗だ。やはり毎日の積み重ねがフォームの洗練に役立っているのだろう。
そんなことを考えながら、カラは適当に座ってお茶をすすりつつ、ランニングを見ていた。
そして、ラスト一周を走り終えた後、全員崩れ落ちた。
「これは低酸素状態で、運動することによって、筋肉の負荷をつけるためです」
カラは淡々と説明した。
走り込みが終わって全員四つん這いで荒く息をしている。
不利な状態をあらかじめ作ってトレーニングをすると、それを外した状態ではとても体が軽くなる。
例えば手足に重りをつけたり、その一環と思えば大丈夫だろう。
「本日は、私のトレーニングが終わるまで、それ付けたままでいてくださいね」
カラはにっこりと笑った。
「じゃあ、剣術の修練を始めてください、それをつけたまま」
カラは剣術はわからない、なので、ちょっと負荷をつけた状態でやればそれなりに体力がつくだろうとしか考えていなかった。
血管を占めて血行を悪くして行う訓練もあったなと思う。あれは危険なので一週間に一回ぐらいで。
だんだん周囲の顔色が悪くなってきた。




