秘密の会話
「あれか、炭水化物抜きダイエット」
タロとカラは日本語で会話しているので、内容はほとんど聞き取られていない。
基本的にこの世界の言語でしゃべっているが、時々日本語で会話したくなる。
こんな時は同国人同士でよかったと思う。
「ダイエットじゃなくて、スタミナのためなんだけど」
カラはそう言って首をかしげる。
「カーボローディング」
そう言ってどう説明したものかと悩む。
「わざと炭水化物を欠乏させて、本番にたっぷりと炭水化物を取らせて、スタミナを増やすというのがコンセプトなんだけど、以前は完全に炭水化物を抜いたんだけど、今は半減だけでも十分だって言うのが検証されててね」
「それは何か聞いたことがあるような」
タロがおぼろな記憶を探る。
「本番の朝食は炭水化物をたっぷりとというわけだ」
「とりあえず、麺類でもパンでもご飯でもいいけど」
「麺類かな、スープパスタなんか食べやすそうだ」
「その場合、伸びやすくない?」
麺は茹でたてが命だ。やはりのびたものは美味しくない。
「ああ、それは考えた。実は半分茹でたものを上げてストックしておく方法があるし、あらかじめ水で戻して一分だけ茹でる方法もある」
いまいちそのイメージがつかめなかったのか、カラは怪訝そうな顔をした。
「最悪、インスタント方式もあるしな」
麺を油で揚げたインスタント方式ならスープをかけただけで柔らかくなる。
「フルーツたっぷりはいいのか?」
「それはね、ビタミンCがあることを期待してのことよ」
前世の地球なら、新鮮な果物に、ビタミンCが入っているのは常識であったのだが、この世界でもそうとは限らない。
しかし、たんぱく質を吸収するためにはビタミンCが必要なのだ。結局希望的観測で果物をたっぷりと取らせていた。
「後、ビタミンCが入っていると言ったら芋だけど、炭水化物が多すぎるな」
タロが腕組みをして唸る。
「ああ」
そろそろ怪訝そうな顔をした女性陣の視線も気になってきたので、タロとカラは日本語での会話を切り上げた。